Nodding anemone

不思議ちゃん

文字の大きさ
上 下
27 / 51

二十七輪目

しおりを挟む
 なんて思っていたけれど。

「それで、夏月と……優くん、だっけ? どうやって出会ったのさ」
「私よりも先に、ハルが優君と出会ってるんだよね」
「え? マジ?」
「春ちゃん、夏月ちゃんに横から一番を取られちゃったんだ」
「秋凛、後でちょっとオハナシしよっか」

 準備を終えた後、夏月さんの誕生日を祝って乾杯をし、みんな普通に楽しんでいる。
 ……いや、何も悪い事じゃないんだけども、さっきまであったやり取りは無かったことになったのだろうか。

「最初は……自分がスタジオの見学に行った時、ですね。高瀬さんから声をかけていただいて」
「アウト」
「アウト、だね」
「やっぱりそうだよね?」
「いやいやいや、みんな同じ立場なら声かけるでしょ! それにちょっとお話ししようとしただけだもん!」

 何故だか分からないが、出会いについて俺から話す空気に感じた。
 珍しくその読みは間違っていなかったが、少し話して止まってしまう。

 高瀬さんの反論? にはみんな目を逸らし、何も聞かなかったことにしていた。

「優くん、続きをお願い」
「あ、はい。そのあとに高瀬さんからサインを頂いて。次の日にそれを入れる額縁を買いに出かけ、知らない人からDMが来たので会いに行ったら高瀬さんがいた、みたいな」
「春、二アウト」
「これはいけないよねー」
「ハルもそうだけど、優君も無警戒が過ぎる気がするよね」
「だ、誰だってファンって言われたらこうするでしょ! 後、桜くんが無警戒すぎるのは私も思うな!」

 何故だか俺にまで飛び火が来た感じがするけど、今日初めましての月居さんと樋之口さんは俺のことをよく知らない為。
 話はそのまま流され、続きを促される。

「そこでお昼食べながら話してたら夏月さんが来て、そのまま三人でって感じですね」
「優くんと夏月が出会ったのは春のおかげでもあったわけね」
「ここから夏月ちゃんのターンが始まるのかな?」
「えっと……はい、そうですね。場所を変えようと、夏月さんの家に招待されました」
「…………ん?」
「ごめんね。よく聞き取れなかったから、最後の部分だけもう一回言ってくれるかな?」
「え? あ、はい。夏月さんの家に招待されました」
「うわ、聞き間違いじゃなかった」
「これは一発退場じゃないかな?」
「いや、いや! ずっとお店にいるのも悪いし、たまたま私の家が近かったから! それにハルも居たし!」

 月居さんと樋之口さんは何やら話していたが、取り敢えず続きを聞こうという結論に落ち着いたらしく。
 どこから取り出したのかイエローカードを一枚、夏月さんに手渡している。

「それじゃ、続きを」
「えっと……その日は三人でゲームしたりして終わりですね」
「帰り道か次の日に、夏月から遊びの誘いでもあった?」
「すごいですね。帰りに夏月さんから遊びの誘いがありましたよ」
「そりゃ、この結果を知ってれば大体そんなところでしょ」

 言われてみれば、それもそっかという感じである。
 今こうして同棲し、指輪まで嵌めているんだもの。
 ……結構、色々とすっ飛ばしている気が今更ながらにしてきたな。

「でも、あの時は驚きましたよ。まさか泊まりだとは思っていなかったので」
「「「…………は?」」」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

処理中です...