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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

66話 反乱の兆し

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  アルッキさんから新たな戦斧、ピリオドを受け取ったわたしはナミさん達に挨拶して、リーブン王国を後にしました。
  国境で態度の悪い兵士に入国を許可され、ヤナバル王国に戻って来ました。
  このまま、来た時と同じ様に真っ直ぐグリント帝国を目指しても良いのですが、せっかくなので少しだけ王都によってみる事にしました。
  カタンの街でガラッドさんから聞いた話では街中では兵士が好き放題やっている危険な場所なのだとか……
  自国の民を食い物にするとか、バカなんじゃないでしょうか?
  レジスタンスの噂もあるそうですし、遠くない内にこの国は崩壊すると思います。
  ちょっと見物したらすぐに帰りましょう。
  革命なんかに巻き込まれたくはありませんからね。
  眼下に見えるヤナバル王国の王都を観察していると、王都を囲む防壁のすぐ外で武装した男達に15歳くらいの少女が追われていました。 
  男達は少女を捕まえると仲間の男達の元に連れて行きます。
  男の腕の中で少女は暴れていますが鍛えられた男の腕力からは逃れる事ができません。
  仲間の男達の方には身体中に痣を作った男が捕まっています。

「お父さん!」

「頼む、娘には手を出さないでくれ!」

「「「ぎゃはっはっは」」」

  必死で頼み込む父親をみて、男達は笑い声を上げました。
  
「バカか? お前は俺達に逆らった。
  この国の衛兵である俺達にだ。
  つまり、この国の国王、リア様に反逆したってことだ。
  国家への反逆は重罪だぞ?
  家族も咎を受けるのは当然だ」

「そんな、あんた達が飲み食いした代金を払ってくれと言っただけじゃなか!」

「黙れ!」

  男が父親を殴りつけました。
  
「お前はそこで娘が犯されるのを大人しく見てろ」

「娘を犯し尽くして殺したあと、お前も後を追わせてやるよ」

「「「ぎゃはっはっは」」」

  す、すごいですね。
  言い掛かりなんてレベルではありませんよ。
  そこらへんのなんちゃって盗賊よりもよほど盗賊らしいです。
  わたしが驚愕していると、新たな人物が現れました。
  鍛えてはいる様ですがクズ共に比べると線の細い男と、筋骨隆々なおじさんです。

「おい、何をている?」

  線の細い男が尋ねるとクズ共は慌てて居住まいを正し、男に臣下の礼を取りました。

「これはマクベス様」

「こいつらは……その……国に対して反意がある様なので少々取り調べをしておりました」

「ほぅ、こんな場所でか?」

「ええ、まぁ、へへへ、どうですマクベス様も一発?
  乳臭いガキでは有りますが父親の前で犯るのはなかなか乙なものですよ?」

「「はっはっは」」

  クズ共は新たに現れた2人に親しげに話し掛けます。
  どうやらあの、線の細い男はクズ共のボスの様ですね。
  マクベスという名前には聞き覚えが有ります。
  たしかヤナバル王国の王族の名前だったはずです。
  とにかく、あの2人を助けましょう。
  最悪、国境を無視して他国に逃せば良いでしょう。
  2人くらいなら、オリオンに運んで貰えば楽勝です。
  わたしは、男達がマクベスとやらに近づき、親子と離れた時を見計らいオリオンから飛び降り、男達と親子の間に着地しました。

「「え⁉︎」」

「え⁉︎」

  マクベスと連れのおじさんが驚き、そしてわたしも驚きました。
  マクベスは一瞬で抜き放った剣を振るいクズ共の1人を斬り殺していたのです。
  また、筋肉おじさんもクズを1人殺しています。
   仲間割れでしょうか?

「君は……」

  マクベスが何かを言いかけた時、最後に残っていたクズがわたしに向かって駆け寄ってきました。
  クズはわたしの首にナイフを突き付けると怒鳴り声を上げます。
 
「ぅ、動くな!
  ど、どういう事だ!
  なんで、あいつらを殺したのですか!
  マクベス様!」

「落ち着け、その少女を離すんだ」

「い、嫌だ!
  何なんだあんた!
  何を考えていびゃ」

  男は最後まで言い切る事なく地面に転がります。
  わたしは男の胸から生えている短剣を回収するとゴポッと血を吐き出した男を邪魔にならない辺りまで蹴り飛ばしました。
  時折ひゅーひゅーと煩いですが、その内静かになるでしょう。

  わたしは親子を庇いながらナイフを構えます。
  すると向こうも筋肉おじさんがマクベスを庇う様に立ち、剣を構えました。

「まて、マグタフ!
  剣を納めろ」

「しかし、若!」

「構わん、彼女がその気なら俺達ではあがらう事も出来んだろう」

  筋肉おじさん改めマグタフはマクベスの言葉に従い剣を納めました。
  相手が納めたのですからわたしが構えているのも礼を失しますね。
  ナイフを懐に戻します。

「初めまして、お嬢さん。
  俺はマクベス、この国の第3王子だ」

「やはり、貴方が女を片っ端から手篭めにして行くと言う噂のクズ王子でしたか。
  わたしはユウと言います
  何処にでも居る普通の女の子です」

「ははは、何処にでも居る普通の女の子は一応鍛えている兵士を一撃で殺せるはずがないよ」

「普通ですよ普通、普通の何処にでも居る女の子で普通のAランク冒険者です。
  それで、これは何の真似ですか?」
  
  わたしが何故手下を殺したのかを問うと、マクベスはわたしの後ろで戸惑って居る2人にチラリと視線を送ると答えを口にします。

「あの2人を助けるためさ。
  俺はレジスタンスのリーダーだからな」
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