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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》
34話 お師匠様
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「ただいま帰りました」
わたしが雷鳥の止まり木に戻って来たのはシアさんと別れて数日後、昼を少し過ぎた頃でした。
雷鳥の止まり木のカウンターではリリが薬学の本を読みながら店番をしています。
その横ではガスト辺境伯家に仕えている女性騎士マリエールさんが座っています。
こちらも戦術書を読んでいた様です。
「師匠、お帰りなさい」
「お帰りなさい、ユウ殿」
「はい、ただいまです。
マリエールさん、リリの護衛、ありがとうございます」
「いえいえ、この店にいる限りは特にトラブルなどはありませんし、楽な仕事ですよ」
マリエールさんはそう言って微笑みます。
確かにこの店を開いてから特に大きなトラブルなどはありませんね。
もしかしたら平穏なる箱庭のおかげなのでしょうか?
わたしは帝国で貰ったインテリアにチラリと目をやりそんな事を考えます。
「リリ、お店の方はどうでしたか?」
「はい、お客さんは、いつも通り冒険者の方が多かったです。
中級ポーションと解毒薬がよく売れました。
それと、リュミナスさんがまた調薬を依頼したいと……これが依頼の薬です」
わたしはリリから依頼の薬が書かれたメモを受け取りました。
「師匠の方はどうでしたか?」
「ええ、東の島国の美味しい物を沢山手に入れました。
今日の夕食を楽しみにしておくと良いですよ」
「やった!」
「騎士団とフレイド様達にもお土産を用意していますからね」
わたしはマリエールさんにも笑いかけます。
そこはやはり、ねぇ?
お世話になっている訳ですから。
「ありがとうございます、ユウ殿」
「あと、魔族と戦いました」
はい、爆弾発言です。
リリはキョトンとしていますがマリエールは驚き過ぎて目を見開いています。
「な、ま、まさか、東の島国に魔族が!
それをユウ殿が倒したのですか⁉︎」
「あ、いえ、倒したのでありません。
負けました。
それはもうボコボコに」
これにはリリも驚いた様です。
マリエールさんと一緒にあんぐりと口を開け、呆然としています。
「その件でフレイド様にお話したい事があります。
フレイド様にお伝えして頂けますか?」
「わ、分かりました」
承諾するとマリエールさんは挨拶もそこそこに辺境伯邸へと駆けて行きました。
これでフレイド様の時間が空き次第お呼びが掛かるでしょう。
今日はお風呂に入って、リリにリュウガ王国で手に入れた食材を食べさせてあげましょう。
翌日、わたしはガルフさんの工房を訪れています。
「こんにちは」
「おう、ユウじゃねぇか。
どうした、武器の手入れならついこの前やったはずだが?」
「はい、戦斧を造って下さい!」
「……………………水龍の戦斧はどうした?」
ガルフさんは頬をヒクつかせながら尋ねて来ました。
「砕かれました」
「砕かれたぁ⁉︎」
「はい、素手で」
「素手でぇ⁉︎」
ガルフさんはショックを受け、フラフラとした後、椅子に倒れこむ様に座り込みました。
そんなガルフさんに事情を説明します。
「魔王だと⁉︎」
「あまり口外しないで下さいね」
ガルフさんに口止めをして、改めて依頼します。
「しかしだな、素材があっても今の俺では水龍の戦斧以上の戦斧を造るのは難しいぞ」
「む、そうですか……」
「………………そうだな、俺の師匠なら水龍の戦斧以上の戦斧を造れるかも知れん」
「本当ですか⁉︎」
「ああ、師匠は古代文明の遺産である遺物級と同等の性能を持つ特級品を製造する事が出来る大陸に数人しか居ない武器職人だ」
「おお!そのお師匠様は今どこに?」
「わからん!」
なんてこった⁉︎
「わからないんだ、師匠は常に新しい武器の素材を探して大陸中を移動しているんだ。
少し時間をくれ、ツテを使って探してみるからよ」
「………………分かりました。
よろしくお願いします」
ガルフさんにお師匠様の捜索を頼み、経費として金貨を数枚渡し、工房を後にするのでした。
そして、雷鳥の止まり木に戻って来ると、ちょうどシルバさんが訪ねて来たところでした。
シルバさんの要件は当然魔族の事です。
わたしはシルバさんと共に辺境伯邸へと向かうのでした。
わたしが雷鳥の止まり木に戻って来たのはシアさんと別れて数日後、昼を少し過ぎた頃でした。
雷鳥の止まり木のカウンターではリリが薬学の本を読みながら店番をしています。
その横ではガスト辺境伯家に仕えている女性騎士マリエールさんが座っています。
こちらも戦術書を読んでいた様です。
「師匠、お帰りなさい」
「お帰りなさい、ユウ殿」
「はい、ただいまです。
マリエールさん、リリの護衛、ありがとうございます」
「いえいえ、この店にいる限りは特にトラブルなどはありませんし、楽な仕事ですよ」
マリエールさんはそう言って微笑みます。
確かにこの店を開いてから特に大きなトラブルなどはありませんね。
もしかしたら平穏なる箱庭のおかげなのでしょうか?
わたしは帝国で貰ったインテリアにチラリと目をやりそんな事を考えます。
「リリ、お店の方はどうでしたか?」
「はい、お客さんは、いつも通り冒険者の方が多かったです。
中級ポーションと解毒薬がよく売れました。
それと、リュミナスさんがまた調薬を依頼したいと……これが依頼の薬です」
わたしはリリから依頼の薬が書かれたメモを受け取りました。
「師匠の方はどうでしたか?」
「ええ、東の島国の美味しい物を沢山手に入れました。
今日の夕食を楽しみにしておくと良いですよ」
「やった!」
「騎士団とフレイド様達にもお土産を用意していますからね」
わたしはマリエールさんにも笑いかけます。
そこはやはり、ねぇ?
お世話になっている訳ですから。
「ありがとうございます、ユウ殿」
「あと、魔族と戦いました」
はい、爆弾発言です。
リリはキョトンとしていますがマリエールは驚き過ぎて目を見開いています。
「な、ま、まさか、東の島国に魔族が!
それをユウ殿が倒したのですか⁉︎」
「あ、いえ、倒したのでありません。
負けました。
それはもうボコボコに」
これにはリリも驚いた様です。
マリエールさんと一緒にあんぐりと口を開け、呆然としています。
「その件でフレイド様にお話したい事があります。
フレイド様にお伝えして頂けますか?」
「わ、分かりました」
承諾するとマリエールさんは挨拶もそこそこに辺境伯邸へと駆けて行きました。
これでフレイド様の時間が空き次第お呼びが掛かるでしょう。
今日はお風呂に入って、リリにリュウガ王国で手に入れた食材を食べさせてあげましょう。
翌日、わたしはガルフさんの工房を訪れています。
「こんにちは」
「おう、ユウじゃねぇか。
どうした、武器の手入れならついこの前やったはずだが?」
「はい、戦斧を造って下さい!」
「……………………水龍の戦斧はどうした?」
ガルフさんは頬をヒクつかせながら尋ねて来ました。
「砕かれました」
「砕かれたぁ⁉︎」
「はい、素手で」
「素手でぇ⁉︎」
ガルフさんはショックを受け、フラフラとした後、椅子に倒れこむ様に座り込みました。
そんなガルフさんに事情を説明します。
「魔王だと⁉︎」
「あまり口外しないで下さいね」
ガルフさんに口止めをして、改めて依頼します。
「しかしだな、素材があっても今の俺では水龍の戦斧以上の戦斧を造るのは難しいぞ」
「む、そうですか……」
「………………そうだな、俺の師匠なら水龍の戦斧以上の戦斧を造れるかも知れん」
「本当ですか⁉︎」
「ああ、師匠は古代文明の遺産である遺物級と同等の性能を持つ特級品を製造する事が出来る大陸に数人しか居ない武器職人だ」
「おお!そのお師匠様は今どこに?」
「わからん!」
なんてこった⁉︎
「わからないんだ、師匠は常に新しい武器の素材を探して大陸中を移動しているんだ。
少し時間をくれ、ツテを使って探してみるからよ」
「………………分かりました。
よろしくお願いします」
ガルフさんにお師匠様の捜索を頼み、経費として金貨を数枚渡し、工房を後にするのでした。
そして、雷鳥の止まり木に戻って来ると、ちょうどシルバさんが訪ねて来たところでした。
シルバさんの要件は当然魔族の事です。
わたしはシルバさんと共に辺境伯邸へと向かうのでした。
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