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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》
92話 海鮮とわたし
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「おや、お帰りなさいませ、ユウ様」
領主邸に帰って来たわたしは、入り口から入ってすぐのホールで、シムさんに遭遇しました。
これは幸先良いです。
「ただいま戻りました。
すみません、シムさん。
少し、厨房をお借りできませんか?」
「厨房ですか?」
「コレを調理したいのです」
わたしは抱えていた桶をシムさんに見せます。
「うわぁ!」
「え?」
「ゆ、ユウ様、もしかしてそれを買わされたのですか?」
「いえ、ちが……」
「何を騒いでいるのだ?」
「旦那様、どうやらユウ様がオクトを売付けられたようなのです」
「なに! まったく、海に不慣れな者にあんな物を売りつけるとは、不届きな!
ユウ殿、そのオクトを売付けた者はどの様なやつだったか教えてくれ!」
「子爵様、シムさん、違いますよ。
このオクトは貰ったのです。
わたしの国ではよく食べられている美味しい食材です」
「な、なに⁉︎」
「お、オクトを食べるのですか⁉︎」
「美味しいですよ?」
わたしは信じられないと言う2人を連れて厨房に向かいました。
厨房には夕食の仕込みをしていた料理人さんが3人残っていました。
「これは旦那様、如何されたのですか?」
「ああ、仕事の邪魔をして済まんな。
こちらのユウ殿に少し厨房を貸してやってくれ」
「は、はい。
もちろん構いませんが、何をされるのですか?」
「コレを料理するんですよ」
わたしは桶を掲げて、料理人にオクトを見せます。
「ひゃあぁぁあ! お、オクトじゃないですか」
「そんなもの食べられませんよ!」
「………………」
料理人さん達が驚きの声を上げます。
後ろから覗き込んでいた見習いの若い料理人など、腰を抜かしてしまいました。
…………少し楽しくなって来ましたね。
「わたしの国ではみんな大好きな食材ですよ」
「オクトが食べられるなど、とても信じがたいが、ユウ殿が調理すると言うのでな。
本当に食べられるのか見てみようと思ってな」
「わ、私供もご一緒させて頂いて宜しいですか?」
気になるのか料理人さん達も料理するところを見せて欲しいと頼んで来ました。
もちろんわたしは構いません。
「さて!」
ビターン
わたしが桶から取り出し、まな板に置いたのは頭足綱、鞘形亜綱、八腕形上目、八腕目に分類される海洋棲の軟体動物です。
つまりタコです。
今は割と受け入れられていますが、近年まで西洋圏ではタコは悪魔の魚と言われて嫌われいました。
この国でも、タコを食べる文化はない様です。
わたしは市場で買った塩を取り出します。
ミルガンの街の近くに大きな塩田を管理する村があるそうで、他の土地にくらべると塩は手に入りやすい価格で売られています。
ナイフでオクトの目の間を突き、締めたわたしは、塩をまぶし、ぬめりを取って行きます。
完全にぬめりが取れたらグラグラに沸かせたおゆに脚から入れて、茹でて行きます。
一気に全部入れずに脚からゆっくりいれるのが、脚を綺麗にくるっとさせるコツです。
茹で上がったタコを切り分けます。
「どうぞ」
「ゆ、ユウ殿、茹でただけで大丈夫なのか?」
「他にもいろいろな料理が有りますが、ゆでダコ……いえ、ゆでオクトが基本です…………どうぞ」
「………………」
「………………」
「………………」
「……ほ、本当に食べられるのですか?」
料理長さんは、まだ信じられない様ですね。
ひょい、パク
もきゅもきゅ
コリコリした食感に、ほのかな甘みと塩気が素晴らしいです。
タコですね。
日本のモノと同じです。
いや、むしろこちらの世界のタコの方が美味しい気がします。
魔力の所為でしょうか?
この世界の生物は皆、大なり小なり魔力を持っています。
そして例外は有りますが、基本的に魔力の高い生物の方が魔力の低い生物より美味しいのです。
もきゅもきゅ
「美味しいですよ?」
「………………」
「………………」
「………………」
「……で、では私から」
そう言うと料理長さんが恐る恐るゆでオクトの切り身をつまみ、口に運びます。
もきゅもきゅ
もきゅもきゅ
もきゅもきゅ
「だ、大丈夫か?」
ごく
「ど、どうなのだ?」
「美味い」
「え?」
「美味いです、旦那様」
「ほ、本当か?」
「はい、是非、旦那様も召し上がってみて下さい」
「う、うむ」
料理長の言葉にラクガン子爵様とシムさん、そして、残りの2人の料理人もそれぞれゆでオクトを口に運びます。
「「「「美味い!」」」」
その後、タコ……オクトの調理法について、料理長に根掘り葉掘り聞かれて夕食のメニューはタコづくしになりました。
領主邸に帰って来たわたしは、入り口から入ってすぐのホールで、シムさんに遭遇しました。
これは幸先良いです。
「ただいま戻りました。
すみません、シムさん。
少し、厨房をお借りできませんか?」
「厨房ですか?」
「コレを調理したいのです」
わたしは抱えていた桶をシムさんに見せます。
「うわぁ!」
「え?」
「ゆ、ユウ様、もしかしてそれを買わされたのですか?」
「いえ、ちが……」
「何を騒いでいるのだ?」
「旦那様、どうやらユウ様がオクトを売付けられたようなのです」
「なに! まったく、海に不慣れな者にあんな物を売りつけるとは、不届きな!
