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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第3部《交錯する戦場》

18話 魔王リセルシア

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  連合軍と魔族軍の戦端が開かれた翌日、戦場には2つの大きな円が出来ていた。
  1つの円の中心はSランク冒険者、至高のリゼッタと魔王グレースである。
  2人の戦いは周囲を巻き込みながら続き、次第に2人の周囲には人間も魔族も近づかない様に離れた結果、戦場に大きな円を作っていた。

「くははは!素晴らしい!素晴らしいぞ!至高の冒険者よ!
  貴様は間違い無く俺が戦って来た者の中で最強の戦士だ!」

  グレースは高速で剣を振り、リゼッタのほんの僅かな隙を突こうと鋭い攻撃を繰り出す。
  
「失礼ね、私みたいなか弱い女の子を捕まえて!」

  軽口を交えながらグレースの剣を迎撃するリゼッタだったが、彼女の言葉にツッコミを入れる者は周囲には居なかった。



  そして、もう1つの円の中心でも2人の人物によって激しい戦いが繰り広げられていた。
  
「十刃」

  魔王リセルシアの放った戦技アーツは彼女の持つ2本の名剣から十字型の魔力の刃を撃ち出した。
  
「ふっ!」

  高速で襲い掛かって来た魔力の刃を剣の一振りで霧散させた男は、ホビット族の剣士だった。
  男はSランク冒険者、神域のフィルである。
  フィルは20代半ばに見えるリセルシアに問い掛ける。

「魔王リセルシアは12歳くらいの子供だと聞いたのだが……お前は何者だ?」

「ふふ、私も魔王リセルシアさ」

  リセルシアは、フィルの問いを軽く笑いながらはぐらかす。
  
「私も疑問に思うのだが、我々が調べた情報によると、神域の剣士はこうした種族同士の争いには興味が無いと聞いていたのだがな?」

「ふん、確かに俺は人間だの魔族だのと言う事には興味はない。
  だが、貴様らが帝国に攻め込むと言うなら話は別だ。
  この帝国は、大恩ある師が起した国だ。
  俺は帝国に手を出す者には容赦はしない」

  フィルはリセルシアに斬りかかるが、リセルシアも2本の剣を操りフィルの剣戟を受け止める。
  
「意外だな、以前帝国を襲わせた魔物供を離れた場所から剣の一振りで斬り捨てたと聞いたぞ?」

  フィルは苦笑を浮かべる。

「無茶を言うな。
  あんな事が簡単に出来る訳が無いだろう?
  あれは長い時間を掛けて剣に溜めた魔力を全て使った技だ。
  しばらくは使えないさ」

  フィルの剣は剣帝シグナム・フォン・グリントから譲り受けた伝説級レジェンドのマジックアイテム、月の雫ムーンドロップである。
  ムーンドロップは魔力を蓄積出来ると言うシンプルな能力を持つが、それ故に使用者の実力によってはとてつもない効力を持つ事になる。

「成る程、ならあの襲撃も無駄では無かったと言うことか」

  リセルシアとフィルは会話をしながらも激しく斬り結んでいた。
  リセルシアの双剣とフィルのムーンドロップが紡ぎ出す剣戟の音は、音楽の様に戦場に響き渡り、リセルシアとフィルは踊る様に戦い続けるのだった。
  
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