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合格発表
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そして合格発表の日。私は手に一通の手紙を握り締めていた。朝早くに届いたのだ。差出人は魔法学校だ。
「お姉さま、早く開けてくださいませ」
カミラが横から急かしてくる。いざ合格発表となると緊張して、なかなか中が見れない。試験の後はあんなに自信があったのに!
もし落ちてたらどうしよう。回答欄が一個ずつずれていたとかないよね? 問題文読み間違えていたとかないよね? なかなか中を見れない私にしびれを切らしたのか、私の正面に座っているお義母様がピシャリと言った。
「エレナ、もう合否は決まっているのです。早く開けなさい。開けられないならわたくしが開けて差し上げますわよ」
「いえ、ダメです! これはわたくしが自分で開けるのです!」
二人に急かされて、無理やり覚悟を決めると、えいやっと紙を封筒から抜いた。
「エレナ、結果は?」
「お姉さま、どうですの?」
二人が身を乗り出して聞いてくる。ドキドキしながらそれを読むと、合格という文字が見えた。
よっし! 受かった!
「合格ですわ!!」
「まあ! おめでとうございます!」
「おめでとう、エレナ」
心の底から嬉しさが込み上げて、表情が作れない。表情筋が痛いくらいの笑顔だ。だけどそれはお義母様もカミラもそうだった。
二人がこんなにも喜んでくれるとは思っていなくて、それがとても嬉しい。が、あまりゆっくりもしていられない。
「わたくし、お城に行って参りますわ!」
クリスも今頃家で合格発表を見ているだろう。そしてすぐに飛び出すに違いない。早く準備をしないと待たせてしまうことになる。
「気を付けて行ってらっしゃい」
「夕食はご馳走ですわ、お姉さま。早く帰ってきてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
端に控えていたアリアと一緒にお義母様の部屋を出るが、やはりじわじわと嬉しさがこみあげてきて、顔がにやけてしまう。
「おめでとうございます、エレナ様。たった二年弱で魔法学校に合格されるとは驚きです」
「アリアのおかげよ。ありがとう、わたくしをエレナと呼んでくれて」
そもそもアリアが文字や作法から教えてくれたから今の私があるのだ。全てはアリアのおかげだ。
「学校へはついていけませんが、エレナ様ならきっと大丈夫です。このアリア、何かあったらいつでも参りますので」
「そうね、あとひと月しかないのよね。アリアがいないと寂しいわ」
いつだって隣にいたアリアが学校ではいないのだ。身の回りのことは普通にできるので困ることはないけど、分からないことがあったら何でも聞けていたアリアがいないのは困る。そして本当に寂しい。
愛玲奈の時でも寮生活はしたことがない。家族から離れるというのはとても心細い。
「クリスティーナ様がいらっしゃいますよ」
「そうね、クリスがいたら寂しさなんてどこかへ言ってしまいそうですわ」
にぎやかな学校生活になりそうだ。クリスが合格していれば。
「私合格したよ」
第一声はそれだった。馬車の中で向かい合って座る。そっか、クリスも合格したんだ。良かった。カイ達三人はゲーム内でもいたので心配していなかったが、ゲームに出てこなかったクリスはちょっと心配していたのだ。
「わたくしも合格ですわ」
私の言葉にクリスはとても嬉しそうに笑った。
いつもの部屋に入ると、もう既に皆集まっていた。フロレンツはいないけど、ヨハンとヘンドリックお兄様がいる。皆の顔を見るだけで合格したことは分かる。だって皆そわそわしてるし。
私たちが椅子に座ると、カイがいつもよりもトーンの明るい声で言った。
「合格発表の日だけど、皆どうだったかな?」
その言葉にレオンとマクシミリアンがすっと手紙を取り出した。
「合格だぜ」
「僕も合格」
うんうん、だよね。クリスも元気よく手を上げる。
「私も! カイもでしょ?」
「うん。エレナは?」
皆に注目されて、私も持って来ていた手紙を取り出した。そしてそれを開いて見せる。
「もちろん、合格ですわ」
「よっしゃあ! 皆合格!」
一番初めに反応したのはレオンだった。ちょっとびっくりしてその顔を見ると、「なんだ?」というような表情で見られた。いや、別に何でもないけど……なんだろう、レオンにそこまで好かれていた自信がないというか、レオンはカイが合格していたらいいって思っていそうだったから、そんな風に喜んでもらえるとは思っていなかったというか。
レオンと二人で話すことなんてそんなになくて、昔から仲の良かったカイ達だけを大事にしていそうだったから、その輪の中に私も入れてくれているのが嬉しかった。
「おい、それ見せろ」
「はい?」
嬉しさを噛みめている中での突然の言葉に、咄嗟に聞き返すと、お兄様は鋭く私を睨んだ。
「二度言わせるな」
「は、はい」
それってこの手紙だよね? 見たって別に何もないだろうに。まあ見たいって言うなら別にいいけど。立ち上がって渡そうと思うと、それよりも先にお兄様が身を乗り出して手を出した。おかげで私は全く動かず、そんなに手を伸ばすこともなく渡すことができる。
……基本的に女の子の扱いがうまいというか、スマートなんだよね。ちょっと強引なところはあるけど。なんというかエスコートが上手そう。婚約者がいないのがとても残念だ。性格さえ我慢したらすごく条件がいいのに。……その性格が一番大事なんだけどね。
なんて考えながらお兄様を見ていると、手紙をちらっと見たお兄様は満足そうに笑った。そしてそれをヨハンへと渡す。ヨハンも手紙を一瞥するとふっと笑った。
「お姉さま、早く開けてくださいませ」
カミラが横から急かしてくる。いざ合格発表となると緊張して、なかなか中が見れない。試験の後はあんなに自信があったのに!
