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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

81話 貴族からの仕事

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「はい、マンドラゴラ3本の納品を確認しました。
  こちらが報酬になります」

「ありがとうございます」

  わたしはリッツさんから報酬を受け取りギルドを出ます。
  市場で果物や野菜を物色し、いくつかのハーブと果物を買って雷鳥の止まり木に帰りました。

「ただいま帰りました」

「師匠、お帰りなさい。
  先程、ミーナさんが訪ねて来ましたよ?」

「ミーナさんが?」

  そろそろやって来る頃だとは思っていましたが、わたしが危険地帯に行っている間に到着した様ですね。

「わかりました。
  お店の方に行ってみます」

  わたしは帰って来たばかりの雷鳥の止まり木を出てミーナさんのお店に向かいました。

「ミーナさん」

「あ、ユウさん。
  さっき雷鳥の止まり木に行ったら依頼に出てて不在だって、リリちゃんに聞きましたよ?」

「ついさっき帰って来たんですよ」

「そうでしたか。
  私のお店の準備が整ったので10日後にでもオープンするつもりなので、ユウさんにも連絡しようと思いまして」

「おお、ついにオープンですか!
  必ず買いに来ますね」

「ありがとうございます」
 
   ミーナさんと少し話をして今度こそ帰ります。


  雷鳥の止まり木に向けて通りを歩いていると、わたしの横に馬車が着けて来ました。
  わたしが足を止めると馬車から1人の男が降りて来ます。
  貴族の家令と言った感じでしょうか?
  身なりは良いのですがこちらを見下した様な雰囲気を感じます。

「薬師のユウだな、一緒に来てもらおう」

「生まれ変わって出直して来てください」

  家令風の男の横を素通りし歩き去ろうとしたわたしですが、家令風の男はしつこく呼び止めて来ました。

「まて! まて! まてと言っているだろう!
  私はナタラ男爵閣下に仕える家令、イマームだ。
  お前に仕事を持って来た。
  さっさと馬車に乗れ」

「随分と舐めた家令ですね。
  貴族からの依頼はガスト辺境伯家を通す事になっているはずですよ?」

「フレイド卿の許可はいただている」

  失礼な家令は懐から1枚の書状を取り出しました。
  その書状を受け取り内容に目を通します。

『 フレイド・フォン・ガストの名において薬師ユウにナタラ男爵家当主、アホール・フォン・ナタラの指示に従う事を命ずる』

  この文章の下に辺境伯家の印とフレイド様のサインが有ります。

「…………わかりました。
  馬車に乗れば良いのですね?」

「そうだ、グズグズするな」

  イマームの乗っていた馬車に乗り込むとすぐに走り出しました。
  行き先は貴族街の様ですね。
  貴族街に入り数分ほど走ったでしょうか?
  貴族街の端の方、平民からすると大きな、しかし貴族からすると少々小さい屋敷へと到着しました。

「着いたぞ、さっさと降りろ」

「はい」

  イマームについて廊下を歩くと応接室に通されました。

「ここで待っていろ。
  欲を出して調度品に触れるなよ」

  失礼ですね。
  わたしのお店の方がセンスの良い調度品を置いていますよ。
  お茶の1つも出される事なく待たされること30分ほど、ようやく当主のアホールとやらがやって来ました。
  そうですね、有名なところで言うとガマガエルに似ています。
  そして、ガマガエルの横にはヤモリ似の男も一緒です。
  多分息子でしょう。
  両生類系の顔立ちがよく似ています。

「フン、貴様が噂の薬師か…………貧相な娘だがまぁ良い。
  付いて来い」

  む、誰が貧相ですか!
  一部の紳士達にはモテモテのボディですよ!
  このロリコン共め…………誰がロリですか!
  わたしがガマガエルとヤモリに付いて行くと地下室に案内されました。
  いえ、オブラートに包んで地下室です。
  有り体に言えば地下牢ですね。
  領主の屋敷なら兎も角、何故1貴族の屋敷に地下牢が有るのでしょうか?
  薄暗い地下牢の中には簡素なベッドが置かれています。
  光源は壁に掛けられたランプと遥か頭上に有る換気様の穴くらいです。
  
「病人はこの中だ。
  すぐに治療を始めろ」

「え、なんで病人を地下牢に入れているのですか?」

「余計な事は聞かなくて良い!」

「はいはい」

  わたしは鍵のかかってない檻を開けると地下牢の中に入りベッドに近づきます。

「ん?」

  ベッドの中を覗き込むと15~6歳くらいの少女が声を殺して泣いていました。
  軽く診断スキルを使ってみますが彼女は弱っていますが特に病気などは無く、普通に暮らして入れば体調もすぐに良くなる筈です。

  ガチャ

  その音に振り返るとガマガエルが牢の鍵を掛けたところでした。

「ぶぎゃはっはっはっは~!
  バカな女だ、ノコノコと付いて来おって!
  これで大陸の外の薬の知識はこの俺の物だ!」

  わたしがガマガエルの方に1歩近くとガマガエルは更に得意げに喋ります。

「なんだ?
  反抗しようと言うのか?
  無駄だ、その牢は対魔法処理を施している。
  その中では魔法を使う事は出来ん。
  お前は召喚魔法で武器や魔物を召喚するのだろう?
  魔法を使えぬお前などただの小娘に過ぎん」

「けけけ、ねぇパパ、あの女、僕のペットにして良い?
  昨日、新しい鞭が届いたんだ」

「おお、良いとも殺さなければあの娘はお前の好きにしていいぞ」

「やったー!」

「まぁ、まだ反抗心があるだろうからな。
  しばらくこのまま放って置こう。
  餌も無く10日も牢の中に入れば自分の立場を弁えるだろう」

  そう言うとガマガエルとヤモリ、それと護衛や家令達はランプを消して立ち去って行きました。
  薄暗い牢の中にはわたしと何故か泣いている少女が残されたのです。
  

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