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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

54話 ドワーフの少女

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  水馬の蹄亭へと戻って来たわたしはアルッキさんに案内され、彼が逗留している部屋へ入ります。
  2つあるベッドの内、奥の方のベッドに少女が眠って居ます。

「娘のパーニャは、1年ほど前から体調を崩し始めたんだ。
  医者に診て貰っても良くならず、それどころかだんだんと症状は悪化して行った」

「どの様な症状が?」

「いろいろだ。
  高熱でうなされて居たと思えば、身体が氷の様に冷たくなり、一時的に目が見えなくなったり、吐血したり、かと思えば数日けろっとして居たりもした。
  そして、5日前、この宿に到着した夜に倒れてから1度も目を覚まさない」

「症状に一貫性が有りませんね。
  今まではどんな治療をして来たのですか?」

「如何にもこうにも医者も薬師もお手上げだったからな。
  熱があれば解熱剤を飲ませ、身体が冷たければ暖めて、と対症療法的な事しか出来なかった。
  あと、定期的にポーションを飲ませていたな。
  少しでも体力を回復出来ればとな。
  この国は錬金術が進んだ国だから効果の高いポーションが手に入るし、もしかしたら娘の病気を治せる錬金術師が居るかも知れないと思ってな」

「そうでしたか……ん、検査が終わりました」

  わたしは検査薬の反応を診て診断スキルを使います。

「パーニャさんの病気は龍呪病ですね」

「なんだその病気は?」

「ドラゴンでさえ死に至る呪いの様な病として古代魔法文明の時代アルファル王国と言う国で猛威を振るった病気です。
  パーニャさん、エルフとの混血ですよね?」

「ああ、俺の曽祖母がエルフだ」

「この病はエルフとドワーフの混血に発病するんですよ。
  アルファル王国はドワーフとエルフの国でしたから大流行したんでしょうね」

  ドラゴンですら死に至るのにドワーフとエルフの混血で発病するとはこれいかに?
  まぁ、ドラゴン云々は比喩なんでしょうね。
  最近は発病した記録が無いので淘汰されたと思われていた病気です。
  治療薬を知っているのはハイエルフなどの長命種の中でも特に長命なごく一部でしょう。

「それで、治せるのか?」

「大丈夫です。
  幸い、アルッキさんがお金に糸目をつけず上級ポーションを飲ませていたお陰であまり進行していません。
  龍呪病は体調をランダムに変える呪いの様なものなんです。
  今のパーニャさんは『昏倒』しているだけです」

「そ、そうか、じゃあパーニャは助かるんだな」

「はい、薬を調合しますので少し待っていて下さい」

  水馬の蹄亭のご主人に中庭を借りると調合を開始します。
  材料は割と手に入りやすい物が多いですが1つ入手難度が高い物があります。
  多くの魔力を宿した竜種の素材です。
  上位の竜種なら鱗とかでも良いのですが、今回はワイバーンの魔石を使います。
  沢山有りますからね。
  ワイバーンの魔石を砕き水と混ぜ、魔力を水に移した魔水を作り、それを使って薬草とキノコを煮詰めて行きます。
  う~む、見た目が悪いですね。
  まぁ、仕方ないです。
  

  そして、その日の夜。
  ようやくクスリが完成しました。
  さっそくパーニャさんの元に持って行きます。

「おお、完成したのか!」

「はい、パーニャさんの上半身を起こして下さい」

  わたしとアルッキさんは意識がないパーニャさんに四苦八苦しながら飲ませました。

「…………ん」

  お!
  ずっと閉じられていたパーニャさんの瞳が再び開かれました。

「お父さん……」

「パーニャ、パーニャもう大丈夫だぞ。
  大丈夫だよな?」

  滂沱の涙を流したアルッキさんが顔をくしゃくしゃにしながらパーニャさんに抱きつきます。
  ところで、ドワーフの女性は低身長で丸っこくて、ホビット族とはまた違った意味で合法ロリです。
  パーニャさんは18歳らしいのですが見た目は12歳くらいに見えます。
  この世界には合法ロリが溢れています。
  羨ましいでしょう、このロリコンどもめ!

「大丈夫ですよ。
  食事と睡眠で体力を回復させれば問題有りません。
  取り敢えず3日は安静にして居て下さい」

「わかった!胃に優しい物を作って貰ってくる。
  パーニャ、お前は寝てろ」

  アルッキさんはドタドタと騒がしく部屋を出て行きました。
  これでアルッキさんの問題は解決しました。
  ようやくわたしも戦斧を造って貰えます。
  そう考えながらキョトンとしているパーニャさんに挨拶し、体調を診るのでした。
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