もし落ちてたらどうしよう。回答欄が一個ずつずれていたとかないよね? 問題文読み間違えていたとかないよね? なかなか中を見れない私にしびれを切らしたのか、私の正面に座っているお義母様がピシャリと言った。
「エレナ、もう合否は決まっているのです。早く開けなさい。開けられないならわたくしが開けて差し上げますわよ」
「いえ、ダメです! これはわたくしが自分で開けるのです!」
二人に急かされて、無理やり覚悟を決めると、えいやっと紙を封筒から抜いた。
「エレナ、結果は?」
「お姉さま、どうですの?」
二人が身を乗り出して聞いてくる。ドキドキしながらそれを読むと、合格という文字が見えた。
よっし! 受かった!
「合格ですわ!!」
「まあ! おめでとうございます!」
「おめでとう、エレナ」
心の底から嬉しさが込み上げて、表情が作れない。表情筋が痛いくらいの笑顔だ。だけどそれはお義母様もカミラもそうだった。
二人がこんなにも喜んでくれるとは思っていなくて、それがとても嬉しい。が、あまりゆっくりもしていられない。
「わたくし、お城に行って参りますわ!」
クリスも今頃家で合格発表を見ているだろう。そしてすぐに飛び出すに違いない。早く準備をしないと待たせてしまうことになる。
「気を付けて行ってらっしゃい」
「夕食はご馳走ですわ、お姉さま。早く帰ってきてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
端に控えていたアリアと一緒にお義母様の部屋を出るが、やはりじわじわと嬉しさがこみあげてきて、顔がにやけてしまう。
「おめでとうございます、エレナ様。たった二年弱で魔法学校に合格されるとは驚きです」
「アリアのおかげよ。ありがとう、わたくしをエレナと呼んでくれて」
そもそもアリアが文字や作法から教えてくれたから今の私があるのだ。全てはアリアのおかげだ。
「学校へはついていけませんが、エレナ様ならきっと大丈夫です。このアリア、何かあったらいつでも参りますので」
「そうね、あとひと月しかないのよね。アリアがいないと寂しいわ」
いつだって隣にいたアリアが学校ではいないのだ。身の回りのことは普通にできるので困ることはないけど、分からないことがあったら何でも聞けていたアリアがいないのは困る。そして本当に寂しい。
愛玲奈の時でも寮生活はしたことがない。家族から離れるというのはとても心細い。
「クリスティーナ様がいらっしゃいますよ」
「そうね、クリスがいたら寂しさなんてどこかへ言ってしまいそうですわ」
にぎやかな学校生活になりそうだ。クリスが合格していれば。
「私合格したよ」
第一声はそれだった。馬車の中で向かい合って座る。そっか、クリスも合格したんだ。良かった。カイ達三人はゲーム内でもいたので心配していなかったが、ゲームに出てこなかったクリスはちょっと心配していたのだ。
「わたくしも合格ですわ」
私の言葉にクリスはとても嬉しそうに笑った。
いつもの部屋に入ると、もう既に皆集まっていた。フロレンツはいないけど、ヨハンとヘンドリックお兄様がいる。皆の顔を見るだけで合格したことは分かる。だって皆そわそわしてるし。
私たちが椅子に座ると、カイがいつもよりもトーンの明るい声で言った。
「合格発表の日だけど、皆どうだったかな?」
その言葉にレオンとマクシミリアンがすっと手紙を取り出した。
「合格だぜ」
「僕も合格」
うんうん、だよね。クリスも元気よく手を上げる。
「私も! カイもでしょ?」
「うん。エレナは?」
皆に注目されて、私も持って来ていた手紙を取り出した。そしてそれを開いて見せる。
「もちろん、合格ですわ」
「よっしゃあ! 皆合格!」
一番初めに反応したのはレオンだった。ちょっとびっくりしてその顔を見ると、「なんだ?」というような表情で見られた。いや、別に何でもないけど……なんだろう、レオンにそこまで好かれていた自信がないというか、レオンはカイが合格していたらいいって思っていそうだったから、そんな風に喜んでもらえるとは思っていなかったというか。
レオンと二人で話すことなんてそんなになくて、昔から仲の良かったカイ達だけを大事にしていそうだったから、その輪の中に私も入れてくれているのが嬉しかった。
「おい、それ見せろ」
「はい?」
嬉しさを噛みめている中での突然の言葉に、咄嗟に聞き返すと、お兄様は鋭く私を睨んだ。
「二度言わせるな」
「は、はい」
それってこの手紙だよね? 見たって別に何もないだろうに。まあ見たいって言うなら別にいいけど。立ち上がって渡そうと思うと、それよりも先にお兄様が身を乗り出して手を出した。おかげで私は全く動かず、そんなに手を伸ばすこともなく渡すことができる。
……基本的に女の子の扱いがうまいというか、スマートなんだよね。ちょっと強引なところはあるけど。なんというかエスコートが上手そう。婚約者がいないのがとても残念だ。性格さえ我慢したらすごく条件がいいのに。……その性格が一番大事なんだけどね。
なんて考えながらお兄様を見ていると、手紙をちらっと見たお兄様は満足そうに笑った。そしてそれをヨハンへと渡す。ヨハンも手紙を一瞥するとふっと笑った。
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