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最前線
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外は私が思っていたよりも大変な状況だった。生き物がどうかも分からない獣のような姿をしたものがたくさんいる。生徒たちが剣や魔法で戦っている。
「あれは何? 魔獣?」
間髪入れずに攻撃してくるのを水で防いでそう聞くと、クリスは首を横に振った。
「魔獣なんてかわいいものじゃない。魔法で作られた生き物だよ。あの赤いのが火、青いのが水、茶色いのが土」
クリスが攻撃を避けながら指さして教えてくれる。なるほど、魔法で作られた生き物。もはや生き物と呼べるかも怪しいけどね。
「それから見えないけど、一番厄介なのが風のやつ」
クリスがそう言った途端、ヒュンッと何かがこちらへ来る気配がして、私はその場から飛びのいた。
「さすがエレナ」
感心したようにそう言うクリス。確かに目に見えない敵なんて厄介以外何者でもない。こんなにたくさんいては見えないものにまで気を配ることは難しい。
「怪我人を下げなさい! 早く!!」
どこかから女の人の声が聞こえた。クリスがすぐにその声の方へと駆けて行く。その先にいたのはクラウディア様だ。息も上がっているし怪我もしている。もう立っているのもやっとといったその姿に、私はカッと頭に血が上るのが分かった。
「何よこれ!」
力任せに水を使って攻撃をする。赤い獣はすっと掻き消えた。
「あの人は何がしたいのよ!」
目の前で戦っていた女子生徒に襲い掛かる茶色い獣。私はとっさにそれに魔法をぶつけた。攻撃は女子生徒には当たらずに獣は消える。しかし次の獣がすぐに来る。
こんなの倒したってキリがない。
「エレナ!」
後ろから名前を呼ばれて、私は驚いて振り返った。
「殿下! どうしてここにおられるのです! 早く避難してください!」
とっくにどこか安全なところへ行っているものだと思っていた。カイの後ろでレオンが剣で攻撃を防いでいるのが見える。向こうにはマクシミリアンもいる。
カイは私の言葉に微笑んだ。
「こうなっては安全な場所などないよ」
それはそうかもしれない。だけどそれでもこんな最前線にいてもいい人ではない。私が再度避難を促そうとすると、カイが先に口を開いた。
「それよりエレナ、聞いて。あの獣たちに剣は効かない。倒すなら魔法だ。火には水、水には火で倒すのが効率がいい。風は風で、土は土で、あの獣が持つ魔力よりも大きい魔力で倒せる」
とても有益な情報だ。カイがチラッとマクシミリアンの方へ視線を向けた。なるほど、マクシミリアンが見つけたのか。いい目を持っている。
「エレナが使えるのは水と風だから、火と風を中心に倒して欲しい」
その言葉に一瞬だけきょとんとして気が付いた。そうだ、カイは私が全属性を使えることを知らないのか。
……隠している場合ではないな。
「殿下、お守りは何度使いましたか?」
「……二回だよ」
そう笑ったカイの表情ですぐに分かった。嘘だ。カイはもうお守りを三回分使い切っている。私は指輪を外してカイの手の中に握りこませた。
「殿下、女子寮の食堂に怪我人が集められているのはご存じですよね? そちらを守っていただけませんか?」
あの場所も今は無事だけどいつ攻撃を受けるか分からない。戦える人が誰もいないんじゃ不安だ。何より、カイにはすぐにでもこの場を離れて欲しい。
「しかし……!」
「あなたはこの国の未来に必要な方。お願いします。中へ」
カイの背後から襲ってくる茶色い獣を土属性の魔法で倒す。それを見たカイは目を見開いた。
「わたくしは大丈夫ですわ」
そう笑って見せてもカイはなかなか動かない。これはもう仕方がない。
『殿下、行ってくださいませ』
私の言葉を聞いたカイの体がすぐに動く。驚愕の表情が見えたが、私はすぐに目を逸らした。
『レオン様、マクシミリアン様、殿下をお守りください。一人の命も失われることは許しません!』
二人の体が何かに引っ張られるようにカイを追いかけて動く。一瞬だけこちらを見た二人は笑っていた。
あー、偉そうな言い方になってしまった。後で謝っておかないと。そんなことを考えながら私は全ての属性を駆使して片っ端から獣を倒していく。そんな私を見た人たちは皆目を見張っていた。
「クラウディア様、魔力のきれた人、魔法を使えない人たちは皆下げてくださいませ」
剣が効かないのなら魔法を使える人しか戦えない。戦えない人は邪魔になるだけだ。どこからかクリスもやってきて、私の隣に並んでいた。
「エレナ今すっごいかっこいいよ!」
「それはありがとう!」
視界の端でクラウディア様とソフィー様が動いているのが分かった。生徒たちがわらわらと後退していくのが見えた。それを追いかける獣たちを両断していく。
そして残ったのは私とクリスを含めても十人もいなかった。対して獣は見えるだけでも三十以上はいる。目に見えない風の獣も合わせると四十は超えるだろう。
それを見たクラウディア様が少しでも戦える生徒を戻そうと動いている。
「クラウディア様、大丈夫です。戦えない人は邪魔なだけですわ。下がっていてくださいませ!」
残った顔ぶれは皆私も見たことがあった。魔法科の中でも魔力が高い生徒たち。しかし皆寮生なので一年生から三年生しかいないのがちょっと心もとない。四年生、五年生の魔法が達者な人は寮にはいなかったのか、とため息が出そうになったが、そんな余裕もない。
