・・その狂気は伝染する・・

第三章 狂気と共に明ける明治維新

15代将軍徳川慶喜の決断104

　「全ての準備が出来しだい横浜を出立します。我等共和国海軍が指揮を取り、先頭に立ちます。フランス側は我等の後ろにて様子を見ながら我が国の内戦に関与してください。」

 内務卿の酒井はくれぐれもフランスに出すぎだ内政干渉に警戒をし、後方支援のみの援助に留まるよう説得をした。

　「我等フランスはこの戦いにおいて徳川共和統領に勝利を収めていただくためにはなんでも協力する次第です。フランスはその後の新しい政府において、フランスの毛織物、小麦、石炭を年間2000万トン輸入するという覚書を徳川慶喜統領から頂き署名を結んでいるので・・」

 ピエール提督は不適な笑みを浮かべながら話した。

　傍らにいた榎本海軍司令官は厳しい顔でその場を立ちあがると外に出ていった。

　「榎本、まだ会談中だぞ。作戦も具体的に立案しないとならない、ここにいろ。」

 酒井内務卿の言葉も聞かずその場を出ていった。

　外にいた勝海舟副海軍司令官はそっと榎本の肩に手を当てた。

　「榎本、わかるぞ！お前の気持ちが。フランスの小汚いやり方に徳川慶喜は騙されてる。やつらの本性も全てお見通しだ。空きあれば日本を植民地にする事なんぞ、とうに我等の諜報機関でお見通し。しかし、それを言ったとたんに慶喜に追い出されるどころか、捕まり牢獄に入れられるが最後あとは死ぬだけ。」

 フランスと同盟を結んでいても、欧米の事情に極めて詳しい榎本や勝海舟らはこの戦いで徳川共和国が勝ってもフランスに徳川共和国を滅ぼされ国を乗っとられる事を懸念していた。