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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》
82話 欲望の徒
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エレインさんの転移魔法によって一瞬の内にケルベン王国の王都へと転移した俺達は、王都で数日過ごした後、ロックドック王国を目指して出発した。
途中、少し道を逸れる事で精霊の泉に立ち寄る予定だ。
御者台に座り馬車を操る俺の横にはカートが座っている。
「エリオ……俺達は冒険者だ。
冒険者……それは冒険をする者達の事だ。
未知への飽くなき探究心こそが冒険。
この世の神秘をこの目に刻む事こそ冒険者である俺達の義務ではなかろうか?」
「カート……覗きは止めとけ。
この前もそう言って覗こうとして2人にボコボコにされただろ。
それと覗きは冒険ではなく犯罪だ」
現在、マーリンとソフィアは馬車の中で身体を拭いている。
俺にカートを見張る様に厳命して……
もしカートが事に及べば俺も怒られるだろう。
「『いや、待てよ!どうせ怒られるなら俺も一緒に覗いた方が得なのでは!』
そう考えたエリオはカートと共に馬車の幌をめくり……」
「勝手なモノローグを入れるな!
だいたい仲間に対してもっと誠実で有るべきだぞ!」
「おいおいエリオ、何を言ってるんだ。
彼女らの肌を見たいと言う事はそれだけ彼女らが魅力的だと言う事だろう。
つまりこの場合、仲間で有るなら覗くことこそが必然。
実際に見る必要は無い。
『見ようとして止められる』、見たい俺達と見られたくない彼女らの攻防と言うじゃれ合いが親密な関係を形成するんだぞ」
「……………………確かに!」
「『確かに!』っじゃない!」
ドガッ
「いっ痛!」
マーリンが振り下ろした杖が俺の頭を打ち据えた。
「全く、何を言い包められてんのよ!」
「ご、ごめん」
マーリンはカートにも杖の一撃を与えると馬車を指差す。
「ほら、御者を変わるからあんた達も身体を拭いて来なさい」
「「了解」」
俺達はマーリンの冷たい瞳とソフィアの軽蔑の眼差しに耐えながら馬車へと移動するのだった。
===========================
あの黒い少女を地下牢に入れてから5日がたった。
そろそろ我慢の限界だ。
早くあの少女の悲鳴が聞きたい。
あの少女の肌に鞭の跡が刻まれるのを見たい。
僕は我慢できずにパパに尋ねる。
「ねぇパパ、そろそろあの女の調教を始めても良いかな?」
「う~んまだ5日だからな、あの娘は冒険者だと言うから10日くらいは掛かると思うのだが……少し様子を見に行くか」
「うん」
僕とパパは護衛と家令を連れて地下室に向かった。
暗闇と絶食によって心を折れば下賎な冒険者も反抗はして来ないだろう。
そう言えばあの女と一緒に閉じ込めた女に最後に餌をやったのはいつだったか…………まぁ、死んだら死んだでまた新しい女を買えばいいか。
「ん?バルトロスはどうした」
あの女を牢に入れた時に居た護衛の1人が居ない。
バルトロスは当家の護衛の中では最強の男だ。
どうせ何処かで油でも売っているのだろう。
見つけたら職務怠慢で罰を与えなければならない。
僕達はバルトロスを抜きにして地下牢への階段を降りた。
すでに陽は落ちており地下室はどっぷりと闇に…………包まれてはいなかった。
牢の中には沢山の光の魔石が設置されとても明るい。
牢の中に有った唯一の物と言える粗末なベッドは跡形もなく消え去り、代わりに大きくフカフカの綺麗なベッドが置かれている。
地下牢には不釣り合いなオシャレなテーブルの上には色取り取りなお菓子が並び、ティーカップを満たす上等な紅茶からは湯気が立ち昇っている。
そのテーブルの周りには座り心地の良さそうなソファが置かれ、5人の女性が菓子と紅茶を楽しんでいた。
アホール・フォン・ナタラの嫡男バーカル・フォン・ナタラは現状を理解出来なかった。
まるで貴族の屋敷に有る様な豪華な家具や手の込んだ菓子、上等な紅茶は一体何処から出て来たのか、隣の牢に居たはずの3人が何故一緒に紅茶を飲んでいるのか、バーカルの理解を超えた現象だった。
「ああ、もう来ましたか」
そんなバーカルとアホールの顔を見ながら黒い少女は微笑むのだった。
途中、少し道を逸れる事で精霊の泉に立ち寄る予定だ。
御者台に座り馬車を操る俺の横にはカートが座っている。
「エリオ……俺達は冒険者だ。
冒険者……それは冒険をする者達の事だ。
未知への飽くなき探究心こそが冒険。
この世の神秘をこの目に刻む事こそ冒険者である俺達の義務ではなかろうか?」
「カート……覗きは止めとけ。
この前もそう言って覗こうとして2人にボコボコにされただろ。
それと覗きは冒険ではなく犯罪だ」
現在、マーリンとソフィアは馬車の中で身体を拭いている。
俺にカートを見張る様に厳命して……
もしカートが事に及べば俺も怒られるだろう。
「『いや、待てよ!どうせ怒られるなら俺も一緒に覗いた方が得なのでは!』
そう考えたエリオはカートと共に馬車の幌をめくり……」
「勝手なモノローグを入れるな!
