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試験の結果

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何、何なの? え、そんな笑うようなことあった? 普通の合格発表の手紙だったと思うんだけど。クリスもカイも皆不思議そうな顔をしている。

ヘンドリックお兄様は立ち上がると、「上出来だ」と一言。そしてそのまま部屋を出て行こうとする。


「あ、あの、お兄様」


説明がまだなんですけど。そう言う前にお兄様は扉の前で「ああ」と何かを思い出したかのように振り返った。


「来月は卒業パーティーだ。その日は開けておけ」

「は、はい……?」


いきなりなんの話? それ絶対合格発表の手紙関係ないよね? そう思っている間にお兄様はさっさと部屋を出て行った。呆然としまった扉を見つめていると、クリスが横から話しかけてきた。


「ヘンドリック様、すごい機嫌が良かったね」

「ええ、そうね。それよりも色々とよく分からないのだけれど」


お兄様の機嫌よりももっと気になることがいっぱいある。お兄様の言葉は説教されるときだけしか理解ができない。普段からあのくらい話してくれたら分かりやすいのに! 言葉が少なすぎ!!


「えっと、まず、お手紙の件からいいでしょうか?」

「そっち!?」


ヨハンへ説明を求めると、カイからツッコミが入った。いや、そっちって何?


「卒業パーティーの件の方が優先だと思うんだけど……」

「ええ、もちろんそちらも後で聞きますわよ。今は順番です。そのお手紙がどうかなされたのですか? ヨハン様」


つまりカイには卒業パーティ―の件がどういう意味分かってるってことか。……レオンとマクシミリアンも分かってそうな表情してるな。クリスは……うん、よく分からない。また私だけ訳が分かっていないのか。


「この手紙にはちょっとした細工がしてあってね……クリス、持ってる?」

「うん。はい」


クリスの手紙を取り出したヨハンは、それと私のを二つ並べて机の上に置いた。皆でそれを覗き込む。……なんか便箋の装飾が違う。クリスのやつもおしゃれだけど、私のやつはもっとおしゃれだ。


「皆はどっちだった?」

「俺はこっちだな」

「僕もこっち」


レオンとマクシミリアンがそろってクリスの便箋を指さす。え、なんで違うの? 私何かやらかした? 補欠合格とか?

カイは、と思って見てみると、首を傾げていた。


「私のはどっちのでもない。これだよ」


カイが隣にもう一枚並べる。おお、また豪華なのが出てきた。皇族専用とかかな?

ヨハンの表情を伺うと、特に驚いた様子はなく、ただ笑った。


「殿下のこれは新入生代表の模様だね」


ああ、なるほど。まあ皇子だもん。逆に他の子が皇子を差し置いて新入生代表になんてなれないよね。じゃあ私のも何か意味があるのか?


「わたくしのはなんですか?」

「これは成績トップの模様だよ」


な、な、な、なんですとおぉぉぉぉ! 成績トップ!? まさかそこまでいい結果だったとは思わなかった。いやまあ試験は簡単だったけど……。


「制服はこれから届くと思うけど、成績トップ者はこれと同じ模様がネクタイやリボンに刻まれるんだ。試験事にトップが変われば模様入りのネクタイやリボンを付ける子も変わるんだけどね」


ヨハンのその言葉で思い出した。


「入学試験の時に見たお兄様のネクタイにも同じ模様がありましたわ!」

「うん、魔法科の最後の試験ではヘンドリックがトップだったからね」


まさかお兄様がそんなに成績がいいとは思いもしなかった。すごく頭の良い人だとは思っていたけど。


「もしかして科ごとにトップ者が出るのか?」


カイが興味深そうに私の便箋を持って眺めている。そんなにその模様が気に入ったのだろうか。それならぜひとも私のリボンと交換してくれたら嬉しい。成績は上の方でありたいけど、一目で分かるようなものを身につけることは嫌だ。


「うん、二年生からは各科ごとに試験があるからね」

「それなら俺にもまだチャンスはあるな!」


レオンも嬉しそうに言う。そんなにトップが取りたいのだろうか。きょとんとしてその様子を見ていると、クリスが横から教えてくれた。


「一回でも成績トップになったら、卒業後にあっちこっちから引っ張りだこなんだよ。だから、エレナはもう卒業後は安泰ってわけ」

「魔法学校の成績ってそんなに重視されるのね」


知らなかったな、と呑気に思っていると、珍しくマクシミリアンが必死な顔で私を見た。


「エレナ、魔法学校に入れるのはエリート中のエリートなんだよ。入学するだけでもすごいのに、その中での一番なんて簡単に取れるわけないじゃん」

「そ、そうですのね」


エリート中のエリートか。ただぼんやりと国で一番の学校だと思っていたけど、そこまですごいことだとは思っていなかった。

なるほど、私は早速とんでもないことをやらかしてしまったようだ。


「それから、もう一つ仕掛けがあるんだ。これに魔力を流してみてくれるかい?」

「はい……」


言われた通りに手紙に魔力を流してみる。すると数字が浮き出てきた。


「百、だね」


クリスがそれを覗き込んで呟く。うん、百だ。これはなんだろう。ヨハンは無言でクリスの手紙を渡してくる。これもってこと? 今度は八十三と浮かび上がった。

ちょっと、待って、これ、もしかして……。


「点数、ですか?」

「うん、正解」


まじかー……。ヘンドリックお兄様が見たかったのもこれだったのか。


「八十三点か、まあまあだな」


なんてクリスが呟いている。カイ達は必死に手紙を握り締めて、自分の点数を見ようとしている。が、少しして三人とも私へと差し出してきた。


「すまないがエレナ、皆の分も頼む」

「ええ、それは構いませんけど……」


なんでだろう、と首を傾げると、クリスがこそこそっと教えてくれた。


「魔力を流すなんて普通にはできないんだよ。そんなことができる子供なんて数人しかいないよ、きっと」


……なるほど。当たり前のように言われたけど、そんな簡単なことじゃないんだ。


「えっと、殿下は九十点。レオン様は七十五点。マクシミリアン様は七十九点ですわね」

「合格ラインは六十点だよ」


流石お城で教育を受けた組。余裕の合格だ。レオンは「俺が一番下か」と悔しそうに言っているが、その顔は笑っている。


「さて、次に卒業パーティーの件だね」


ヨハンの言葉に私とクリス以外の皆の間の空気が引き締まった気がした。
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