ユウ殿、そのオクトを売付けた者はどの様なやつだったか教えてくれ!」
「子爵様、シムさん、違いますよ。
このオクトは貰ったのです。
わたしの国ではよく食べられている美味しい食材です」
「な、なに⁉︎」
「お、オクトを食べるのですか⁉︎」
「美味しいですよ?」
わたしは信じられないと言う2人を連れて厨房に向かいました。
厨房には夕食の仕込みをしていた料理人さんが3人残っていました。
「これは旦那様、如何されたのですか?」
「ああ、仕事の邪魔をして済まんな。
こちらのユウ殿に少し厨房を貸してやってくれ」
「は、はい。
もちろん構いませんが、何をされるのですか?」
「コレを料理するんですよ」
わたしは桶を掲げて、料理人にオクトを見せます。
「ひゃあぁぁあ! お、オクトじゃないですか」
「そんなもの食べられませんよ!」
「………………」
料理人さん達が驚きの声を上げます。
後ろから覗き込んでいた見習いの若い料理人など、腰を抜かしてしまいました。
…………少し楽しくなって来ましたね。
「わたしの国ではみんな大好きな食材ですよ」
「オクトが食べられるなど、とても信じがたいが、ユウ殿が調理すると言うのでな。
本当に食べられるのか見てみようと思ってな」
「わ、私供もご一緒させて頂いて宜しいですか?」
気になるのか料理人さん達も料理するところを見せて欲しいと頼んで来ました。
もちろんわたしは構いません。
「さて!」
ビターン
わたしが桶から取り出し、まな板に置いたのは頭足綱、鞘形亜綱、八腕形上目、八腕目に分類される海洋棲の軟体動物です。
つまりタコです。
今は割と受け入れられていますが、近年まで西洋圏ではタコは悪魔の魚と言われて嫌われいました。
この国でも、タコを食べる文化はない様です。
わたしは市場で買った塩を取り出します。
ミルガンの街の近くに大きな塩田を管理する村があるそうで、他の土地にくらべると塩は手に入りやすい価格で売られています。
ナイフでオクトの目の間を突き、締めたわたしは、塩をまぶし、ぬめりを取って行きます。
完全にぬめりが取れたらグラグラに沸かせたおゆに脚から入れて、茹でて行きます。
一気に全部入れずに脚からゆっくりいれるのが、脚を綺麗にくるっとさせるコツです。
茹で上がったタコを切り分けます。
「どうぞ」
「ゆ、ユウ殿、茹でただけで大丈夫なのか?」
「他にもいろいろな料理が有りますが、ゆでダコ……いえ、ゆでオクトが基本です…………どうぞ」
「………………」
「………………」
「………………」
「……ほ、本当に食べられるのですか?」
料理長さんは、まだ信じられない様ですね。
ひょい、パク
もきゅもきゅ
コリコリした食感に、ほのかな甘みと塩気が素晴らしいです。
タコですね。
日本のモノと同じです。
いや、むしろこちらの世界のタコの方が美味しい気がします。
魔力の所為でしょうか?
この世界の生物は皆、大なり小なり魔力を持っています。
そして例外は有りますが、基本的に魔力の高い生物の方が魔力の低い生物より美味しいのです。
もきゅもきゅ
「美味しいですよ?」
「………………」
「………………」
「………………」
「……で、では私から」
そう言うと料理長さんが恐る恐るゆでオクトの切り身をつまみ、口に運びます。
もきゅもきゅ
もきゅもきゅ
もきゅもきゅ
「だ、大丈夫か?」
ごく
「ど、どうなのだ?」
「美味い」
「え?」
「美味いです、旦那様」
「ほ、本当か?」
「はい、是非、旦那様も召し上がってみて下さい」
「う、うむ」
料理長の言葉にラクガン子爵様とシムさん、そして、残りの2人の料理人もそれぞれゆでオクトを口に運びます。
「「「「美味い!」」」」
その後、タコ……オクトの調理法について、料理長に根掘り葉掘り聞かれて夕食のメニューはタコづくしになりました。
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