上 下
295 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

100話 乱入者現る

しおりを挟む
「魔王コルダールの呪いですか……」

  レオさん達から説明を受けました。
  まさか一般市民の家に勝手に上がり込み机をあさり、ツボというツボを割り尽くす、挙げ句の果てには宿屋で自分以外女の子ばかりのパーティなのに、平気で同じ部屋に泊まる、あの勇者に出会う事になるとは……

「はい、勇者であるエリオは魔族に対する切り札です。
  そのエリオの呪いを解き、魂の傷を治療する事は現在の最優先事項です」

  確かにこのままではエリオさんは魔力が使えません。
  剣だけでも戦えない事はないでしょうが、魔族との戦争が始まれば魔力無しでは勝て無いでしょう。

「そうですね……結論から言うと魂の傷を治療する事は可能です」

「ほ、本当ですか!」
  
  レオさん達の顔に喜色が浮かびますがわたしは待ったをかけます。

「しかし、現実的では有りません」

「え?」

「魂の傷を治せるポーションを作るにはかなり希少な素材が必要なんです」

  わたしがポーション作製が困難で有ると伝えますがレオさん達は諦めません。

「必要な物は王家が掻き集めます!
  他国の国宝だろうと事情を説明すれば提供して貰えるでしょう」

「私も商会の伝手を使って素材を探しましょう」

「…………確かにそれならば殆どの素材を集める事が出来るでしょう。
  しかし、特に希少な2つの素材はまず手に入りません」

「そ、その素材とは……」

「エンシェントドラゴンの血と世界樹の果実です」

「な、そ、それは……」

「どちらも魔境の奥でしか手に入らない物です」

「ユウさん、世界樹ならこの街の近くにも1つありますが?」

  アルさんが言っているのは根っこが危険地帯へのルートとなっている世界樹の事でしょう。

「あの木はまだ若木です。
  必要なのは成木となり実を付けた物です」

「くっ手詰まりか……」

  レオさんが悔しそうに拳を握りしめていた時です。
  バンッ!と扉が開きました。

「話は聞かせて貰ったわ!」

  そして、部屋に乗り込んできたのは……

「り、リゼさん⁉︎」

「リゼッタ殿戻られていたのですか⁉︎」

「ええ、ついさっきね。
   久し振りねレオくん、シアちゃん。
  もう結婚したんだっけ?」

「いえ、まだ婚約だけです。
  お久しぶりです。
  リゼッタ殿」

「お久しぶりですわ、リゼッタ様」

  いつの間にか旅から戻ってきたリゼさんでした。
  おそらくリリに言われてわたしの話が終わるまで待たされていたのでしょう。
  ところで『話は聞かせて貰った』と言っていましたが、この部屋は魔法的な物ではないけれど、それなりの防音処理を施しているのですが…………まぁ、リゼさんですからね。

「それでリゼさん、何か考えがあるのですか?」

「ええ、エンシェントドラゴンの血と世界樹の果実でしょ?
  それなら私とユウちゃんで取りに行けば良いのよ」

  ビックリな提案です。

「確かに2人だけなら移動速度も速く出来ますし、わたしが同行し、調合しながら旅をすれば完成も早まるでしょう。
  しかし、それでも半年以上は魔境の奥を彷徨う事になりますよ?
  その間に魔族との戦争が始まったらどうするのですか?」

  あまり戦争に関わりたくは有りませんがリリや街のみんなに被害が及ぶなら容赦はするつもりは有りません。
  それに魔王リセルシアやザジさんにはこの前のお礼をしなければなりませんからね。
  ですからあまり長く情報の入ら無い魔境に籠るのは遠慮したいです。

「ああ、その件ね。
  それなら大丈夫よ。
  あと1年半は大規模な開戦はないわ」

  リゼさんはハッキリと言い切りました。

「リゼッタ殿、なぜそんな事がわかるのですか?」

「まだ詳しくは言えないけどこの情報は確かな物よ。
  私が保証するわ」

「Sランク冒険者の……リゼッタ殿の保証が有るなら疑う余地はありませんね……この情報は国王陛下にもお伝えしてよろしいですか?」

「ええ、お願いするわ。
  元々私はこれから王都に行ってフリードに伝えるつもりだったからね」

  うーん、しばらく街を離れても大丈夫ですか……そうなるとやはりエリオさんの魂の傷を治療する事は重要ですね。

「わかりました。
  このままでは、邪神に人間が滅ぼされてしまいますからね。
  魔境に向かい薬を作りましょう。
  レオさん、シアさん。
  あとでリストを渡しますからエンシェントドラゴンの血と世界樹の果実以外の素材を手に入れて下さい」

「わかりました」

「お任せ下さい」

  取り敢えずコレで話はひと段落ですね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

処理中です...