私はただひたすら目の前の敵を倒すことしか考えられなかった。
「あれは何? 魔獣?」
間髪入れずに攻撃してくるのを水で防いでそう聞くと、クリスは首を横に振った。
「魔獣なんてかわいいものじゃない。魔法で作られた生き物だよ。あの赤いのが火、青いのが水、茶色いのが土」
クリスが攻撃を避けながら指さして教えてくれる。なるほど、魔法で作られた生き物。もはや生き物と呼べるかも怪しいけどね。
「それから見えないけど、一番厄介なのが風のやつ」
クリスがそう言った途端、ヒュンッと何かがこちらへ来る気配がして、私はその場から飛びのいた。
「さすがエレナ」
感心したようにそう言うクリス。確かに目に見えない敵なんて厄介以外何者でもない。こんなにたくさんいては見えないものにまで気を配ることは難しい。
「怪我人を下げなさい! 早く!!」
どこかから女の人の声が聞こえた。クリスがすぐにその声の方へと駆けて行く。その先にいたのはクラウディア様だ。息も上がっているし怪我もしている。もう立っているのもやっとといったその姿に、私はカッと頭に血が上るのが分かった。
「何よこれ!」
力任せに水を使って攻撃をする。赤い獣はすっと掻き消えた。
「あの人は何がしたいのよ!」
目の前で戦っていた女子生徒に襲い掛かる茶色い獣。私はとっさにそれに魔法をぶつけた。攻撃は女子生徒には当たらずに獣は消える。しかし次の獣がすぐに来る。
こんなの倒したってキリがない。
「エレナ!」
後ろから名前を呼ばれて、私は驚いて振り返った。
「殿下! どうしてここにおられるのです! 早く避難してください!」
とっくにどこか安全なところへ行っているものだと思っていた。カイの後ろでレオンが剣で攻撃を防いでいるのが見える。向こうにはマクシミリアンもいる。
カイは私の言葉に微笑んだ。
「こうなっては安全な場所などないよ」
それはそうかもしれない。だけどそれでもこんな最前線にいてもいい人ではない。私が再度避難を促そうとすると、カイが先に口を開いた。
「それよりエレナ、聞いて。あの獣たちに剣は効かない。倒すなら魔法だ。火には水、水には火で倒すのが効率がいい。風は風で、土は土で、あの獣が持つ魔力よりも大きい魔力で倒せる」
とても有益な情報だ。カイがチラッとマクシミリアンの方へ視線を向けた。なるほど、マクシミリアンが見つけたのか。いい目を持っている。
「エレナが使えるのは水と風だから、火と風を中心に倒して欲しい」
その言葉に一瞬だけきょとんとして気が付いた。そうだ、カイは私が全属性を使えることを知らないのか。
……隠している場合ではないな。
「殿下、お守りは何度使いましたか?」
「……二回だよ」
そう笑ったカイの表情ですぐに分かった。嘘だ。カイはもうお守りを三回分使い切っている。私は指輪を外してカイの手の中に握りこませた。
「殿下、女子寮の食堂に怪我人が集められているのはご存じですよね? そちらを守っていただけませんか?」
あの場所も今は無事だけどいつ攻撃を受けるか分からない。戦える人が誰もいないんじゃ不安だ。何より、カイにはすぐにでもこの場を離れて欲しい。
「しかし……!」
「あなたはこの国の未来に必要な方。お願いします。中へ」
カイの背後から襲ってくる茶色い獣を土属性の魔法で倒す。それを見たカイは目を見開いた。
「わたくしは大丈夫ですわ」
そう笑って見せてもカイはなかなか動かない。これはもう仕方がない。
『殿下、行ってくださいませ』
私の言葉を聞いたカイの体がすぐに動く。驚愕の表情が見えたが、私はすぐに目を逸らした。
『レオン様、マクシミリアン様、殿下をお守りください。一人の命も失われることは許しません!』
二人の体が何かに引っ張られるようにカイを追いかけて動く。一瞬だけこちらを見た二人は笑っていた。
あー、偉そうな言い方になってしまった。後で謝っておかないと。そんなことを考えながら私は全ての属性を駆使して片っ端から獣を倒していく。そんな私を見た人たちは皆目を見張っていた。
「クラウディア様、魔力のきれた人、魔法を使えない人たちは皆下げてくださいませ」
剣が効かないのなら魔法を使える人しか戦えない。戦えない人は邪魔になるだけだ。どこからかクリスもやってきて、私の隣に並んでいた。
「エレナ今すっごいかっこいいよ!」
「それはありがとう!」
視界の端でクラウディア様とソフィー様が動いているのが分かった。生徒たちがわらわらと後退していくのが見えた。それを追いかける獣たちを両断していく。
そして残ったのは私とクリスを含めても十人もいなかった。対して獣は見えるだけでも三十以上はいる。目に見えない風の獣も合わせると四十は超えるだろう。
それを見たクラウディア様が少しでも戦える生徒を戻そうと動いている。
「クラウディア様、大丈夫です。戦えない人は邪魔なだけですわ。下がっていてくださいませ!」
残った顔ぶれは皆私も見たことがあった。魔法科の中でも魔力が高い生徒たち。しかし皆寮生なので一年生から三年生しかいないのがちょっと心もとない。四年生、五年生の魔法が達者な人は寮にはいなかったのか、とため息が出そうになったが、そんな余裕もない。
私はただひたすら目の前の敵を倒すことしか考えられなかった。
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