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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

140話 盗賊が潜む森

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  魔族の襲撃を受けた日から数日、治癒魔法とポーションによって回復した俺達はナヤの町を後にした。
  ナヤの町は今回の事で多くの死傷者を出した。
  魔王グレースから受け取った金塊は町長に預け、被害の補填に使われる事になった。
  コルダールの時も同じだったがグレースにも勝てる気がしない。
  魔王と俺達の実力には大きな開きがある。
  炎の紋章だけではダメだ。
  もっと強くならなければ……

  エイバ森林国に入ると街道の周囲にも大木が目立つようになり、やがて完全に森の中に入った。
  土から天に向かって伸びる背の高い木々の枝葉によって日差しが弱まり、日光がまだらに地面に落ちる。
  エイバ森林国の国土の多くはその名の通り森林であり、果実や木材などの輸出が盛んな国だ。
  エルフの国民が多く、国を治める国王もエルフ族らしい。

「周囲を警戒しよう。
  移動速度は落ちるが慎重に進むぞ」

  俺はみんなに警戒を促す。
  エイバ森林国の中でも今俺達が居る帝国側は現在かなり治安が悪い。
  治安が悪い理由には俺達も関わっている。
  帝国のすぐ横に有ったヤナバル王国が崩壊した事だ。
  あの革命によってヤナバル王国は崩壊し、かなりの混乱が生じた様だが現在はヤナバル共和国と名を変えている。
  この国は王を頂く事なく、レジスタンスの幹部だった者達やマクベスなど始めとした有識者達による協議によって国政を行なっているらしい。
  そして問題は、当時王国でのさばっていた盗賊や犯罪者となった元兵士などだ。
  ヤナバル共和国は多くの予算を割いて冒険者を雇い盗賊や元兵士を討伐した。
  そして、隣国であるグリント帝国も色々と理由を付けてはヤナバル共和国への援助を行なっている。
  その中にはヤナバル共和国国内の治安回復の為の武力支援も含まれているのだろう。
  レオが言うには現在のグリント帝国には領土的な野心は無いらしいが、いずれヤナバル共和国がグリント帝国の庇護を求め、属国となる可能性もあるらしい。
  そんな動きにより次々と討伐されていた盗賊や元兵士だったが、一部はここエイバ森林国へと流れて来ているらしい。
  エイバ森林国は身を隠せる場所が多く、俺達が今いる様な大きな街道以外では馬車も通る事が出来ない。
  その為、追われる身である犯罪者としては魅力的な土地なのだ。

  しばらく慎重に進むと街道の先から怒声と悲鳴が聞こえてきた。

「大変です、馬車が襲われています!」

  先行し様子を伺ったソフィアが叫ぶ。

「助けに行くぞ!」

  俺たちは武器を手に駆け出した。


  悲鳴と怒号が飛び交う戦場にやって来るとひと塊りになって怯える商人達とその商人達を取り囲む様に盗賊が包囲している。
  そして、商人と盗賊の間には旅用のコートを着てフードを目深に被った旅人風の男が立っている。

「野郎ども、ガキと女を拐え!男は殺して良い!」

  他の盗賊よりも立派な鋼の鎧を身に付けた盗賊の頭目らしき男が周りの盗賊に指示を出す。
  俺たちは走るがまだ遠い。

「くっ!」

  盗賊が商人達に向かって襲いかかる。

「ははは!」

  盗賊の1人がフードの男に向かって剣を振り下ろす。
  しかし、フードの男は剣を握る盗賊の腕を軽く掴み、振り下ろされる剣の勢いを殺す事なく軌道を変える。
  すると、まるでフードの男をすり抜ける様に反対側に飛び出した盗賊の剣は、商人に向かっていた仲間の盗賊の胸に突き刺さる。
  
「て、てめぇ!!!」

  仲間から剣を引き抜いた盗賊が再び剣をフードの男に向ける。

「ふっ!」

  フードの男が鋭く息を吐き、腕を振る。
  フードの男の手刀は盗賊の持つ剣を叩き折る。

「なに⁉︎」

  剣を素手で破壊された事に驚いた盗賊が目を見開く。
  そしてそれは大きな隙となった。
  フードの男の回し蹴りが盗賊の首を捉えた。
  盗賊は数メートル吹き飛ばされて、ピクリとも動かなくなる。
  おそらく首の骨が折れているのだろう。
  仲間が2人やられた事で盗賊達はフードの男を危険だと判断したのだろう。
  フードの男に4人の盗賊が同時に斬りかかった。
  盗賊達の剣は、お世辞にも剣術などと言う事は出来ない様なお粗末な物だが、それでも数に物を言わせフードの男にせまる。
  しかし、盗賊の剣はフードの男に一向に当たらない。
  フードの男は盗賊の剣の腹にそっと手を当て全ての剣を受け流していた。
  そして剣戟の隙をつき、フードの男の拳が盗賊の体に叩き込まれて行く。
  4人の盗賊が地に沈むのに、それ程時間は掛からなかった。

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