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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

63話 精霊の盃

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  ロミオとマクベスの後に続いて城の廊下を進む。  
  これから向かうのはヤナバル王国の宝物庫だ。
  俺達はレジスタンスに協力した報酬として、ヤナバル王国が有する国宝を1つ譲り受ける約束をしていた。
  城の廊下は戦闘の跡が所々に残っており、名画や壺なども傷付いている。
  宝物庫の前には兵士が1人で警備に付いていた。
  今は兵士の多くが戦死したり、逃げ出した所為で殆ど残っていない。
  残っている者も多くが悪行に手を染めていた者で、現在は地下牢に幽閉されている。
  今、宝物庫を警備しているのは数少ないまともな兵士の1人だ。
  警備の兵士に軽く声を掛け宝物庫に入って行く。
  宝物庫には数多くの財宝が納められていた。
  この国は今、非常に治安が悪化しており、これを回復させる為に莫大な費用が必要となる。
  その為、俺達が報酬を受け取った後、多くの財宝が整理され売却する予定らしい。
  リア王を始め、捕縛されたゴリネル王子や国の高官はすでに処刑されている。
  この国の新たな王は未だ決まっておらず、今はレジスタンスの幹部とマクベスが協議して国を運営している。
  しかし、政策を実行するには当然費用が必要となる。
  その費用を捻出する為、宝物庫の財宝を整理しようと言う事だ。

「さて、エリオ達が探している物はどんな物なんだ?」

「どんな形をしているのかは分からない。
  取り敢えず、精霊に関わる物を見せて欲しい」

「わかった。
  付いて来てくれ」

  俺達はマクベスの案内で宝物庫の奥に向かう。
  精霊の加護を受けた宝玉や精霊から与えられた弓などの説明を受けながら財宝を確認して行くがよく分からない。
  そもそも、精霊の力が宿っている物を見分ける方法が分からないのでどうする事も出来ない。
  取り敢えず、ミルミット王国の精霊像の様に手に取って見ている。
  そして、マクベスが1つの盃を取り出した。

「コレはかつて精霊と友誼を結んだ際、酒を飲み交わしたとされる盃だ」

「へぇ」

  カートがマクベスから盃を受け取る。

「わかんねぇな?」

  くるくると盃を眺めたカートがマーリンに手渡す。

「そうね、確かに精霊の力を感じるけど、それは他の財宝も同じだしね」

  マーリンから盃を受け取る。
  すると盃を受け取った瞬間、俺の右腕の精霊の紋章が淡く光り始めた。

「な、なんだ!」

「エリオの腕が光ってるぞ」

  盃を机の上に戻すと腕の光りは消える。
  改めて盃に触れるとまた、光り始めた。

「コレね」

「ああ、ロミオ、マクベス。 
  俺達はこの盃を貰いたい」

「ああ、約束だからな。
  だが、その盃は歴史的な価値はあるが、財宝としての価値はあまり無いぞ?」

「構わないよ」

  俺達は盃を受け取ると宝物庫を後にする。
  俺達の中にはこの盃に込められた精霊の力を受け取れる者が居なかった。
  しかし、ミルミット王国で聞いた精霊の予言が正しいならその内、俺達の前には現れるはずだ。
  
「ああ、おかえりなさい。
  目的の物は見つかりましたか?」

  談話室に戻って来ると紅茶を飲んでいたソフィアが声を掛けて来た。

「ああ、見つけたよ。
  この盃が……」

  俺がソフィアに見せようと盃を取り出した時、盃が光を放ち輝き始めた。

「な、コレは⁉︎」

「あの時の精霊像と同じだ」

「じゃあ、ソフィアが?」

  驚く俺達と訳がわからないと言う顔をするソフィア、それとロミオとマクベス。
  俺達は3人にミルミット王国で聞いた話を伝える。

「エリオが勇者だって⁉︎」

「それに勇者の仲間となる精霊に選ばれた者って言うのがソフィアなのか?」

「わ、私が……」

  とにかく、ソフィアに盃に触れて貰う事になった。

「さ、触りますよ?」

  若干、戸惑いながらソフィアが盃に触れる。
  すると優しい光りが談話室を満たす。
  そして、光りが収まった時、ソフィアの右腕には、俺とは別の紋章がアザの様に刻まれていた。
  その紋章は、国王様が見せてくれた本に描かれていた物の1つだった。
  それを思い出したのか、皆の驚きによる沈黙をマーリンの呟きが破る。

「コレは…………《水の紋章》ね」
  
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