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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

30話 光の精霊像

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  村でのオーク討伐の2日後、丸1日を移動に費やし、俺達は王都へと降り立った。
  王都……と言うか王宮に降り立ったのだ。
  いや、俺はてっきり王都の門の辺りで降ろして貰うものだとばかり思っていたのだが、王家の紋章を掲げた馬車は門を素通りして王都の大通りをぐんぐん進んだ。
  そして王宮の門を潜り抜けようやく止まったのだ。
  目の前には、今まで見た事もない巨大で豪華な建造物がある。
  どう見ても城だ。
   隣を伺えば俺と同じ様な表情で城を見上げるカートの顔が見えた。
  お前の気持ちは分かるぞ!

「エリオ、カート、何をしている、置いて行くぞ?」

「は、はい!」

「す、すみません!」

  急に声を掛けられ、心臓が跳ね上がった。
  まさか自分がレオンハルト殿下に名を呼ばれるなんて数日前までは考えもしなかった。
  レオンハルト殿下とマーリンに付いて王宮の廊下を恐々と歩く。
  地味に飾られている壺や、よくわからない置物の1つでも壊せば人生が終わる気がする。

「取り敢えず私の私室に……」

  そうレオンハルト殿下が言いかけた時、背後から声を掛けられた。

「帰ったのかレオンハルト」

  その人物を見たマーリンが慌てて膝をつく、それを見た俺とカートも直ぐにマーリンに倣う。

「父上」

  父上!
  皇太子殿下の父上と言う事は国王様だ!
  流石のマーリンも緊張しているのが伝わってくる。

「オークの襲撃を受けた村の救援に赴いたと聞いたが?」

「はい、オークの討伐は完了しました。
  村への支援は後発の部隊に任せ、先ほど帰還いたしました」

「そうか、ところでその者たちは何者なのだ?」

「オーク討伐の折、助力してくれた冒険者達です」

「そうか……おっと済まぬ、楽にするがよい」

  俺達が立ち上がるとマーリンの顔を見て国王様は首を傾げた。

「ん?
  お主、何処かで……」

「父上、彼女は私の学院時代のクラスメイトのマーリンです」

「マーリンです。
  陛下には、学院の卒業式で少しだけお声を掛けて頂きました」

「おお、そうか、そうだったな。
  たしか、大賢者イナミ殿の弟子だな」

「はい」

「そっちの2人は?」

  国王陛下は俺とカートを見ながら問う。
  
「彼らは私の旅の仲間です」

  マーリンがこちらにチラリと視線を投げながら答える。

「で、Dランク冒険者のカートと申します」

  カートが緊張気味に頭を下げる。
  先を越されてしまった。
  俺もカートに続き自己紹介をする。

「同じく、Dランク冒険者のエリオです」

  俺が名前を名乗った瞬間、国王陛下の表情が変わった。

「エリオだと……お主、出身地はどこだ?」

「え⁉︎
  出身地……ですか?」

  何故いきなり出身地などを尋ねられるのかは、分からないが国王陛下に嘘を吐くわけには行かない。

「パーフェ男爵領のクション村です」

「そうか……では、お前が……」

  急に口調が変わった国王陛下が俺を見ながらブツブツと何かを呟いている。

「皆、余に付いて参れ」

  俺達は1度顔を見合わせた後、国王陛下の後に付いて歩き出した。
  しばらく城の中を歩くと、4人の騎士に守られた大きな扉が見えてきた。

(あの扉は?)

(あそこは宝物庫だ)

  マーリンとレオンハルト殿下が小声で話すのが聞こえた。
  国王陛下は警備の騎士に一言二言伝えると宝物庫の中に入って行く。
  俺達も惑いながらそれに続いた。
  文字通り国宝級の財宝の中を先ほどの廊下の何倍も慎重に歩く。
  剣の1つでも倒そうものなら命がないだろう。
  そして、宝物庫の奥、何もない壁の前で足を止めた国王陛下は壁から突き出た燭台を掴み引き下げた。
  
ガコッ!

  ギギっと言う大きな音が響き目の前の壁に隠し部屋への入口が出来る。
  その光景に俺達4人は驚愕の表情を浮かべる。
  ん?
  4人?

「なんでレオまで驚いてるのよ」

「俺もこんな仕掛けがあるなんて知らなかったんだよ」

「ここは代々の国王のみに伝えられる秘密の宝物庫だ。
  そして、現在この中に有るのは1つだけだ」
  
  そう言うと国王陛下は秘密の宝物庫に入って行く。
  少しの戸惑いの後、レオンハルト殿下を先頭に俺達も中へと入って行った。
  入口が閉まり、完全な闇に包まれたのは数秒ほど、国王陛下が灯りのマジックアイテムを起動させたのかあまり高くない天井から煌々と光が降り注ぐ。 
  広くはない部屋の中心に台座の様なものがある。
  その台座の上には不思議な光を放つ精霊を象った置物があった。
  おそらくこれが現在唯一のこの部屋の住人なのだろう。
  戸惑いの表情を浮かべるマーリン達をよそに俺は強く、暖かいその不思議な光から、目が離せなくなっていた。
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