408 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。第4部《新たなる神話》
40話 彼とエピローグ
しおりを挟む
勇者と邪神の戦いがあった邪神の神殿は、激しい戦いによって半壊してしまっている。
神殿の周囲にはシルバリエの配下の魔族の戦士が警備に立っている。
そんな場所に1人の青年が近づいて行く。
「ふぅ、こんなところの警備なんてついてないな」
「仕方ないだろ。
ここは魔族の神……じゃ無い、邪神の本拠地だったんだ。
警備無しなんて訳にわいかんだろ。
正午には交代が来る。
それまでは誰も中に入らない様に気を付けろよ」
「分かってるよ」
暇なのだろう、雑談を交わす2人の間を青年は通り抜けて神殿の中へと入って行く。
勇者と邪神が戦った場所に到着した青年は瓦礫の下を覗き込み何かを探し始めた。
「あ、あった!」
しばらく探し続けていた青年が瓦礫の中から拾い上げたのは手の平に収まるくらいの黒い珠だった。
青年は満足気に黒い珠を懐にしまうと再び正面から堂々と警備の間を通って出て行った。
それから数日、青年の姿は魔境の奥深く、遥か天空に突き刺さる山の頂上付近に有った。
強力な魔物が現れる険しい山道を歩いてきたはずの青年は、息切れするこたもなければ、身に付けた服にも汚れ1つ存在していない。
そんな青年の目の前に現れたのはこの山の主だった。
遥か昔、人々が今よりも高度な文明を築いていた時代からこの山に君臨する竜は、龍族とは違い純粋な魔物である。
しかし、長い時を生きた結果、魔物という存在を超越し、半ば精霊の領域に入っている竜は、この世界に生きる命において、およそ頂点と呼べる存在だった。
だが、自らの住処にズカズカと入り込んできた青年を前にした竜は、その巨体を可能な限り小さく折り、己の顔を地面へと押し付けていた。
そうして、今にも震え出しそうな身体を意志の力でどうにか押さえ付けているのだ。
「驚かせてしまった様だね。
少し通らせて貰うけど気にしないでくれ」
そう言うと、青年は軽く手を振りながら竜の前を通り抜け、緊張で身を硬くした竜をその場に残して歩き去って行った。
「ふぅ、ようやく着きましたね。
面倒では有りますがこれも様式美と言うものですか………………ふふ、悪く有りませんね」
数時間後、山頂に到達した青年は自らの無駄だけらで非効率的な行動に笑みを浮かべる。
青年がその気になればここ1ヶ月程の間に行った事など、ほんの数秒で終わらせる事が出来る。
それなのに何故こんな苦労……とまでは言わないが、回りくどい事をしているのかと言えば、それは様式美故の事なのだろう。
そんな時間を掛けて行っていた作業の終着点は、青年の目の前に見える扉だ。
魔境の奥深くの大きな山の頂上には、扉が1つ存在しているだけだった。
ゴツゴツとした岩場に佇む扉に手を掛けた青年……赤毛の行商人、ロキと名乗る青年は、躊躇する事なく扉を開けた。
扉の先にはどこまでも広がる白い空間が存在していた。
ロキが中に入ると背後の扉は消失する。
部屋の中に居るのは3人、見る者の記憶に残らない不思議な顔をした男、黒髪の青年、そしてロキだ。
不思議な顔の男とロキの間に立つ黒髪の少年は不思議に顔の男と話しており、ロキには気づいていない。
「ありがとうございます、神様」
「いやいや、君の新しい人生が素晴らしい物になる様に祈っているよ」
不思議な顔の男がそう言うと最後まで振り返らなかった黒髪の少年はそのまま光に包まれて消えて行った。
それを見届けたロキは前に進み出て、不思議な顔の男に気安く話しかける。
「やぁ」
「お帰り、ボク」
「ただいま、ボク」
「それで?」
「ああ、ちゃんと回収して来たよ」
ロキは懐から黒い珠を取り出してみせる。
「ありがとう、充電しといてくれる?」
「あいよ~」
ロキは行ったの間にか手元に現れたプラグ受けに黒い珠に接続したコンセントを挿入する。
これでまた1年もすればこの《インスタント邪神くん》が使える様になるだろう。
「さて、そろそろ戻るか」
「そうだね」
パチン
不思議な顔の青年が指をならす。
するとさっきまでそこに居たロキの姿が消えて無くなってしまった。
「さてと……」
同時に存在している自分自身、同位体のロキを消し去った不思議な顔の男……赤毛の神ロキは.先程異世界へと転移させた少年についてあの少女に伝える為、机に置かれた電話に手を伸ばすのだった。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 完
