15 / 70
ターゲット
しおりを挟む
「久々だなリーダー。俺たち二人で組むなんて一年ぶりくらいじぇねえか?」
全身黒色のプロテクターに身を包んだヒーロー ”ガンマスター”ことルーカスは狙撃ポイントでスナイパーライフルのスコープを覗き込みながら嬉しそうに無線機に向かって話しかけた。
無線機から返ってきたのは腹の底に響くようなバリトンボイス。
今回の任務でルーカスとバディを組んでいるヒーロー ”ミスターT” ことジェームズの声だ。
「確かにな。ニンジャボーイが来てからはサポートは彼に任せっきりだったから」
ケイゴは何故か表だっての活躍より裏方の仕事を好んだ。
そしてサポートという仕事においては彼の活躍は他の二人のベテランヒーローをしのぐほどのポテンシャルを持っていたのだ。
「アイツのサポートが上手すぎるんだよな。まあ安心してくれて良いぜリーダー。俺もしばらくやっていなかったとは言え、サポートってやつは苦手な部類じゃねえからな」
「・・・よろしく頼むぞガンマスター。恥ずかしい話、私の能力はピーキー過ぎてサポートなんて出来ないからな」
「適材適所って奴だよ。その変わりリーダーに近接戦闘で勝てる奴なんてほぼいねえだろ?」
「っふ、そう言ってもらえると助かるな」
「事実を言ったまでさ・・・っと、リーダー。どうやらターゲットが来るみたいだぜ」
「了解した。私も所定の位置につこう」
今回のターゲットは麻薬王と呼ばれるやり手の麻薬密売人、セルジオ・バレンタインという男だ。
匿名の情報提供があり、今日この場所でセルジオが麻薬の取引を行う事がわかった。
今回の任務は警察と共同戦線となる。
通常なら警察だけで行う仕事なのだが、セルジオは攻撃的な超能力を有しているという噂がある。もし警察で対処できない時の為にヒーローに要請が入ったのだ。
場所は古びた廃工場。
いかにもといった雰囲気の場所に黒塗りの高級車が数台止まった。
中から出てきたのは黒服のサングラスをかけた強面の男達とそいつらに囲まれるようにしてゆっくりと下車した男が一人。
その男は髪を派手な紫色に染めており、目元には炎をかたどったタトゥーを彫り込んでいる。身長は高く、筋肉もほどよくついているようでがっしりとした体型をしていた。
そして何より目を引くのがそのスーツだ。
おおよそまともな人間がつけないだろうと思われるような目が痛いほどキラキラと輝く金色のスーツ・・・足下には趣味の悪い蛇皮の靴、そのゴツゴツとした手にはドクロを模した銀の指輪がはまっている。
彼こそが麻薬王、セルジオ・バレンタイン。
セルジオは不敵な笑みを浮かべて大股で廃工場の中へと入っていく。
「よおブラザー! 待たせてしまったかな?」
陽気な声でセルジオが声をかけた相手は不機嫌な顔をした身長の小さな小太りの男。ピシリと決まった黒のスーツを身につけており、顔に深々とついた切り傷が男が一般人では無い事を悟らせる。
「・・・一時間の遅刻だセルジオ。ブツがブツなんだ、あまり時間をかけたくないのだがね」
不機嫌そうな男の言葉にセルジオは満面の笑みを浮かべて両手を大きく広げると男を抱きしめた。
「それはすまない事をしたブラザー。今回は少し割引しておくから許してくれよ」
「・・・はあ、まあいいだろう。それと気安く抱きつくなセルジオ」
名残惜しそうに男から離れたセルジオは側にいた黒服の一人に指示を出す。頷いた黒服の男はトランクケースを取り出すとソレを開けて中身を小太りの男に確認させる。
その中には透明な小袋に小分けにされた白い粉の姿が・・・。
「手を上げろ! 警察だ!」
その瞬間、廃工場の周囲に待機していた大量の警察がどっとなだれ込んでくる。あっという間に取り囲まれたセルジオ達はゆっくりと周囲を見回すと怠そうな声でポツリと呟いた。
「・・・あー、誰だ? ここの場所漏らした馬鹿は?」
全身黒色のプロテクターに身を包んだヒーロー ”ガンマスター”ことルーカスは狙撃ポイントでスナイパーライフルのスコープを覗き込みながら嬉しそうに無線機に向かって話しかけた。
無線機から返ってきたのは腹の底に響くようなバリトンボイス。
今回の任務でルーカスとバディを組んでいるヒーロー ”ミスターT” ことジェームズの声だ。
「確かにな。ニンジャボーイが来てからはサポートは彼に任せっきりだったから」