だいたい仲間に対してもっと誠実で有るべきだぞ!」
「おいおいエリオ、何を言ってるんだ。
彼女らの肌を見たいと言う事はそれだけ彼女らが魅力的だと言う事だろう。
つまりこの場合、仲間で有るなら覗くことこそが必然。
実際に見る必要は無い。
『見ようとして止められる』、見たい俺達と見られたくない彼女らの攻防と言うじゃれ合いが親密な関係を形成するんだぞ」
「……………………確かに!」
「『確かに!』っじゃない!」
ドガッ
「いっ痛!」
マーリンが振り下ろした杖が俺の頭を打ち据えた。
「全く、何を言い包められてんのよ!」
「ご、ごめん」
マーリンはカートにも杖の一撃を与えると馬車を指差す。
「ほら、御者を変わるからあんた達も身体を拭いて来なさい」
「「了解」」
俺達はマーリンの冷たい瞳とソフィアの軽蔑の眼差しに耐えながら馬車へと移動するのだった。
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あの黒い少女を地下牢に入れてから5日がたった。
そろそろ我慢の限界だ。
早くあの少女の悲鳴が聞きたい。
あの少女の肌に鞭の跡が刻まれるのを見たい。
僕は我慢できずにパパに尋ねる。
「ねぇパパ、そろそろあの女の調教を始めても良いかな?」
「う~んまだ5日だからな、あの娘は冒険者だと言うから10日くらいは掛かると思うのだが……少し様子を見に行くか」
「うん」
僕とパパは護衛と家令を連れて地下室に向かった。
暗闇と絶食によって心を折れば下賎な冒険者も反抗はして来ないだろう。
そう言えばあの女と一緒に閉じ込めた女に最後に餌をやったのはいつだったか…………まぁ、死んだら死んだでまた新しい女を買えばいいか。
「ん?バルトロスはどうした」
あの女を牢に入れた時に居た護衛の1人が居ない。
バルトロスは当家の護衛の中では最強の男だ。
どうせ何処かで油でも売っているのだろう。
見つけたら職務怠慢で罰を与えなければならない。
僕達はバルトロスを抜きにして地下牢への階段を降りた。
すでに陽は落ちており地下室はどっぷりと闇に…………包まれてはいなかった。
牢の中には沢山の光の魔石が設置されとても明るい。
牢の中に有った唯一の物と言える粗末なベッドは跡形もなく消え去り、代わりに大きくフカフカの綺麗なベッドが置かれている。
地下牢には不釣り合いなオシャレなテーブルの上には色取り取りなお菓子が並び、ティーカップを満たす上等な紅茶からは湯気が立ち昇っている。
そのテーブルの周りには座り心地の良さそうなソファが置かれ、5人の女性が菓子と紅茶を楽しんでいた。
アホール・フォン・ナタラの嫡男バーカル・フォン・ナタラは現状を理解出来なかった。
まるで貴族の屋敷に有る様な豪華な家具や手の込んだ菓子、上等な紅茶は一体何処から出て来たのか、隣の牢に居たはずの3人が何故一緒に紅茶を飲んでいるのか、バーカルの理解を超えた現象だった。
「ああ、もう来ましたか」
そんなバーカルとアホールの顔を見ながら黒い少女は微笑むのだった。
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