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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

71話 束の間の日常

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   ヤナバル王国の国境を越えた俺たちは帝国の反対側、リーブン王国の隣に有る小国、ケルベン王国の端にある小さな宿場町に居た。
 
「じゃあ、このままこの国を抜けてロックドック王国まで足を延ばすか?」

「そうね、取り敢えずこの国の王都に行って情報を集めると言うのは如何?」

  カートの問いにマーリンが意見を言う。

「そうだな……」

  俺は新しく加わった仲間に視線を向ける。

「ソフィアは如何思う?」

「わたしもマーリンの意見に賛成です。
  ロックドック王国に向かうのは王都で情報を集めてからでも遅くないと思います」

  水の紋章に選ばれたソフィアは俺たち《精霊の紋章》に加わってくれた。
  なんでもソフィアは生き別れた家族を探しているそうで、その為に色々な場所を回りたいらしい。
  俺たちも大陸中を巡る為、目的も一致している。
  それに人類の為に戦うのは当然だとも言っていた。
  多分、すごく良い奴なんだろう。
  英雄になりたいなどと言う自分の動機が何だか情けなくなる。
  俺たちの現在の目的地はロックドック王国だ。
  ドワーフの国であるロックドック王国で強力な武器を手に入れようという訳だ。
  精霊の紋章が宿った物に関する情報を集めながら向かえば一石二鳥だ。

「よし、ではこの国の王都を目指す事にしよう」

  俺たちは話し合いの末、次の目的地をケルベン王国の王都に決めてたあと、夕食のメニューを決める為の話し合いを始めるのだった。


===========================


「では、魔族はすでに水のオーブと風のオーブを手に入れていると言う事ですか」

  アルさんの言葉に少し補足を入れます。

「はい、あくまでもわたしが知っている限りですが……オーブが有るのが人間の領域だけとは限りません、もともと、魔族の領域にもオーブが有るかも知れませんし、わたしが知らない内に奪われたオーブも有るかも知れません」

「確かに…………報告ご苦労だった。
  この件は私から国王陛下にお伝えしておこう」

「お願いします、フレイド様、アルさん」

  わたしはユーリア様とサチ様の様子を見た後、フレイド様とアルさんにヤナバル王国での出来事を報告しました。
  後のことはフレイド様にお任せです。

「では、そろそろわたしはお暇しますね」

「ああ、わざわざ済まなかったな。
  今度は夕食でも食べに来てくれ、弟子も一緒に」

「はい、ありがとうございます。
  ミッシェル様とユーリア様にお伝え下さい」

  わたしは辺境伯邸から出ると自分の店に向けて歩き始めました。



  大通りから外れ、裏道に入って数分歩くとわたしのお店である《雷鳥の止まり木》に帰って来ました。
  昨日は帰ってすぐ休んでしまいましたし、今日は朝から辺境伯家に出向いていた。
  数日は店でゆっくりしたいですね。

「ただいま帰りました~」

「あ、師匠!お帰りなさい」

「おうユウ、帰ったか」

  わたしがお店に入るとカウンターに座ったリリに対面する様にジャギさんが立っていました。

「ジャギさん、お久し振りですね」

「ああ、久し振りだな」

「如何されたのですか?
  ポーションなら備蓄分が有るはずですが?」

「いや、今回は薬の調合を依頼したいんだ」

  おや、珍しいですね。
  ジャギさん程の凄腕なら大抵の市販薬は商業ギルドで購入できるはずですからね。
  わざわざ、わたしの帰りを待っていたと言うことは難しい薬なのかも知れません。
  
「実はガナの街の近くの村でポイズンアントが大量発生したらしくてな。
  その討伐依頼を受けたんだ。
  俺だけなら問題ないんだが、今回は偶に面倒をみている奴等を連れて行くからな。
  Dランクに上がったばかりの奴等だし、村人にもポイズンアントの毒を受けている者も居るかも知れねぇ。
  ポイズンアントはこの辺りにはあまり出ないから商業ギルドにも解毒薬の在庫が少なくてな、それで調合を頼みに来たんだ」

「なるほど」

  おそらく彼はその面倒を見ている後輩に薬を用意しておけとか言ってないのでしょうね。
  でも、それは意地悪では有りません。
  相手がポイズンアントだとわかっているのだから薬を準備しておくのは当然です。
  もし、後輩が毒を受けたら薬を渡し、そう教えるつもりなのでしょう。
  それに村人の薬を用意するのは依頼の範疇外ですが、相変わらず面倒見が良い様ですね。

「わかりました。 
  明日までに調合しておきます」

「よろしく頼む」

  ジャギさんを見送ったあと、わたしはリリに話しかけます。

「ではリリ、ポイズンアントの解毒剤の調合の準備をしましょう」

「はい」

  わたしとリリは調合室で依頼の薬を作り始めるのでした。


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