ケイゴは何故か表だっての活躍より裏方の仕事を好んだ。
そしてサポートという仕事においては彼の活躍は他の二人のベテランヒーローをしのぐほどのポテンシャルを持っていたのだ。
「アイツのサポートが上手すぎるんだよな。まあ安心してくれて良いぜリーダー。俺もしばらくやっていなかったとは言え、サポートってやつは苦手な部類じゃねえからな」
「・・・よろしく頼むぞガンマスター。恥ずかしい話、私の能力はピーキー過ぎてサポートなんて出来ないからな」
「適材適所って奴だよ。その変わりリーダーに近接戦闘で勝てる奴なんてほぼいねえだろ?」
「っふ、そう言ってもらえると助かるな」
「事実を言ったまでさ・・・っと、リーダー。どうやらターゲットが来るみたいだぜ」
「了解した。私も所定の位置につこう」
今回のターゲットは麻薬王と呼ばれるやり手の麻薬密売人、セルジオ・バレンタインという男だ。
匿名の情報提供があり、今日この場所でセルジオが麻薬の取引を行う事がわかった。
今回の任務は警察と共同戦線となる。
通常なら警察だけで行う仕事なのだが、セルジオは攻撃的な超能力を有しているという噂がある。もし警察で対処できない時の為にヒーローに要請が入ったのだ。
場所は古びた廃工場。
いかにもといった雰囲気の場所に黒塗りの高級車が数台止まった。
中から出てきたのは黒服のサングラスをかけた強面の男達とそいつらに囲まれるようにしてゆっくりと下車した男が一人。
その男は髪を派手な紫色に染めており、目元には炎をかたどったタトゥーを彫り込んでいる。身長は高く、筋肉もほどよくついているようでがっしりとした体型をしていた。
そして何より目を引くのがそのスーツだ。
おおよそまともな人間がつけないだろうと思われるような目が痛いほどキラキラと輝く金色のスーツ・・・足下には趣味の悪い蛇皮の靴、そのゴツゴツとした手にはドクロを模した銀の指輪がはまっている。
彼こそが麻薬王、セルジオ・バレンタイン。
セルジオは不敵な笑みを浮かべて大股で廃工場の中へと入っていく。
「よおブラザー! 待たせてしまったかな?」
陽気な声でセルジオが声をかけた相手は不機嫌な顔をした身長の小さな小太りの男。ピシリと決まった黒のスーツを身につけており、顔に深々とついた切り傷が男が一般人では無い事を悟らせる。
「・・・一時間の遅刻だセルジオ。ブツがブツなんだ、あまり時間をかけたくないのだがね」
不機嫌そうな男の言葉にセルジオは満面の笑みを浮かべて両手を大きく広げると男を抱きしめた。
「それはすまない事をしたブラザー。今回は少し割引しておくから許してくれよ」
「・・・はあ、まあいいだろう。それと気安く抱きつくなセルジオ」
名残惜しそうに男から離れたセルジオは側にいた黒服の一人に指示を出す。頷いた黒服の男はトランクケースを取り出すとソレを開けて中身を小太りの男に確認させる。
その中には透明な小袋に小分けにされた白い粉の姿が・・・。
「手を上げろ! 警察だ!」
その瞬間、廃工場の周囲に待機していた大量の警察がどっとなだれ込んでくる。あっという間に取り囲まれたセルジオ達はゆっくりと周囲を見回すと怠そうな声でポツリと呟いた。
「・・・あー、誰だ? ここの場所漏らした馬鹿は?」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記
スィグトーネ
ファンタジー
ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。
そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。
まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。
全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。
間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。
※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています
※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる