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四十四輪目
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『Hōrai』のライブを前日に控えた金曜日。
朝から体調が少し悪く、薬を飲んで様子を見ながら仕事をこなしていたのだが。
昼を過ぎたあたりから体調は悪くなり始め、仕事を早退してベッドへ倒れるようにして横になる。
……リモートワークってこういった時も便利だな。
症状としては頭痛、それからくる吐き気。
感覚的に熱もあるだろうし、身体も怠い。
横になり、体調が少しマシになったと感じた時。
身体を何とか動かし、体温計、飲み物と薬、氷枕を用意してベッドへと戻る。
学校に通っていた頃は月に一度あるかないかくらいの頻度で体調を崩していたため、社会人になったらどうなるのだろうと少し不安に思っていたが。
意外と身体が持ったのか、迷惑をかけたくないのか、至って普通の健康体であった。
円盤見て寝落ちし、風邪ひいた時ぶりにしんどい思いをしている。
……あれ、そう考えたら体調崩すの大体三ヶ月ぶりだな。
普通ではなかったが、そこそこ健康体ということか。
今回、体調を崩した原因としては仕事の絵が上手く描けないストレスからきたものだろうと思っているが。
そこに少し、ほんの少しだけ。
一定期間活動休止と発表されて以来、引きこもってしまった秋凛さんへの心配も関係してるだろう。
メンバーが連絡を送っても返事があるわけでもなく、何とか毎日の生存報告だけはしてもらっているという状況だ。
俺も一度家へ見舞いに行こうと思ったが、秋凛さんと自分の関係性が分からず。
どこまで踏み込んでいいものか変に考えてしまい、そのまま何も出来ていない。
「明日のライブ、行けなさそうだな……」
持ってきた体温計で熱を測れば、そこには39℃に届きそうな数値が表示されている。
前に病院で処方され、余っていた解熱剤を飲んで目を閉じれば。
そのまま半ば気絶するようにして俺は眠りについた。
ふと、目が覚める。
窓の外はすっかりオレンジに染まっているので、そこそこ眠っていたのだろう。
まだボーッとしているが、取り敢えず水分を補給しておく。
よく体調崩した時にヤバいと思ったのが脱水症状であったため、そこは特に気をつける習慣が身に付いていた。
少しハッキリした意識となり、次に意識が向いたのは寝汗によって服が張り付き、ベタベタとなった肌である。
少し寝たことで体調的には少し良くなったが、まだ38℃と熱は余り下がらない。
だが、寝る前と違ってこの程度なら普通に動き回れるため、あまり良くないのだがシャワーを浴びようと思う。
のそりと身体を動かし、立ち上がったところで寝室のドアが開き、夏月さんが入ってきた。
「あ、夏月さん。おかえり」
「優君何してるの!?」
「うぉっ!?」
ライブの前日だから本番に疲れを残さないため、帰ってくるのが早かったのかな。
なんて暢気に思いながら口にしたのだが。
夏月さんは慌てて俺へと駆け寄り、半ば押し倒すようにしてベッドへ寝かせてきた。
まだ激しい動きはしんどい為、もう少しゆっくりお願いと口にしかけ。
心配と怒りが混じった夏月さんの表情を見て、何も言えなくなる。
「飲み物のおかわり? お腹が空いたのかな? 私が代わりにやるから、何でも言って」
「いや、シャワー浴びようかなって」
「まだ熱あるんだからダメだよ!」
「でも汗かいてて気持ち悪いし……」
「身体は私が拭いてあげるから!」
「シャワー浴びたい……」
「それは熱下がってから。ね?」
余りお願いをすることは無いが、しても大抵二つ返事で良いと言ってくれる夏月さん。
けども今回ばかりは頑なに首を縦に振らない。
これ以上何を言っても許可は出ないと思い、諦めることに。
心配から言ってくれてることは分かってるので、あまり無碍にもできない。
「そういえば夏月さんの寝るとこ、どうしよっか」
取り敢えず話を変えようとしたところでふと思った。
自分的には風邪じゃないと思ってるので、夏月さんにうつすことは多分ないはず。
けどこれは医者の診断じゃなく俺の経験からきた判断であるため、絶対とは言えない。
念のため、部屋を別にして寝るべきだと思うのだが。
「一緒にここで寝るよ?」
「夏月さん、明日、明後日にライブあるんだからダメでしょ」
「え、優君の看病あるから休むけど……」
「いや、ダメでしょ」
嬉しいけど、それはダメでしょ。
朝から体調が少し悪く、薬を飲んで様子を見ながら仕事をこなしていたのだが。
昼を過ぎたあたりから体調は悪くなり始め、仕事を早退してベッドへ倒れるようにして横になる。
……リモートワークってこういった時も便利だな。
症状としては頭痛、それからくる吐き気。
感覚的に熱もあるだろうし、身体も怠い。
横になり、体調が少しマシになったと感じた時。
身体を何とか動かし、体温計、飲み物と薬、氷枕を用意してベッドへと戻る。
学校に通っていた頃は月に一度あるかないかくらいの頻度で体調を崩していたため、社会人になったらどうなるのだろうと少し不安に思っていたが。
意外と身体が持ったのか、迷惑をかけたくないのか、至って普通の健康体であった。
円盤見て寝落ちし、風邪ひいた時ぶりにしんどい思いをしている。
……あれ、そう考えたら体調崩すの大体三ヶ月ぶりだな。
普通ではなかったが、そこそこ健康体ということか。
今回、体調を崩した原因としては仕事の絵が上手く描けないストレスからきたものだろうと思っているが。
そこに少し、ほんの少しだけ。
一定期間活動休止と発表されて以来、引きこもってしまった秋凛さんへの心配も関係してるだろう。
メンバーが連絡を送っても返事があるわけでもなく、何とか毎日の生存報告だけはしてもらっているという状況だ。
俺も一度家へ見舞いに行こうと思ったが、秋凛さんと自分の関係性が分からず。
どこまで踏み込んでいいものか変に考えてしまい、そのまま何も出来ていない。
「明日のライブ、行けなさそうだな……」
持ってきた体温計で熱を測れば、そこには39℃に届きそうな数値が表示されている。
前に病院で処方され、余っていた解熱剤を飲んで目を閉じれば。
そのまま半ば気絶するようにして俺は眠りについた。
ふと、目が覚める。
窓の外はすっかりオレンジに染まっているので、そこそこ眠っていたのだろう。
まだボーッとしているが、取り敢えず水分を補給しておく。
よく体調崩した時にヤバいと思ったのが脱水症状であったため、そこは特に気をつける習慣が身に付いていた。
少しハッキリした意識となり、次に意識が向いたのは寝汗によって服が張り付き、ベタベタとなった肌である。
少し寝たことで体調的には少し良くなったが、まだ38℃と熱は余り下がらない。
だが、寝る前と違ってこの程度なら普通に動き回れるため、あまり良くないのだがシャワーを浴びようと思う。
のそりと身体を動かし、立ち上がったところで寝室のドアが開き、夏月さんが入ってきた。
「あ、夏月さん。おかえり」
「優君何してるの!?」
「うぉっ!?」
ライブの前日だから本番に疲れを残さないため、帰ってくるのが早かったのかな。
なんて暢気に思いながら口にしたのだが。
夏月さんは慌てて俺へと駆け寄り、半ば押し倒すようにしてベッドへ寝かせてきた。
まだ激しい動きはしんどい為、もう少しゆっくりお願いと口にしかけ。
心配と怒りが混じった夏月さんの表情を見て、何も言えなくなる。
「飲み物のおかわり? お腹が空いたのかな? 私が代わりにやるから、何でも言って」
「いや、シャワー浴びようかなって」
「まだ熱あるんだからダメだよ!」
「でも汗かいてて気持ち悪いし……」
「身体は私が拭いてあげるから!」
「シャワー浴びたい……」
「それは熱下がってから。ね?」
余りお願いをすることは無いが、しても大抵二つ返事で良いと言ってくれる夏月さん。
けども今回ばかりは頑なに首を縦に振らない。
これ以上何を言っても許可は出ないと思い、諦めることに。
心配から言ってくれてることは分かってるので、あまり無碍にもできない。
「そういえば夏月さんの寝るとこ、どうしよっか」
取り敢えず話を変えようとしたところでふと思った。
自分的には風邪じゃないと思ってるので、夏月さんにうつすことは多分ないはず。
けどこれは医者の診断じゃなく俺の経験からきた判断であるため、絶対とは言えない。
念のため、部屋を別にして寝るべきだと思うのだが。
「一緒にここで寝るよ?」
「夏月さん、明日、明後日にライブあるんだからダメでしょ」
「え、優君の看病あるから休むけど……」
「いや、ダメでしょ」
嬉しいけど、それはダメでしょ。
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