23 / 70
スカウト
しおりを挟む
とある街中のオフィスの一室、そう言ってセルジオは目の前の男を睨み付ける。ギロリと大きく見開かれた鋭い目つきは彼の長身も相まって凄まじい迫力を生み出している。
室内にはデスクを挟んで椅子にかけている二人だけ。睨み付けられたソードと名乗る男は巨体のセルジオに睨み付けられて一切怯む事も無く濃い隈の浮かんだ目で怠そうに視線を返すと、持っていたトランクケースをデスクの上に置いてそれを開いた。
中にはぎっしりと札束が詰まっている。
「これはとりあえずの手付金と思って貰って良い。うちの組織は巨大だ、金払いはアンタが経験したどんな取引先より良いという事を保証しよう」
「・・・なるほど、どうやら本気でこの麻薬王を買おうとしてるらしいな。もし仮に俺様がお前達の下につくとして・・・お前達は俺様に何を求める?」
肩眉を上げて脅すような口調で尋ねたセルジオにソードは淡々と答えた。
「基本的にはいつも通りに動いて貰って構わない。もちろんボスからの命令があるときはその仕事をやってもらう事になるがそれ以外の事について行動に制限はかけないつもりだ。それにアンタが希望するなら組織的にアンタの仕事を援助する事もできる」
話を聞く限りではかなりの好待遇だ。これ以上無いと言っても良い。しかしこれだけの大金をポイと出せる組織の存在を、裏社会に広く顔の利くセルジオが今まで聞いたことも無かったという事も妙な話だった。
「・・・聞く限りではかなり良い条件だ・・・という事はそのボスの頼み事とやらがよっぽどヤバい仕事なのか? 俺の麻薬売買の上納金をせびっても来ない・・・正直その条件だとお前達に利益があるように思えないんだが何が狙いだ?」
麻薬王であるセルジオを引き入れる最も大きなメリットというのはその強大な麻薬の市場をコントロール出来る事による利益だろう。
しかし目の前の男はその利益に噛ませろとは一言も言わなかった。
「・・・確かに普通の組織なら組織で仕事を補助する代わりに売り上げの何パーセントかを上納金として取り立てるだろうな。だがさっきも話したようにうちの組織は大きな組織だ、そして金には特に困っていない」
「ならば何故俺様に声をかける?」
「ボスはアンタの麻薬王としての側面では無くてアンタ自身の能力を高く評価している。その加速能力だけじゃない、麻薬王として個人で成り上がったその手腕や引き際を心得ている冷静さもだ。・・・ボスは来たるべきデカい作戦に備えて優秀な手駒を集めてるんだよ」
「デカい作戦だと?」
「内容については俺からは話せない。アンタが仲間になるんだったらボスから直接説明があるだろう」
言うべきことはすべて言い終えたとばかりに椅子に深く腰をかけてじっとセルジオを見据えるソード。
セルジオは少し考えたような顔を浮かべてから立ち上がり、部屋の窓まで歩くとそっと外を見た。すっきりしない曇り空が広がっている。
「なるほど今の説明で俺様を欲しがる理由は納得がいった・・・待遇も申し分ないし何よりお前達のボスに興味がある。お前達の下につくのもやぶさかでは無い・・・が、一つだけ大きな問題がある」
「それは?」
ソードの問いに曇り空を見ていたセルジオはニヤリと笑った。
「俺様は自分より弱い奴の下につく気はねえ」
次の瞬間セルジオの姿が消える。
加速の能力を発動したセルジオは一瞬でソードの目の前まで移動すると挨拶とばかりにその巨大な右拳をソードの腹部に叩き込んだ。
「イデェ!?!!」
しかし悲鳴を上げて無様に転げたのはセルジオの方であった。ソードに叩き込んだ右拳はざっくりと鋭い刃物で斬られたような深い傷がついている。
床に転げたセルジオに素早く馬乗りになったソードは刃に変化させた己の右手をセルジオの喉元に突きつけた。
「これで最後の問題も解消したな。ようこそセルジオ・バレンタイン。俺たちはお前を歓迎しよう」