神殿の周囲にはシルバリエの配下の魔族の戦士が警備に立っている。
そんな場所に1人の青年が近づいて行く。
「ふぅ、こんなところの警備なんてついてないな」
「仕方ないだろ。
ここは魔族の神……じゃ無い、邪神の本拠地だったんだ。
警備無しなんて訳にわいかんだろ。
正午には交代が来る。
それまでは誰も中に入らない様に気を付けろよ」
「分かってるよ」
暇なのだろう、雑談を交わす2人の間を青年は通り抜けて神殿の中へと入って行く。
勇者と邪神が戦った場所に到着した青年は瓦礫の下を覗き込み何かを探し始めた。
「あ、あった!」
しばらく探し続けていた青年が瓦礫の中から拾い上げたのは手の平に収まるくらいの黒い珠だった。
青年は満足気に黒い珠を懐にしまうと再び正面から堂々と警備の間を通って出て行った。
それから数日、青年の姿は魔境の奥深く、遥か天空に突き刺さる山の頂上付近に有った。
強力な魔物が現れる険しい山道を歩いてきたはずの青年は、息切れするこたもなければ、身に付けた服にも汚れ1つ存在していない。
そんな青年の目の前に現れたのはこの山の主だった。
遥か昔、人々が今よりも高度な文明を築いていた時代からこの山に君臨する竜は、龍族とは違い純粋な魔物である。
しかし、長い時を生きた結果、魔物という存在を超越し、半ば精霊の領域に入っている竜は、この世界に生きる命において、およそ頂点と呼べる存在だった。
だが、自らの住処にズカズカと入り込んできた青年を前にした竜は、その巨体を可能な限り小さく折り、己の顔を地面へと押し付けていた。
そうして、今にも震え出しそうな身体を意志の力でどうにか押さえ付けているのだ。
「驚かせてしまった様だね。
少し通らせて貰うけど気にしないでくれ」
そう言うと、青年は軽く手を振りながら竜の前を通り抜け、緊張で身を硬くした竜をその場に残して歩き去って行った。
「ふぅ、ようやく着きましたね。
面倒では有りますがこれも様式美と言うものですか………………ふふ、悪く有りませんね」
数時間後、山頂に到達した青年は自らの無駄だけらで非効率的な行動に笑みを浮かべる。
青年がその気になればここ1ヶ月程の間に行った事など、ほんの数秒で終わらせる事が出来る。
それなのに何故こんな苦労……とまでは言わないが、回りくどい事をしているのかと言えば、それは様式美故の事なのだろう。
そんな時間を掛けて行っていた作業の終着点は、青年の目の前に見える扉だ。
魔境の奥深くの大きな山の頂上には、扉が1つ存在しているだけだった。
ゴツゴツとした岩場に佇む扉に手を掛けた青年……赤毛の行商人、ロキと名乗る青年は、躊躇する事なく扉を開けた。
扉の先にはどこまでも広がる白い空間が存在していた。
ロキが中に入ると背後の扉は消失する。
部屋の中に居るのは3人、見る者の記憶に残らない不思議な顔をした男、黒髪の青年、そしてロキだ。
不思議な顔の男とロキの間に立つ黒髪の少年は不思議に顔の男と話しており、ロキには気づいていない。
「ありがとうございます、神様」
「いやいや、君の新しい人生が素晴らしい物になる様に祈っているよ」
不思議な顔の男がそう言うと最後まで振り返らなかった黒髪の少年はそのまま光に包まれて消えて行った。
それを見届けたロキは前に進み出て、不思議な顔の男に気安く話しかける。
「やぁ」
「お帰り、ボク」
「ただいま、ボク」
「それで?」
「ああ、ちゃんと回収して来たよ」
ロキは懐から黒い珠を取り出してみせる。
「ありがとう、充電しといてくれる?」
「あいよ~」
ロキは行ったの間にか手元に現れたプラグ受けに黒い珠に接続したコンセントを挿入する。
これでまた1年もすればこの《インスタント邪神くん》が使える様になるだろう。
「さて、そろそろ戻るか」
「そうだね」
パチン
不思議な顔の青年が指をならす。
するとさっきまでそこに居たロキの姿が消えて無くなってしまった。
「さてと……」
同時に存在している自分自身、同位体のロキを消し去った不思議な顔の男……赤毛の神ロキは.先程異世界へと転移させた少年についてあの少女に伝える為、机に置かれた電話に手を伸ばすのだった。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 完
0
お気に入りに追加
2,354
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる