神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第3部《交錯する戦場》

5話 グリント帝国宮廷薬師長ガボン

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  とうとう、人類連合軍と魔族軍の戦闘が始まった。
  つい先程最前線の兵達が刃を交えたのだ。
  その鬨の声はガボンが居る後方の陣地まで、地響きの様に響いて来た。
  ガボンが居るのはミノス砦と前線の中間に設営された陣地だ。
  そこには治癒魔法使いや薬師などが集められ、救護所として機能している。
  少し前からは、ちらほらと負傷者が運び込まれ始めた。
  まだ、そんなに数は居ないがその内手が回らない程の負傷者が運び込まれて来るだろう。

「ガボン薬師長、毒を受けた兵が居ますので解毒をお願いします!」

「わかった」

  ガボンは自分を呼びに来た部下について行く。
  治癒魔法での解毒はかなりの高等魔法であり、また魔力の消費も激しい為、毒を受けた者はなるべく薬で治療する方が効率が良かった。
  ガボンは毒で苦しむ兵士の様子を観察する。

「コレはポイズンラットの毒だな」

  毒を特定したガボンは手早く解毒薬を調合する。
  長年の経験に裏打ちされたその技術は、淀みなく解毒薬を作り上げて行く。
  
「ほら、出来たぞ。
  飲ませてやれ」

「はい」

  部下に解毒薬を手渡したガボンは、別の負傷者のところに足早に駆けて行った。



「ふぅ」

  ようやく波がさった頃、ガボンは一息ついて杯の水を飲み干した。
  前線では一旦両軍が離れ、次の衝突に備え態勢を整えている。
  魔族は強靭な身体と高い魔力を持っている種族ではあるが、数では連合軍の方が圧倒している。
  その為、全体的には連合軍が有利に見えるが、魔族の中にも特出した実力者がいる様で、強大な力を持つ魔族の周囲では多大な被害が出ている。
  
「ん?」

  不意にガボンの頭上を影が過ぎった。
  上を見上げたガボンのすぐ近くに巨大な鳥型の魔物が舞い降りて来た。
  周囲に居た薬師や治癒魔法使いは慌て距離を取り、陣地の警備をして居た兵士達が魔物を取り囲み槍を掲げた。

「武器を下ろせ!
  彼女は敵ではない」

  ガボンは兵士達へ叫んだ。
  その鳥型の魔物は何度か見せてもらった事があった。

「すみませんね、驚かせてしまったみたいで」

  巨大なサンダーバードから飛び降りて来たのはこの辺りでは珍しい黒髪に黒い瞳の少女だった。
  少女はリュウガ王国の戦装束の上に夜空を写し取った様な漆黒のローブを身に纏っている。

「久しぶりじゃなユウ殿」

「ガボンさん、お久しぶりです」

「ユウ殿も治療要員として雇われたのかのぅ?」

「いいえ、わたしは戦闘要員ですよ。
  もし、強力な毒などを使われたら治療に回りますが、戦争ではあまりコストの掛かる毒は使われないらしいですからね」

「そうか、ユウ殿の技術を勉強させて貰えるいい機会だと思ったのだがな」

「すみません、わたしはリゼさんに頼まれて次の衝突で特に強力な魔族を各個撃破して行く事になっているのですよ」

「ふむ、では何故こちらに?」

「ああ、それは…………リリ」

「は、はい、師匠!」

  ユウ殿が呼ぶとサンダーバードの背中から少女が1人飛び降りて来た。
  背丈はユウ殿と変わらないが、容姿はこの国でよく見る物だ。

「わたしの弟子のリリです。
  辺境で待っているのは嫌だと言うので連れて来ました。
  辺境の街で待たせて置くより、目の届く場所に居る方が安心ですからね。
  それに、ここでなら多くの経験を積めますしね」

「ユウ殿の弟子か…………羨ましいな」

「ご迷惑はかけませんので使ってやって下さい」

「わかった。
  ワシはガボンじゃ、よろしくなリリ嬢ちゃん」

「はい、よろしくお願いします」

  ユウ殿はリリ嬢ちゃんを残してサンダーバードに乗って飛び立って行った。

「さて、リリ嬢ちゃん。
  すぐに怪我人がわんさかやって来る。
  急いで準備するぞ」

「はい!」

  ガボンはリリを連れて天幕へ駆けて行った。
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