望む世界

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少女１

　何がいけなかったのだろう。

　私は要領よくやってきたはずだ。

　どうしてこんな目に遭わなければいけないのか。





　無駄な衝突を避け、先生からの印象も良くし、成績は常にトップ。
　運動神経も悪くなく、全てが上手くいっていた。

　中学生活はとても楽しかった。
　だから高校生になったとしても変わらない。

　これからも上手くいくはずだった。



　初めは上手くいっていた。

　３ヶ月もあれば同学年や先生からの信頼を得たし、半年経てば学校で私を知らない人はいない程に。

　信頼を得るのに比重を傾けたため、１年生のときは成績がトップでなくても上位であれば気にしなかった。



　２年生になっても成績で勝てない人がいた。

　私が１年生の時も常にトップだった人だ。

　同学年なら全員と１度は話したはずなのに、顔が出てこない。

　名前は……『ふどう』？

　変わった名字が印象に残ったと同時に。
　これまで話したことがある人と比にならないほどのイラつきを感じた。



　３年生になり、『ふどう』と同じクラスになった。

　結局、２年生の時に私がトップを取ることは無かった。

　私のストレスの原因はどのような人なのか。
　気になって教室を見回すも、見知った顔ばかり。

　授業が始まれば、空いた席が１つだけある。

　担任に話しを聞いてみれば、日数管理をしてサボってるのだとか。
　そして『ふどう』ではなく『うごかず』と読むのを知った。

　翌日、ギリギリの時間に彼は入ってきた。
　この世が全てつまらないといった顔をしながら。

　背は１７０後半はあるだろう。
　顔立ちも整っていると思うけど、雰囲気で台無しにしてる。
　それが好きって子もいると思うけど。

　席に着いてカバンから出したのは本だけ。

　その後は先生の話など聞かず、本を読み続けるばかり。

　まるで私のこれまでが全て否定されているような気がした。

　叫びたくなるのを堪え、昼休みに彼の後を追って声をかけた。



　きっと、私の失敗はここからなのだろう。

　トップではないが、優秀なことに変わりはない。

　だから気にしなければ良かったのに、食いついてしまった。



　声をかけられた彼は面倒臭そうなのを隠そうともせず、振り返って私を見る。

「私の名前は──」
「要件」

　自己紹介を遮り、ただ一言だけ。
　後は目で『早くしろ』と催促をしてくる。

　出鼻を挫かれて黙ってる私から視線を外し、ため息を漏らした彼はさっさと行ってしまった。

　その後を慌てて追いかけ、再び声をかける。

「あなたは私の事を馬鹿にしているの！？」
「何故？」
「その態度よ！」
「初対面にその態度のお前は何様なんだ？」

　去っていった彼の後ろ姿が見えなくなると同時に。

　その通りだと認めている自分と、憎悪のようなものを抱く自分がいた。

　そして、これほど他者に関心を向けたのは初めてだと、自覚した。