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第十章 笑顔
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リウとシュレアの面会からまた数日がたち、とうとうリウは自分の処刑の日を迎えた。
リウは両の手に枷を嵌め、その枷から伸びる鎖の先はリクシュアーレが握っていた。
「今日はいい天気だな」
廊下を歩く途中、窓の外を眺めてリクシュアーレが呟く。それは、リウへ向けられた言葉か、ただの独り言かは定かではないが、リウはそうだね、と返して同じく窓の外を見た。
空は快晴で、雲一つもない青空だった。
二人分の足音と、鎖の擦れ合う音だけが廊下に響く。静かだった。
使用人や兵たちは、どうやらほとんどがリウの処刑の方で動いているらしく、残った者たちもすれ違うことを避けるように姿を隠していた。
足枷はついていないのに、1歩ずつ歩を進める度に、足枷のように足が重くなっていく。一歩一歩死に近づいていく感覚に、思わず足を止めてしまいたくなる。
「逃げ出してしまいたいか?」
リクシュアーレがこちらに声をかけてきた。リウはハッと顔をリクシュアーレの方へ向けた。リクシュアーレは立ち止まり、リウの方をまっすぐと見つめている。
「逃げたいなら、逃げればいい」
リクシュアーレの言葉の真意を掴みきれず、リウは戸惑う。
「シュレアの所まで連れていこうか」
「…どうしてそんなこと…」
リウが問いかけるとリクシュアーレはひとつため息を吐くとまた前を向いて歩き出した。それと共に、リウの手枷も引っ張られ、自然とリウも歩き出す。
「冗談だ」
その一言以降、リクシュアーレが言葉を発することはなく、リウもそれ以上は追求することはなく、2人は廊下を歩いた。
城内から出ると、ふわりと風が吹き、リウの髪を揺らしていく。久しぶりの外の空気にリウは深く呼吸をする。爽やかな風が胸いっぱいに行き渡り、頭の中がスッキリとするような感覚があった。それと共に、足の重さも少し軽くなったような気がする。
進むにつれて、だんだんと処刑台が見え始めた。
「ねえ、リック」
リウがリクシュアーレに声をかける。その声は少し震えていた。
「シュレアは、いつごろ釈放されるの?」
「そんなことを聞いて、どうするんだ。見届けてほしいのか?」
リクシュアーレはリウの方を見ることなく問い返す。リウはその問に、視線を落とすと
「ううん、むしろ、その逆、かな」
そう答えた。
リクシュアーレはそれをちらりと見やると、やはり前を見て歩く。
「…たしか、今日が釈放日だったはずだ。あんたの処刑に間に合うかは分からないが」
「そう」
そんなことを話していると処刑台の前に辿り着いた。台の向こうにはたくさんの人がいるのであろう、ざわめきが聞こえてくる。
リクシュアーレに連れられるまま、リウは一段一段階段をのぼっていく。
それはまるで空に向かって階段を登っているようで、雲一つない青い空に吸い込まれる錯覚に陥るようだった。
リウは両の手に枷を嵌め、その枷から伸びる鎖の先はリクシュアーレが握っていた。
「今日はいい天気だな」
廊下を歩く途中、窓の外を眺めてリクシュアーレが呟く。それは、リウへ向けられた言葉か、ただの独り言かは定かではないが、リウはそうだね、と返して同じく窓の外を見た。
空は快晴で、雲一つもない青空だった。
二人分の足音と、鎖の擦れ合う音だけが廊下に響く。静かだった。
使用人や兵たちは、どうやらほとんどがリウの処刑の方で動いているらしく、残った者たちもすれ違うことを避けるように姿を隠していた。
足枷はついていないのに、1歩ずつ歩を進める度に、足枷のように足が重くなっていく。一歩一歩死に近づいていく感覚に、思わず足を止めてしまいたくなる。
「逃げ出してしまいたいか?」
リクシュアーレがこちらに声をかけてきた。リウはハッと顔をリクシュアーレの方へ向けた。リクシュアーレは立ち止まり、リウの方をまっすぐと見つめている。
「逃げたいなら、逃げればいい」
リクシュアーレの言葉の真意を掴みきれず、リウは戸惑う。
「シュレアの所まで連れていこうか」
「…どうしてそんなこと…」
リウが問いかけるとリクシュアーレはひとつため息を吐くとまた前を向いて歩き出した。それと共に、リウの手枷も引っ張られ、自然とリウも歩き出す。
「冗談だ」
その一言以降、リクシュアーレが言葉を発することはなく、リウもそれ以上は追求することはなく、2人は廊下を歩いた。
城内から出ると、ふわりと風が吹き、リウの髪を揺らしていく。久しぶりの外の空気にリウは深く呼吸をする。爽やかな風が胸いっぱいに行き渡り、頭の中がスッキリとするような感覚があった。それと共に、足の重さも少し軽くなったような気がする。
進むにつれて、だんだんと処刑台が見え始めた。
「ねえ、リック」
リウがリクシュアーレに声をかける。その声は少し震えていた。
「シュレアは、いつごろ釈放されるの?」
「そんなことを聞いて、どうするんだ。見届けてほしいのか?」
リクシュアーレはリウの方を見ることなく問い返す。リウはその問に、視線を落とすと
「ううん、むしろ、その逆、かな」
そう答えた。
リクシュアーレはそれをちらりと見やると、やはり前を見て歩く。
「…たしか、今日が釈放日だったはずだ。あんたの処刑に間に合うかは分からないが」
「そう」
そんなことを話していると処刑台の前に辿り着いた。台の向こうにはたくさんの人がいるのであろう、ざわめきが聞こえてくる。
リクシュアーレに連れられるまま、リウは一段一段階段をのぼっていく。
それはまるで空に向かって階段を登っているようで、雲一つない青い空に吸い込まれる錯覚に陥るようだった。
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