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奥様は訪問者
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街道を進むサマンサ達の前に、岩山を削って造られた無骨な砦が姿を現した。
その砦は頻繁に国境を越えて侵略してくる隣国を睨む為に建造された物だ。
すると、砦の方から騎馬が一騎駆けて来た。
サマンサが馬の足を止めると、直ぐそばに下馬した兵士が駆け寄ってくる。
サマンサが砦に向かう事は昨日のうちに早馬をやって伝えてある。
察するに出迎えであろう。
「ようこそ、おいで下さいました。
辺境伯閣下は現在、前線基地にお出での為、サマンサ様には砦にてお待ち頂くようにと言付かっております」
「わざわざご苦労様です。
お手を煩わせて申し訳ありません」
「い、いえ、直ぐにご案内致します」
王都から嫁入りした貴族であるサマンサがただの兵士である自分にも丁寧に対応してくれた事で少し驚いた若い兵士だったが、サマンサ達を直ぐに砦へと迎え入れてくれた。
「ようこそ、マクマーン砦へ。
私はダーリン辺境伯閣下よりこの砦をお預かりしております、騎士ラリーと申します。
サマンサ様の慰問を兵達も皆、喜んでおります」
「大変な時にお邪魔をして申し訳ありません、ラリー様。
少しだけダーリン様のお顔を拝見したらお暇させていただきます。
それと、兵達への差し入れにモンゴメリー伯爵家伝統の焼き菓子を持参しました。
後で皆様にお配りしてもよろしいでしょうか?」
「おお、モンゴメリー伯爵家の携行食ですか。
噂には聞いたことがあります。
有り難く頂戴致します。
皆も喜ぶ事でしょう。
それと、ダーリン辺境伯閣下のお戻りはもう少し遅くなるかと思われます。
本日はお泊りになり、帰るのは明日にされた方がよろしいかと」
「そうでしたか、では済みませんがお世話になります」
「はい、砦に一室を用意させましたのでそちらでお休み下さい」
トントン
一室を借りて休んでいたサマンサの部屋にノックの音が鳴った。
タバサがドアに近づき伺うと直ぐにドアを開きダーリンを部屋へと招き入れた。
「サマンサ、まさかこんな所にまでやって来るなんて……」
「ごめんなさい、ダーリン。
1人で待つのは寂しくて……」
「サマンサ……」
「ダーリン……」
ゆっくりと2人の顔が近づく部屋からは、いつのまにかメイドが1人、姿を消していたのだった。
翌日、ダーリンが部屋から出ると既に部屋の前で待ち構えていたタバサが冷水を絞った手ぬぐいを差し出す。
「……昨夜はお楽しみでしたね」
「…………お前は何を想像している」
「ご安心下さい、旦那様と奥様はご夫婦なのですから何の問題もありません」
「まてまて、確かに同衾はしたが、戦地であるこの場所で、ましてや共に戦う将兵が居る砦でそんな事はしていないぞ!」
「はい、勿論分かっております。
旦那様は何もしておりません。
…………そう言う事ですよね?」
「まて、お前は何も分かっていない」
「サージェント辺境伯家は安泰ですね」
ウンウンと頷きならが立ち去るメイドに、誤解だと訴える辺境伯。
それを部屋から首だけを出したサマンサは不思議そうに見ていた。
その砦は頻繁に国境を越えて侵略してくる隣国を睨む為に建造された物だ。
すると、砦の方から騎馬が一騎駆けて来た。
サマンサが馬の足を止めると、直ぐそばに下馬した兵士が駆け寄ってくる。
サマンサが砦に向かう事は昨日のうちに早馬をやって伝えてある。
察するに出迎えであろう。
「ようこそ、おいで下さいました。
辺境伯閣下は現在、前線基地にお出での為、サマンサ様には砦にてお待ち頂くようにと言付かっております」
「わざわざご苦労様です。
お手を煩わせて申し訳ありません」
「い、いえ、直ぐにご案内致します」
王都から嫁入りした貴族であるサマンサがただの兵士である自分にも丁寧に対応してくれた事で少し驚いた若い兵士だったが、サマンサ達を直ぐに砦へと迎え入れてくれた。
「ようこそ、マクマーン砦へ。
私はダーリン辺境伯閣下よりこの砦をお預かりしております、騎士ラリーと申します。
サマンサ様の慰問を兵達も皆、喜んでおります」
「大変な時にお邪魔をして申し訳ありません、ラリー様。
少しだけダーリン様のお顔を拝見したらお暇させていただきます。
それと、兵達への差し入れにモンゴメリー伯爵家伝統の焼き菓子を持参しました。
後で皆様にお配りしてもよろしいでしょうか?」
「おお、モンゴメリー伯爵家の携行食ですか。
噂には聞いたことがあります。
有り難く頂戴致します。
皆も喜ぶ事でしょう。
それと、ダーリン辺境伯閣下のお戻りはもう少し遅くなるかと思われます。
本日はお泊りになり、帰るのは明日にされた方がよろしいかと」
「そうでしたか、では済みませんがお世話になります」
「はい、砦に一室を用意させましたのでそちらでお休み下さい」
トントン
一室を借りて休んでいたサマンサの部屋にノックの音が鳴った。
タバサがドアに近づき伺うと直ぐにドアを開きダーリンを部屋へと招き入れた。
「サマンサ、まさかこんな所にまでやって来るなんて……」
「ごめんなさい、ダーリン。
1人で待つのは寂しくて……」
「サマンサ……」
「ダーリン……」
ゆっくりと2人の顔が近づく部屋からは、いつのまにかメイドが1人、姿を消していたのだった。
翌日、ダーリンが部屋から出ると既に部屋の前で待ち構えていたタバサが冷水を絞った手ぬぐいを差し出す。
「……昨夜はお楽しみでしたね」
「…………お前は何を想像している」
「ご安心下さい、旦那様と奥様はご夫婦なのですから何の問題もありません」
「まてまて、確かに同衾はしたが、戦地であるこの場所で、ましてや共に戦う将兵が居る砦でそんな事はしていないぞ!」
「はい、勿論分かっております。
旦那様は何もしておりません。
…………そう言う事ですよね?」
「まて、お前は何も分かっていない」
「サージェント辺境伯家は安泰ですね」
ウンウンと頷きならが立ち去るメイドに、誤解だと訴える辺境伯。
それを部屋から首だけを出したサマンサは不思議そうに見ていた。
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