◇
室内にはデスクを挟んで椅子にかけている二人だけ。睨み付けられたソードと名乗る男は巨体のセルジオに睨み付けられて一切怯む事も無く濃い隈の浮かんだ目で怠そうに視線を返すと、持っていたトランクケースをデスクの上に置いてそれを開いた。
中にはぎっしりと札束が詰まっている。
「これはとりあえずの手付金と思って貰って良い。うちの組織は巨大だ、金払いはアンタが経験したどんな取引先より良いという事を保証しよう」
「・・・なるほど、どうやら本気でこの麻薬王を買おうとしてるらしいな。もし仮に俺様がお前達の下につくとして・・・お前達は俺様に何を求める?」
肩眉を上げて脅すような口調で尋ねたセルジオにソードは淡々と答えた。
「基本的にはいつも通りに動いて貰って構わない。もちろんボスからの命令があるときはその仕事をやってもらう事になるがそれ以外の事について行動に制限はかけないつもりだ。それにアンタが希望するなら組織的にアンタの仕事を援助する事もできる」
話を聞く限りではかなりの好待遇だ。これ以上無いと言っても良い。しかしこれだけの大金をポイと出せる組織の存在を、裏社会に広く顔の利くセルジオが今まで聞いたことも無かったという事も妙な話だった。
「・・・聞く限りではかなり良い条件だ・・・という事はそのボスの頼み事とやらがよっぽどヤバい仕事なのか? 俺の麻薬売買の上納金をせびっても来ない・・・正直その条件だとお前達に利益があるように思えないんだが何が狙いだ?」
麻薬王であるセルジオを引き入れる最も大きなメリットというのはその強大な麻薬の市場をコントロール出来る事による利益だろう。
しかし目の前の男はその利益に噛ませろとは一言も言わなかった。
「・・・確かに普通の組織なら組織で仕事を補助する代わりに売り上げの何パーセントかを上納金として取り立てるだろうな。だがさっきも話したようにうちの組織は大きな組織だ、そして金には特に困っていない」
「ならば何故俺様に声をかける?」
「ボスはアンタの麻薬王としての側面では無くてアンタ自身の能力を高く評価している。その加速能力だけじゃない、麻薬王として個人で成り上がったその手腕や引き際を心得ている冷静さもだ。・・・ボスは来たるべきデカい作戦に備えて優秀な手駒を集めてるんだよ」
「デカい作戦だと?」
「内容については俺からは話せない。アンタが仲間になるんだったらボスから直接説明があるだろう」
言うべきことはすべて言い終えたとばかりに椅子に深く腰をかけてじっとセルジオを見据えるソード。
セルジオは少し考えたような顔を浮かべてから立ち上がり、部屋の窓まで歩くとそっと外を見た。すっきりしない曇り空が広がっている。
「なるほど今の説明で俺様を欲しがる理由は納得がいった・・・待遇も申し分ないし何よりお前達のボスに興味がある。お前達の下につくのもやぶさかでは無い・・・が、一つだけ大きな問題がある」
「それは?」
ソードの問いに曇り空を見ていたセルジオはニヤリと笑った。
「俺様は自分より弱い奴の下につく気はねえ」
次の瞬間セルジオの姿が消える。
加速の能力を発動したセルジオは一瞬でソードの目の前まで移動すると挨拶とばかりにその巨大な右拳をソードの腹部に叩き込んだ。
「イデェ!?!!」
しかし悲鳴を上げて無様に転げたのはセルジオの方であった。ソードに叩き込んだ右拳はざっくりと鋭い刃物で斬られたような深い傷がついている。
床に転げたセルジオに素早く馬乗りになったソードは刃に変化させた己の右手をセルジオの喉元に突きつけた。
「これで最後の問題も解消したな。ようこそセルジオ・バレンタイン。俺たちはお前を歓迎しよう」
◇
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる