上 下
310 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

115話 冒険者リスト

しおりを挟む
  冒険者ギルドの出張所には、おなじみのカウンターなどは無く、長机が並べられ、クエストボードの代わりなのか壁に立て掛けられた板に依頼書が貼り付けられている。
  ダンジョンで採取できる鉱石や魔物の素材、薬草などの納品依頼やダンジョンの調査、ダンジョン周辺の警備など、内容の多くがダンジョンに関係する物だ。
  俺達は長机に向かい、手の空いているギルド職員に話しかける。

「すみません」

「どうした?」

  対応してくれたのは40代くらいの男性だ。
  その身体を包む筋肉は冒険者と比べても見劣りする事はない。
  おそらく最近まで冒険者として活動していたのだろう。
  引退した冒険者がギルド職員にスカウトされる事はよくある事だ。
  冒険者が持ち込む魔物の解体や荒くれ者への対処など、冒険者ギルドでの仕事には事欠かない。
  ここの様に街中ではない場所に冒険者ギルドの出張所を開くときにも頼られるだろう。

「情報を買いたいのですが?」

「何が知りたいんだ?」

「ここ20日間でダンジョンに入った冒険者パーティのリストをお願いします」

「銀貨1枚だな」

  俺は懐から銀貨を1枚取り出すときギルド職員に手渡した。

「ちょっと待ってな」

  ギルド職員は背後の棚からファイルを取り出すとページをめくり始めた。
  そして、目的のページを見つけて手を止めたギルド職員はそのページを開いてファイルを机の上に広げた。

「このページと次のページが20日以内にダンジョンに入った冒険者だ。
  チェックが付いている者は帰還が確認されている冒険者だ。
  だが、ギルドへ報告を後回しにして休んでいる奴も居るかも知れん。
  それにギルドに連絡せずにダンジョンへ潜って居る奴もいる。
  だからそのリストが絶対に正しい訳じゃないぞ」

「はい」

  ギルド職員に出して貰ったリストを確認して行くと、その中にジンとバッカスの名前を見つけた。
  パーティ名を確認すると《溢れる盃》とあるので間違いないだろう。
  2人の名前の横にはチェックが入っていない。
  つまり、ジンとバッカスはまだダンジョンの中に居ると言う事だ。
  
「どうする?
  俺達も追うべきかな?」

「そうですね。
  記録によると2人がダンジョンに入ったのは昨日の朝です。
  ダンジョンの探索では数日で戻る場合もありますが30日以上潜る場合もあります。
  なるべく早く王都に戻る為、ここは私達も追い掛けてダンジョンに入るべきだと思います」

「マーリンはどう思う」

「そうね。
  数日間は、ダンジョン内を探して、見つからなければ外で待ちましょう」

「入れ違いにならないか?」

「そんなのギルドに伝言を残しておけばいいでしょ。
  わざわざギルドで記録を残して居るんだから戻ってきたらここにやって来るわよ」

「なるほど」

  俺はギルド職員に、もしジンとバッカスと言う冒険者が戻って来たら数日待って欲しいと伝えて貰える様に頼む。

「伝えるのは良いが強制は出来ないぞ?」

「なら《溢れる盃》の2人に指名依頼を出して下さい。
  依頼内容は『5日間ここに留まる事』でお願いします」

「まぁ、それなら構わねぇ。
  だが、相手はCランクパーティだ。
  依頼料は金貨1枚と銀貨2枚、もしお前さん達がダンジョン内で2人を見つけて依頼をキャンセルすれば返金するが、キャンセル料として銀貨2枚を払って貰うことになるなぞ?」

  「良いのか?」っと尋ねるギルド職員に頷き金貨と銀貨を手渡した。
  そして、ダンジョン内の情報を売ってもらう。
  
「ダンジョンに入るなら気を付けろよ。
  この情報はあくまでも『今の所』だからな。
  ダンジョン内では、どんな事が起こるか分からない」

「はい、ありがとうございます」

  ギルドの出張所を後にした俺達は、ギルドの近くで野営して明日の朝からダンジョンに入る事になった。

  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

処理中です...