241 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》
46話 皇帝陛下の庇護
しおりを挟む
冒険者ギルドを後にしたわたし達は辻馬車を拾い宮廷へと向かった。
「ローザさんは皇帝陛下とは面識は有るのですが?」
「はい、特別親しい訳では有りませんが何度かご挨拶させて頂いた事が有ります」
「そうですか。
それなら割とスムーズに進むかも知れませんね」
今になって思い至りましたが、ローザさんがロザリー教皇猊下だと証明するのが難しいかも知れないと思ったのです。
なんでも、代々教皇に伝わる錫杖をアンデットとの戦闘で失ってしまったそうです。
ドジっ子ですね。
翌日、村人達と探してみましたが見つかりませんでした。
どうしたものかと思いましたが面識があるなら話は早いです。
それと無闇にローザさんの顔を晒すのはこちらの目的としてはよろしくないのでフードで顔を隠して貰いましょう。
「到着致しました」
辻馬車の御者に代金を払い馬車を降りると目の前には大きな宮廷が有ります。
特に後ろ暗い所もないので、堂々と正面から近づいた行くと門の前に立っていた兵士さん達が少し警戒した顔付きになりました。
更に近くと2人の兵士さんがこちらへと歩いて来ます。
「お前達、宮廷に何か用があるのか?」
「はい、わたしはこう言う者なんですが……」
ギルドカードとグリント帝国の紋章が入ったカードを兵士さんに差し出します。
「これは⁉︎
し、失礼いたしました!」
帝国の紋章を見た途端2人の兵士さんは直立不動となってしまいました。
「ああ、いえいえ、こちらこそ先触れも出さずに申し訳ありません。
至急、皇帝陛下に面会したいのです。
皇帝陛下はご多忙だとは思うのですが『ユウが大事な話があるので会いたい』とお伝え頂けますか?」
「は、はい!」
慌てて駆け出そうとした兵士さんを呼び止め、言伝を追加しておきましょう。
「あ、それと出来れば面会は非公式の場でお願いします」
「はい!」
兵士さんは門のところで馬に乗ると宮廷へと駆けて行きました。
わたし達は門の所で兵士さんが用意してくれた馬車でゆっくりと宮廷に向かいます。
宮廷に到着するとそこには執事のヤナンさんが待っていてくれました。
「お久しぶりです、ヤナンさん」
「ご無沙汰しております、ユウ様」
「ハイランド陛下とは面会できるでしょうか?」
「陛下はただいま政務を行なっております。
ユウ様の来訪をお伝えすると時間を作るとお答え頂きました。
お部屋をご用意致しますので、お連れ様と共にしばしお待ち下さい」
ヤナンさんに応接室に通されたわたし達はしばらく時間を潰します。
1時間ほどした時でしょうか?
皇帝陛下が応接室を訪れました。
わたし達も立ち上がり礼を取ります。
「久しいな、ユウ殿。
息災であったか?」
「はい、お陰様で皇帝陛下もお元気…………いえ、少し腰を痛められているようですね。
後で薬を調合しましょう」
何となく診断スキルを使うとどうも皇帝陛下は腰痛に悩まされているようです。
「はっはっは、それは有難いな。
さぁ、楽にしてくれ」
皇帝陛下に促されたわたし達はソファに掛け直し、小さな机を挟んだ向かい側に皇帝陛下が腰を下ろしました。
「さて、緊急の要件だと聞いたが……そちらの女性の件か?」
皇帝陛下はローザさんに視線をやりながら尋ねて来ました。
まぁ、気づきますよね。
皇帝陛下を前にフードで顔を隠しているのですから当然訳ありだと思われたのでしょう。
「はい、その通りです」
「では、要件とは何だ?」
「その前に……」
わたしは部屋の中にいた侍女さんや護衛の騎士さんに視線をやりました。
「成る程、ヤナン以外は退がれ」
皇帝陛下の背後に控えたヤナンさん以外の人達が部屋を出て行きました。
「これで良いか?」
「過分な対応、痛み入ります」
ローザさんが皇帝陛下にお礼を言いながらフードを取りました。
「な、あ、貴女は⁉︎」
皇帝陛下とヤナンさんが驚愕しています。
そりゃあ、死んだと思っていた隣国の国家元首が目の前には現れたら驚きます。
それからわたし達は事情を説明し、2人の保護を求めました。
「成る程、事情は理解した。
本当ならいろいろと頼みたいところなんだがユウ殿の頼みだからな。
2人にはローザとレインの名前で市民証明を用意しよう。
それと貴族街の端の目立たない場所に屋敷を用意させよう」
「ありがとうございます」
「それと、その村にも警備の人員を派遣しよう」
「本当でございますか⁉︎」
「ああ、アンデットを使役していた者の目的が不明だからな。
兵が居れば逃げる事くらいは可能だろう」
こうして、ローザさんとレインさん、それとモーリスはしばらくの間、帝都で暮らすことになったのです。
そして、わたしはようやく本来の目的の為、リーブン王国を目指す事が出来ました。
随分と長い寄り道でした。
「ローザさんは皇帝陛下とは面識は有るのですが?」
「はい、特別親しい訳では有りませんが何度かご挨拶させて頂いた事が有ります」
「そうですか。
それなら割とスムーズに進むかも知れませんね」
今になって思い至りましたが、ローザさんがロザリー教皇猊下だと証明するのが難しいかも知れないと思ったのです。
なんでも、代々教皇に伝わる錫杖をアンデットとの戦闘で失ってしまったそうです。
ドジっ子ですね。
翌日、村人達と探してみましたが見つかりませんでした。
どうしたものかと思いましたが面識があるなら話は早いです。
それと無闇にローザさんの顔を晒すのはこちらの目的としてはよろしくないのでフードで顔を隠して貰いましょう。
「到着致しました」
辻馬車の御者に代金を払い馬車を降りると目の前には大きな宮廷が有ります。
特に後ろ暗い所もないので、堂々と正面から近づいた行くと門の前に立っていた兵士さん達が少し警戒した顔付きになりました。
更に近くと2人の兵士さんがこちらへと歩いて来ます。
「お前達、宮廷に何か用があるのか?」
「はい、わたしはこう言う者なんですが……」
ギルドカードとグリント帝国の紋章が入ったカードを兵士さんに差し出します。
「これは⁉︎
し、失礼いたしました!」
帝国の紋章を見た途端2人の兵士さんは直立不動となってしまいました。
「ああ、いえいえ、こちらこそ先触れも出さずに申し訳ありません。
至急、皇帝陛下に面会したいのです。
皇帝陛下はご多忙だとは思うのですが『ユウが大事な話があるので会いたい』とお伝え頂けますか?」
「は、はい!」
慌てて駆け出そうとした兵士さんを呼び止め、言伝を追加しておきましょう。
「あ、それと出来れば面会は非公式の場でお願いします」
「はい!」
兵士さんは門のところで馬に乗ると宮廷へと駆けて行きました。
わたし達は門の所で兵士さんが用意してくれた馬車でゆっくりと宮廷に向かいます。
宮廷に到着するとそこには執事のヤナンさんが待っていてくれました。
「お久しぶりです、ヤナンさん」
「ご無沙汰しております、ユウ様」
「ハイランド陛下とは面会できるでしょうか?」
「陛下はただいま政務を行なっております。
ユウ様の来訪をお伝えすると時間を作るとお答え頂きました。
お部屋をご用意致しますので、お連れ様と共にしばしお待ち下さい」
ヤナンさんに応接室に通されたわたし達はしばらく時間を潰します。
1時間ほどした時でしょうか?
皇帝陛下が応接室を訪れました。
わたし達も立ち上がり礼を取ります。
「久しいな、ユウ殿。
息災であったか?」
「はい、お陰様で皇帝陛下もお元気…………いえ、少し腰を痛められているようですね。
後で薬を調合しましょう」
何となく診断スキルを使うとどうも皇帝陛下は腰痛に悩まされているようです。
「はっはっは、それは有難いな。
さぁ、楽にしてくれ」
皇帝陛下に促されたわたし達はソファに掛け直し、小さな机を挟んだ向かい側に皇帝陛下が腰を下ろしました。
「さて、緊急の要件だと聞いたが……そちらの女性の件か?」
皇帝陛下はローザさんに視線をやりながら尋ねて来ました。
まぁ、気づきますよね。
皇帝陛下を前にフードで顔を隠しているのですから当然訳ありだと思われたのでしょう。
「はい、その通りです」
「では、要件とは何だ?」
「その前に……」
わたしは部屋の中にいた侍女さんや護衛の騎士さんに視線をやりました。
「成る程、ヤナン以外は退がれ」
皇帝陛下の背後に控えたヤナンさん以外の人達が部屋を出て行きました。
「これで良いか?」
「過分な対応、痛み入ります」
ローザさんが皇帝陛下にお礼を言いながらフードを取りました。
「な、あ、貴女は⁉︎」
皇帝陛下とヤナンさんが驚愕しています。
そりゃあ、死んだと思っていた隣国の国家元首が目の前には現れたら驚きます。
それからわたし達は事情を説明し、2人の保護を求めました。
「成る程、事情は理解した。
本当ならいろいろと頼みたいところなんだがユウ殿の頼みだからな。
2人にはローザとレインの名前で市民証明を用意しよう。
それと貴族街の端の目立たない場所に屋敷を用意させよう」
「ありがとうございます」
「それと、その村にも警備の人員を派遣しよう」
「本当でございますか⁉︎」
「ああ、アンデットを使役していた者の目的が不明だからな。
兵が居れば逃げる事くらいは可能だろう」
こうして、ローザさんとレインさん、それとモーリスはしばらくの間、帝都で暮らすことになったのです。
そして、わたしはようやく本来の目的の為、リーブン王国を目指す事が出来ました。
随分と長い寄り道でした。
0
お気に入りに追加
2,342
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる