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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

109話 第4の刃

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「ギョエェェエ!」

  グレートモスの甲高い声と共に羽から放たれた衝撃波は、どう言う原理か分かりませんが、わたしとリゼさんに目掛けて真っ直ぐに飛んで来ました。
  わたしは右に、リゼさんは左に跳ぶと、わたし達が立っていた場所に有った岩が粉々に砕け散ってしまいます。
  普通、発生した場所から円形に拡散するであろう衝撃波が謎原理で指向性を持ってわたし達に目掛けて飛んで来ました。
  更に厄介なのは衝撃波が目に見えないと言う事です。
  わたしは危機察知スキルのお陰で避ける事が出来ていますが、ハイエルフの戦士達にはいくらかのダメージが入っています。
  
「ギョエ!」

  グレートモスが大きく羽ばたき5メートル程、空中に浮かび上がります。
  世界樹の洞は、その常識外れの大木に相応しくかなり広く、高さも10メートル以上有ります。
  しかし、このまま外に逃げられると手も足も出なくなってしまいます。
  入り口付近では遊撃の戦士達が陣取っており、いつでも魔法を放てる様に構えて居ますが強行突破されると不味いです。
  優先的に羽を潰すべきですね。
  そうすれば飛ぶ事が出来なくなりますし、鱗粉や衝撃波などの攻撃も出来なくなる可能性が高いです。

  「はっ!」

  洞の中の壁を蹴り、三角飛びの要領でグレートモスに飛び掛かったわたしは、纏を発動させて魔力を込めたピリオドを振り下ろします。
  わたしの攻撃を避けようとグレートモスが身をよじった為、羽を狙った攻撃はグレートモスの胴体にヒットしました。
  思わぬクリティカルヒットでしたが、なんとグレートモスの胴体は、ピリオドの一撃を弾き返したのです。
  
「ギョエェェエ!」

「くっ!」

  お返しとばかりに至近距離で放たれた衝撃波を身を翻し、夜天のローブでガードします。

「ユウちゃん!」

  距離が近く勢いが乗る前だった為か、それ程のダメージは有りませんでしたが、10数メートルも吹き飛ばされてしまいました。

「大丈夫です。
  しかし、今ので無傷ですか、硬くて柔軟な攻殻ですね」

「ウインドバースト!」

「ロックエッジ!」

「アイスハンマー」

  洞の中をかなりのスピードで飛び回るグレートモスにハイエルフの戦士達が強力な魔法を浴びせて行きます。
  しかし、グレートモスは巧みな飛行で羽への攻撃を避けていました。
  定説通りなら、虫系の魔物であるグレートモスに有効な属性は火属性かその上位属性の炎属性です。
  しかし、ここは世界樹の洞の中、世界樹が燃え尽きる様な事は無いでしょうがわたし達が火達磨になるくらいなら十分有り得ます。
  皆さんもその点を留意しているのでしょう。
  なるべく周囲に被害の出ない属性の魔法を使っています。

「おぉぉお!」

  グレートモスが低空を飛んでいる時、セシルさんが斬りかかり鋭い三連撃を与えますが、攻殻に浅く傷を付けるだけで致命的なダメージにはなりません。

「セシル、退がって!」

  リゼさんの声にセシルさんがグレートモスから離れると、弾丸の様に飛び出したリゼさんが腰だめに構えた剣をグレートモスに突き立てました。
  今までの攻撃で1番深い傷を与えていますが、それでも浅く、身体を回転させたグレートモスに振り払われてしまいます。
  猫の様に着地したリゼさんはすぐさま指示を飛ばします。

「ユウちゃん、セシル、10秒稼いで!」

「はい!」

「わかった!」

  リゼさんの言葉に答えるとわたしとセシルさんはグレートモスの気をひく様に派手な攻撃を放ちます。

「撃ち抜け 氷の礫 アイスショット」

「シャイニングショット」

  大したダメージは与えられていませんがグレートモスはイラつくいたのか、わたしとセシルさんに衝撃波を撃って来ます。
  衝撃波を避け、リゼさんの方を向かない様に誘導して行きます。
  そして、指定された10秒が過ぎリゼさんの方に視線を向けました。
  するとリゼさんは光り輝く剣を構えて居ました。
  Bランクの昇格試験の時に見たアレです。
  あの時は凝縮した魔力を風属性に変換して放たれた技、『エア』で吹き飛ばされてしまいました。
  今回もリゼさんは凝縮した魔力の属性を変換しています。

「おいおいおい!」

  それを見たセシルさんが顔を青くしています。

「ユウちゃん、セシル、避けなさい!」

  リゼさんは赤く染まった光の剣を振り抜きました。

「第4の刃、プロミネンス!」

「バカ野郎ぉぉぉお!!!」

  真っ赤に染まった空間に、リゼさんの声とセシルさんの叫びが木霊したのでした。

  
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