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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

76話 必殺技とわたし

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  ナーガと戦い始めてから2時間程経ちました。
  流石に疲れて来ましたね。
  ナーガはと言うと、苛立っているみたいですが、まだまだ疲れの色は見えません。
  やはり、竜種と人間の体力の差は大きいですね。

「ちっ、このままじゃジリ貧だ。
  何か手はないのか?」

  ジャギさんにも少し焦りが見えてきました。
  不味いですね。
  こうなれば仕方がありません。

「ない事も無いのですが…………」

「何だ、何かあるのか?」

「はい。
  前に竜種であるストーンドレイクに大ダメージを与えた方法です」

「なに! そんな方法ごあるのか?」

  近くに来ていたザジさんから、驚きの声が上がります。
  ストーンドレイクは竜種の中では、最下級のワイバーンよりは上位ですが、それでも下から数えた方が早い下級種です。
  しかし、こと物理的な防御力などのフィジカル面では中位の竜種と同格とされています。
  その防御力を抜ける程の攻撃など、なかなかありません。

「しかし、かなりの集中力が必要です。
  ストーンドレイクはブレスなどの特殊攻撃が無かったので当てる事が出来ました。
  でも、集中力を保ったままナーガのブレスを躱し、攻撃を当てるなんて、まず不可能です」

「…………それを当てられれば勝てるのか?」

  ザジさんが短い沈黙の後、質問を投げかけて来ました。

「確実に勝てるとは言えませんが、当たればかなりのダメージを与えられます」

「時間はどれ位かかる?」

「5分……いえ、3分で!」

「よし、俺が囮になる」

「は⁉︎ なに言ってやがる。
  死ぬぞ!」

「回避に集中すれば3分ぐらいは稼げる。
  ジャギとカナは俺をフォローしてくれ。
  アンナは魔法でユウの存在をナーガから隠すんだ!」

「ちっ、死ぬなよ。後味が悪くなるからな!」

「兄貴! こっちはいつでもいいぞ!」

「よし、行くぞ!」

  するとザジさんは剣を捨てるとナーガの正面に立ちました。
 
「天脚!」

  何やら厨二っぽい技名を叫ぶと彼はそれまでの動きの数倍の速度で、ナーガの水弾のブレスを回避して行きます。
  やはり、あの技には何か秘密があるようです。

「ユウさん! こちらに! ユウさんの気配を隠蔽します」

  わたしはアンナさんに呼ばれて、彼女が素早く書き上げた魔方陣の中に入ります。

「水と静寂を司る者よ 隠し 欺き 隠蔽せよ」

  水属性の儀式魔法の一種ですね。
  魔方陣の中の存在を外から隠す効果があるようです。
  わたしは魔方陣の中で意識を集中して、戦斧に魔力を込めて行きます。
  前回は、兎に角戦斧に魔力を詰め込む様に凝縮したのですが、その結果、戦斧は込めた魔力に耐えられず砕け散ってしまいました。
  そこで、リゼさんの技を思い出し、検証したのですが、もしかすると魔力の凝縮の仕方に違いが有ったのかも知れないことに気がつきました。
  あの時は冷静に考察している余裕なんて無かったのですが、改めて思い出してみると、リゼさんは魔力を刃に層になる様に分けて、何重にも重ねていった様にみえたのです。
  わたしも戦斧の刃の部分に魔力を集めます。
  3層目まで魔力を凝縮したあたりから、少し制御が難しくなって来ました。
  ただ漠然と魔力を込めていた前回より遥かに難易度が高いです。
  こんな事を自前の魔力より、更に制御が難しい自然界の魔力で行なっていたリゼさんはバケモノだと改めて思います。
  戦斧に込めた魔力が7層目に達した時、そろそろ限界が見えて来ました。
  時間もすでに2分30秒程経ち、囮になっているザジさんも擦り傷が増えています。
  8層目に達し、魔力を込めるのをやめます。
  ここからは込めた魔力が拡散しない様に集中力の勝負です。
  何層にも重ねられた魔力は刃の部分だけですが以前よりも強い光を纏っています。
  …………コレはもしかしたら必殺技ではないでしょうか?
  菓子パンで出来たヒーローの『パンチ』や亀のマークの戦闘民族の『波』など、その人物を象徴する強力な攻撃を、人は必殺技と呼ぶのです。
  そして、わたしはザジさんに怒りのブレスを吐いているナーガの背後から光を放つ戦斧を振りかぶり、必殺技(仮)を放つのでした。

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