210 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》
15話 獅子戸流
しおりを挟む
審判の開始の合図が聞こえました。
しかし、わたしもヤナギさんも一歩も動きません。
「ふむ、来ないのかね?」
よく言います。
今、踏み込んだら軽く返り討ちにされるでしょう。
「くじを譲っていただきましたからね。
先手はお譲りしますよ」
「はっはっは、そうか?
では……」
「⁉︎」
わたしはほぼ反射のみで戦斧に魔力を纏わせてヤナギさんの刀を受け止めます。
刀には、当然のように魔力が纏わせてあり、戦斧に魔力を込めていなければ切られていたでしょう。
ヤナギさんは追撃する事なく下がります。
「ほう、その歳で『纏い』を扱えるのか」
「纏い?」
「武器に魔力を込める技法の事じゃ。
それをワシの流派では纏いと呼ぶんじゃよ。
長年の練武の先にたどり着く、極地の1つじゃ」
「そうでしたか」
なかなかかっこいい技名です。
わたしもこれからは纏いと呼ぶ事にしましょう。
「さて、先手は譲りましたので、ここからが本番ですよ!」
わたしはヤナギさんが居合いの構えを取る前に攻めに行きます。
「は!」
流れる様な戦斧の連撃は、まともに受ければ武器を叩き折り、防御を突き抜けるでしょう。
しかし、ヤナギさんは僅かに身体をずらし戦斧を躱し、躱しきれない攻撃は、刀でそっと受け流します。
老齢にも関わらずヤナギさんの動きは速く、隙も有りません。
「コレならどうです!」
わたしは無詠唱でウォーターボールを放ちます。
躱そうとすればわたしの戦斧の間合いに入る事となります。
ヤナギさん程の手練れならば核を破壊し魔法を打ち消す事くらいは簡単でしょう。
しかし、その動作は隙となり、わたしに有利に働くでしょう。
わたしは躊躇わずに踏み込みます。
「やるのぅ」
ヤナギさんはウォーターボールを打ち消すつもりなのか水球に向かって刀を振るいます。
確かに躱すよりはいい判断ですが、それではわたしの動きを止める事は出来ません。
「獅子戸流、水刃」
「⁉︎」
わたしは足を止め、慌てて跳びのきます。
ついさっきまでわたしがいた場所を水の刃が切り裂きました。
いったい何が起きたのでしょうか?
ヤナギさんが魔法を使った気配は感じませんでした。
わたしのウォーターボールを打ち消した動きのまま水の刃を飛ばして来た様に見えました。
「凍てつけ 突風 ブリザード」
わたしの指先から放たれた強力な冷気の塊が、ヤナギさんに襲いかかります。
「獅子戸流、氷威」
ヤナギさんがブリザードの核を切り裂いた時、普通なら霧散するわたしの魔力が氷の刃となり、こちらへと飛んで来ました。
「ふ!」
戦斧で氷の刃を迎撃します。
なるほど、原理は分かりませんが、魔法に対するカウンター技の様ですね。
迎撃と反撃を同時に行うことの出来るいい技です。
何より相手の魔力を利用している為、魔力を殆ど消費しないのでしょう。
これは魔法は控えるべきですね。
「厄介ですね」
「はっはっは、たった2撃でワシの技の本質を見抜くか。
やるではないか」
「ここからが本番ですよ」
わたしは戦斧を構え直すのでした。
しかし、わたしもヤナギさんも一歩も動きません。
「ふむ、来ないのかね?」
よく言います。
今、踏み込んだら軽く返り討ちにされるでしょう。
「くじを譲っていただきましたからね。
先手はお譲りしますよ」
「はっはっは、そうか?
では……」
「⁉︎」
わたしはほぼ反射のみで戦斧に魔力を纏わせてヤナギさんの刀を受け止めます。
刀には、当然のように魔力が纏わせてあり、戦斧に魔力を込めていなければ切られていたでしょう。
ヤナギさんは追撃する事なく下がります。
「ほう、その歳で『纏い』を扱えるのか」
「纏い?」
「武器に魔力を込める技法の事じゃ。
それをワシの流派では纏いと呼ぶんじゃよ。
長年の練武の先にたどり着く、極地の1つじゃ」
「そうでしたか」
なかなかかっこいい技名です。
わたしもこれからは纏いと呼ぶ事にしましょう。
「さて、先手は譲りましたので、ここからが本番ですよ!」
わたしはヤナギさんが居合いの構えを取る前に攻めに行きます。
「は!」
流れる様な戦斧の連撃は、まともに受ければ武器を叩き折り、防御を突き抜けるでしょう。
しかし、ヤナギさんは僅かに身体をずらし戦斧を躱し、躱しきれない攻撃は、刀でそっと受け流します。
老齢にも関わらずヤナギさんの動きは速く、隙も有りません。
「コレならどうです!」
わたしは無詠唱でウォーターボールを放ちます。
躱そうとすればわたしの戦斧の間合いに入る事となります。
ヤナギさん程の手練れならば核を破壊し魔法を打ち消す事くらいは簡単でしょう。
しかし、その動作は隙となり、わたしに有利に働くでしょう。
わたしは躊躇わずに踏み込みます。
「やるのぅ」
ヤナギさんはウォーターボールを打ち消すつもりなのか水球に向かって刀を振るいます。
確かに躱すよりはいい判断ですが、それではわたしの動きを止める事は出来ません。
「獅子戸流、水刃」
「⁉︎」
わたしは足を止め、慌てて跳びのきます。
ついさっきまでわたしがいた場所を水の刃が切り裂きました。
いったい何が起きたのでしょうか?
ヤナギさんが魔法を使った気配は感じませんでした。
わたしのウォーターボールを打ち消した動きのまま水の刃を飛ばして来た様に見えました。
「凍てつけ 突風 ブリザード」
わたしの指先から放たれた強力な冷気の塊が、ヤナギさんに襲いかかります。
「獅子戸流、氷威」
ヤナギさんがブリザードの核を切り裂いた時、普通なら霧散するわたしの魔力が氷の刃となり、こちらへと飛んで来ました。
「ふ!」
戦斧で氷の刃を迎撃します。
なるほど、原理は分かりませんが、魔法に対するカウンター技の様ですね。
迎撃と反撃を同時に行うことの出来るいい技です。
何より相手の魔力を利用している為、魔力を殆ど消費しないのでしょう。
これは魔法は控えるべきですね。
「厄介ですね」
「はっはっは、たった2撃でワシの技の本質を見抜くか。
やるではないか」
「ここからが本番ですよ」
わたしは戦斧を構え直すのでした。
1
お気に入りに追加
2,342
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる