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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》
31話 紋章
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「こ、これは一体⁉︎」
その言葉が自分の口から出たものだと理解するのに少しだけ時間が必要だった。
何故だかは分からないが光りを放つ精霊像から目が離せない。
「エリオよ、像に触れてみなさい」
「は、はい」
普通ならその言葉の真意を問う所だろう。
しかし、俺はすんなりと国王陛下の指示を受け入れた。
マーリン達が息を飲んで見守る中俺はそっと手を伸ばす。
指先が像に触れた瞬間、光が溢れ、小さな部屋を満たす。
しかし、その光は暖かく、恐怖心などは感じない。
光は直ぐに消えた。
精霊像も不思議な光が消え、精巧ではあるがなん変哲もない置物となっている。
「な、何が……ってエリオ!
何よ、その腕⁉︎」
「え?…………な、何だこれは⁉︎」
マーリンに言われてようやく自分の、手の甲から肘に掛けて痣の様な模様が走っている事に気がついた。
「うむ、これはまさしく光の紋章、やはりお主があの時の赤子か……」
国王陛下が小さく呟いた。
場所を城の応接室へと移し、俺達は国王陛下から説明を聞く事となった。
「まずエリオよ、今から言う事を心して聞きなさい」
「は、はい」
「クション村は魔族の襲撃を受け、壊滅した」
「なっ!」
「落ち着きなさい」
いきなり、衝撃的な事を告げられ立ち上がった俺は国王陛下に肩を抑えられ再びソファへと座らされた。
国王陛下も腰を下ろすと続きを話し始めた。
「壊滅はしたが皆、死んだ訳ではない」
「ど、どう言う事でしょうか?」
「うむ、事の起こりは16年前、我が国の宮廷魔導師長を務めていたフリジオが2人の冒険者を連れて来た事だ。
その2人はAランク冒険者、金狼のバルと銀狼のリンダ、お主の両親だ。
そして、リンダの手には小さな赤子が抱かれていた。
フリジオの話によると精霊のお告げを受けたらしい。
リンダが抱いた赤子が勇者として人々の希望となるだろう、とな。
そして、フリジオは赤子を守るためパーフェ男爵領の奥地に村を作った。
その村には大陸各地から名だたる実力者が精霊に導かれてやって来たと聞く。
フリジオはその村で勇者を見守り育てる事こそが精霊によって与えられた使命だと言っておった。
そして、精霊のお告げはそれだけではなかった。
勇者が旅立つ頃、村は魔族の襲撃を、受けるだろうとの予言まであったのだ。
フリジオや村人たちは精霊のお告げにより魔族が迫っている事を知ると勇者を旅へと送り出し、魔族を迎え撃ったのだ。
奮戦虚しくフリジオ達は敗北した。
そして、呪いにより身体を石へと変えられたのだ。
しかし、精霊の加護により、魔族は石となった村人にとどめを刺す事が出来なかったようだ。
今は村に騎士を派遣し石像となった村人を守っておる」
「そ、そんな……父さんと母さんが冒険者……フリジオ爺さんは宮廷魔導師長……それに呪いで石にだなんて……」
「エリオよ、深呼吸をして息を整えよ。
この話は全て事実なのだ」
「じ、じゃあ、村人達はみんな実力者だったて言うのですか⁉︎
ラーナおばさんやメルビンも?」
「ラーナにメルビンか……おそらく砂城のラーナと赤弓のメルビンだな。
2人とも20年前の戦争で活躍した英雄だ」
「ナイフマニアのバートさんやひねくれ者のケリーおじさんは……」
「バート・フォン・ガンマーはグリント帝国の元騎士団長、黒手のケリーはリーブン王国で名を馳せたAランク冒険者だ」
「そ、それじゃあ……」
「ちょっとエリオ!
取り敢えず村人の事は置いておいて、国王様の話が本当ならあんた勇者なんじゃないの⁉︎」
「え、 お、俺が勇者⁉︎」
「そうだ、その腕に刻まれた光の紋章こそ勇者の証だ。
あの精霊像は精霊のお告げと共に、フリジオが授かった物だ。
私はそれを守り、然るべき時が来たら勇者へと光の紋章を授ける様に頼まれたのだ」
「勇者……本当に……」
「そうだ。
いいか、エリオよ。
フリジオやお主の両親はまだ死んではいない。
呪いで石になっているだけだ。
そして、確実に呪いを解く方法は1つ、呪いを掛けた者を倒す事だ」
「呪いを……一体誰が……」
「推測ではあるが、あらゆる呪いを操ると言う魔王の1人、コルダールだろう」
「魔王コルダール……そいつを倒せば父さんと母さんは、村の人達は助かるのですか」
「そうだ。
しかし、魔王の力は強大だ。
エリオよ、まずは仲間を探すのだ。
お主と同じ、精霊に選ばれた仲間をな」
国王陛下はそう言うと部屋の引き出しから一冊の古い本を取り出した。
机の上に本が広げられ、国王陛下がページをめくる。
部屋の中にいる全ての視線が本に集まるなか、とあるページで国王陛下は手を止めた。
そのページにはいくつもの紋様が描かれている。
そして、その中の1つに俺の腕に刻まれた紋様があった。
紋様の数は全部で6つある。
「これがそれぞれの紋章だ。
光、闇、炎、地、水、風、これらの精霊に選ばれた仲間が居るはずだ。
その仲間と精霊の力が宿ったアイテムを探し、紋章を集めるのだ。
そして、魔王を倒しこの世界を平和へと導いてくれ。
…………勇者エリオよ」
驚愕としか今の心境を表す言葉を知らない事が腹立たしい。
村は心配だし、魔王と戦う事もまだ現実味はない。
しかし、俺は驚きと戸惑いの中で確かに思っていた。
俺はガキの頃からずっと憧れていた『英雄』になれるかも知れないと。
その言葉が自分の口から出たものだと理解するのに少しだけ時間が必要だった。
何故だかは分からないが光りを放つ精霊像から目が離せない。
「エリオよ、像に触れてみなさい」
「は、はい」
普通ならその言葉の真意を問う所だろう。
しかし、俺はすんなりと国王陛下の指示を受け入れた。
マーリン達が息を飲んで見守る中俺はそっと手を伸ばす。
指先が像に触れた瞬間、光が溢れ、小さな部屋を満たす。
しかし、その光は暖かく、恐怖心などは感じない。
光は直ぐに消えた。
精霊像も不思議な光が消え、精巧ではあるがなん変哲もない置物となっている。
「な、何が……ってエリオ!
何よ、その腕⁉︎」
「え?…………な、何だこれは⁉︎」
マーリンに言われてようやく自分の、手の甲から肘に掛けて痣の様な模様が走っている事に気がついた。
「うむ、これはまさしく光の紋章、やはりお主があの時の赤子か……」
国王陛下が小さく呟いた。
場所を城の応接室へと移し、俺達は国王陛下から説明を聞く事となった。
「まずエリオよ、今から言う事を心して聞きなさい」
「は、はい」
「クション村は魔族の襲撃を受け、壊滅した」
「なっ!」
「落ち着きなさい」
いきなり、衝撃的な事を告げられ立ち上がった俺は国王陛下に肩を抑えられ再びソファへと座らされた。
国王陛下も腰を下ろすと続きを話し始めた。
「壊滅はしたが皆、死んだ訳ではない」
「ど、どう言う事でしょうか?」
「うむ、事の起こりは16年前、我が国の宮廷魔導師長を務めていたフリジオが2人の冒険者を連れて来た事だ。
その2人はAランク冒険者、金狼のバルと銀狼のリンダ、お主の両親だ。
そして、リンダの手には小さな赤子が抱かれていた。
フリジオの話によると精霊のお告げを受けたらしい。
リンダが抱いた赤子が勇者として人々の希望となるだろう、とな。
そして、フリジオは赤子を守るためパーフェ男爵領の奥地に村を作った。
その村には大陸各地から名だたる実力者が精霊に導かれてやって来たと聞く。
フリジオはその村で勇者を見守り育てる事こそが精霊によって与えられた使命だと言っておった。
そして、精霊のお告げはそれだけではなかった。
勇者が旅立つ頃、村は魔族の襲撃を、受けるだろうとの予言まであったのだ。
フリジオや村人たちは精霊のお告げにより魔族が迫っている事を知ると勇者を旅へと送り出し、魔族を迎え撃ったのだ。
奮戦虚しくフリジオ達は敗北した。
そして、呪いにより身体を石へと変えられたのだ。
しかし、精霊の加護により、魔族は石となった村人にとどめを刺す事が出来なかったようだ。
今は村に騎士を派遣し石像となった村人を守っておる」
「そ、そんな……父さんと母さんが冒険者……フリジオ爺さんは宮廷魔導師長……それに呪いで石にだなんて……」
「エリオよ、深呼吸をして息を整えよ。
この話は全て事実なのだ」
「じ、じゃあ、村人達はみんな実力者だったて言うのですか⁉︎
ラーナおばさんやメルビンも?」
「ラーナにメルビンか……おそらく砂城のラーナと赤弓のメルビンだな。
2人とも20年前の戦争で活躍した英雄だ」
「ナイフマニアのバートさんやひねくれ者のケリーおじさんは……」
「バート・フォン・ガンマーはグリント帝国の元騎士団長、黒手のケリーはリーブン王国で名を馳せたAランク冒険者だ」
「そ、それじゃあ……」
「ちょっとエリオ!
取り敢えず村人の事は置いておいて、国王様の話が本当ならあんた勇者なんじゃないの⁉︎」
「え、 お、俺が勇者⁉︎」
「そうだ、その腕に刻まれた光の紋章こそ勇者の証だ。
あの精霊像は精霊のお告げと共に、フリジオが授かった物だ。
私はそれを守り、然るべき時が来たら勇者へと光の紋章を授ける様に頼まれたのだ」
「勇者……本当に……」
「そうだ。
いいか、エリオよ。
フリジオやお主の両親はまだ死んではいない。
呪いで石になっているだけだ。
そして、確実に呪いを解く方法は1つ、呪いを掛けた者を倒す事だ」
「呪いを……一体誰が……」
「推測ではあるが、あらゆる呪いを操ると言う魔王の1人、コルダールだろう」
「魔王コルダール……そいつを倒せば父さんと母さんは、村の人達は助かるのですか」
「そうだ。
しかし、魔王の力は強大だ。
エリオよ、まずは仲間を探すのだ。
お主と同じ、精霊に選ばれた仲間をな」
国王陛下はそう言うと部屋の引き出しから一冊の古い本を取り出した。
机の上に本が広げられ、国王陛下がページをめくる。
部屋の中にいる全ての視線が本に集まるなか、とあるページで国王陛下は手を止めた。
そのページにはいくつもの紋様が描かれている。
そして、その中の1つに俺の腕に刻まれた紋様があった。
紋様の数は全部で6つある。
「これがそれぞれの紋章だ。
光、闇、炎、地、水、風、これらの精霊に選ばれた仲間が居るはずだ。
その仲間と精霊の力が宿ったアイテムを探し、紋章を集めるのだ。
そして、魔王を倒しこの世界を平和へと導いてくれ。
…………勇者エリオよ」
驚愕としか今の心境を表す言葉を知らない事が腹立たしい。
村は心配だし、魔王と戦う事もまだ現実味はない。
しかし、俺は驚きと戸惑いの中で確かに思っていた。
俺はガキの頃からずっと憧れていた『英雄』になれるかも知れないと。
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