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正義の在処
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正義とは何か。
善とは、悪とは何を指す言葉なのだろうか?
男はふとこんな事を考える。
戦争における大英雄は時代が違えばただの大量殺戮者だ。そこら辺にいる薄汚い犯罪者だって立場が変われば英雄的な革命家になっているのかもしれない。
即ち正義と悪とはその本質は全く同じモノで時代や環境によって区分けがなされているだけなのだろうか?
悪事を成そうとして悪事を成す人間は少ない(ごく少数、本質的に悪事を愛する人間はいるのだがそういった人間は今は除外しておく)。大抵の場合は周囲の環境によって悪事を成さざるを得ない状況に追い込まれて悪事をなすのだ。
そういった人間は悪なのだろうか?
男はそっと部屋の窓に掛かったブラインドを押し開けて外の景色を眺める。
にょきにょきと樹木よりも高いコンクリートの建造物が生えた都会の街中。目線を下ろせば自分には何の罪も無いと脳天気な顔をした一般人がせかせかと道路を行き来している。
例えば今道を歩いているスーツ姿のサラリーマンはどうだろうか。
一見犯罪とは縁遠い顔をしている彼は、この先長い生涯の中で一度も犯罪を犯すことは無いと胸を張って言える?
もし会社が倒産して貧困に陥ったら盗みをしない?
恋人が浮気をしている現場に出くわしたら相手の男を殴らない?
悪酔いをして喧嘩をしない?
・・・・・・もし暴漢に襲われたら正当防衛と称してその暴漢を殺さないと誰が断言できるのか。
そして、そうやって罪を犯したモノは悪と呼べるのか。
大きく深呼吸をする。
やはり何度自分に問いかけても答えは出ない。
つまり男の中にその答えは無いのだろう。
ならば答えを得るにはどうするべきか。
簡単な話だ。
答えを持つモノに尋ねれば良い・・・・・・。
部屋のドアをノックする音が聞こえた。
男は自信のデスクの引き出しから安っぽいハロウィンのマスクを取り出して装着するとノックをした相手に入室するよう声をかける。
遠慮がちにドアを開けて入ってきたのは男の右腕、黒のフード付きのパーカーを身に付けたソードという名で呼ばれる男性だ。
「おかえりソード。例の狼男は捕まえたかい?」
男が尋ねるとソードは申し訳なさそうに顔を曇らせて首を左右に振る。
「すいませんボス。思ったより素早い奴で取り逃がしてしまいました。かなり痛めつけましたのでしばらくは出てこないと思いますが・・・俺の失態です」
しかし男は全く気にしていないような態度で寛容に答える。
「ああ、そうなのかい。まあ深手を負わせたのならとりあえず今回はソレで良いという事にしておこう。向こうの目的が悪人である以上、放って置いても向こうからやってくるだろうしね・・・それに奴一人に構っている暇は無いんだ」
「はい・・・では次は何をしましょうか?」
ソードの言葉に男は机の上から何やら一枚の写真を取り出すとそれをソードに渡した。確認するとそこには目の周りに炎のタトゥーを入れた派手な紫髪の男が写っている。
「その男、麻薬王セルジオ・バレンタインをこっちに引きずり込めないかい? 少し調べてみたんだけど中々愉快な人物じゃないか」
「かしこまりました・・・それで、取引に応じない場合はいかが致しますか?」
「そんな場合は無いよ。私たちは彼の望む全てを持っているからね・・・彼が取引に応じない理由は無い」
そして男は再び窓のブラインドを指で押して外の景色を見下ろす。
「私の中には正義の答えは無かった・・・ならば問わねばならない。正義とは何か、悪とは何か・・・私は精一杯の悪で君たちに問いかけるとしよう」
マスクの奥に潜むその澄んだ瞳には、ぞっとするような狂気が秘められていた。
◇
善とは、悪とは何を指す言葉なのだろうか?
男はふとこんな事を考える。
戦争における大英雄は時代が違えばただの大量殺戮者だ。そこら辺にいる薄汚い犯罪者だって立場が変われば英雄的な革命家になっているのかもしれない。
即ち正義と悪とはその本質は全く同じモノで時代や環境によって区分けがなされているだけなのだろうか?
悪事を成そうとして悪事を成す人間は少ない(ごく少数、本質的に悪事を愛する人間はいるのだがそういった人間は今は除外しておく)。大抵の場合は周囲の環境によって悪事を成さざるを得ない状況に追い込まれて悪事をなすのだ。
そういった人間は悪なのだろうか?
男はそっと部屋の窓に掛かったブラインドを押し開けて外の景色を眺める。
にょきにょきと樹木よりも高いコンクリートの建造物が生えた都会の街中。目線を下ろせば自分には何の罪も無いと脳天気な顔をした一般人がせかせかと道路を行き来している。
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・・・・・・もし暴漢に襲われたら正当防衛と称してその暴漢を殺さないと誰が断言できるのか。
そして、そうやって罪を犯したモノは悪と呼べるのか。
大きく深呼吸をする。
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つまり男の中にその答えは無いのだろう。
ならば答えを得るにはどうするべきか。
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答えを持つモノに尋ねれば良い・・・・・・。
部屋のドアをノックする音が聞こえた。
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遠慮がちにドアを開けて入ってきたのは男の右腕、黒のフード付きのパーカーを身に付けたソードという名で呼ばれる男性だ。
「おかえりソード。例の狼男は捕まえたかい?」
男が尋ねるとソードは申し訳なさそうに顔を曇らせて首を左右に振る。
「すいませんボス。思ったより素早い奴で取り逃がしてしまいました。かなり痛めつけましたのでしばらくは出てこないと思いますが・・・俺の失態です」
しかし男は全く気にしていないような態度で寛容に答える。
「ああ、そうなのかい。まあ深手を負わせたのならとりあえず今回はソレで良いという事にしておこう。向こうの目的が悪人である以上、放って置いても向こうからやってくるだろうしね・・・それに奴一人に構っている暇は無いんだ」
「はい・・・では次は何をしましょうか?」
ソードの言葉に男は机の上から何やら一枚の写真を取り出すとそれをソードに渡した。確認するとそこには目の周りに炎のタトゥーを入れた派手な紫髪の男が写っている。
「その男、麻薬王セルジオ・バレンタインをこっちに引きずり込めないかい? 少し調べてみたんだけど中々愉快な人物じゃないか」
「かしこまりました・・・それで、取引に応じない場合はいかが致しますか?」
「そんな場合は無いよ。私たちは彼の望む全てを持っているからね・・・彼が取引に応じない理由は無い」
そして男は再び窓のブラインドを指で押して外の景色を見下ろす。
「私の中には正義の答えは無かった・・・ならば問わねばならない。正義とは何か、悪とは何か・・・私は精一杯の悪で君たちに問いかけるとしよう」
マスクの奥に潜むその澄んだ瞳には、ぞっとするような狂気が秘められていた。
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