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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》
176話 メダルとわたし
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国王様との歓談を終えるとわたしとフレイド様は帰りの馬車まで歩きます。
所々にさり気なく飾られている壺や絵画はなかなかセンスが良いです。
「ユウ殿、時空箱はどうやって持って帰るつもりだ?
オリオンに運ばせるなら木箱か何か用意させるし、陸路を運ばせるなら私が人を出そう」
「そうですね。
オリオンに運んでもらおうと思います」
「そうか、では木箱を用意しよう」
「ありがとうございます」
そうなのです。
わたしが時空箱がハズレだと思うもう1つの理由がコレです。
空間魔法が施された常時起動型のマジックアイテムはマジックバックにしまう事が出来ないのです。
常時起動型とはマジックアイテムの分類の1つです。
マジックアイテムは常時起動型と魔力起動型に分けられます。
常時起動型は空気中の魔力を自動で吸収し、常に起動している物です。
マジックバックなどが常時起動型です。
魔力起動型は魔力を込める事で効果が発動するマジックアイテムでわたしが持っている物だと導きの焔や金剛の剣などですね。
空間魔法が常に起動しているので干渉し合い、マジックバックをマジックバックにしまうことが出来ないのです。
なのでわたしは時空箱を自力で持ち帰らなければいけないのです。
コレがダンジョンで見つけた物などならアイテムボックスに入れてこっそりと運べるのでこんな事をしなくても良いのですが……
「おっと、すまないユウ殿、少し用事を思い出した。
先に馬車まで行ってくれ。
直ぐに戻る」
「分かりました」
何か用事を思い出したらしいフレイド様は、小走りで来た道を引き返して行きました。
直ぐに戻ると言っていたのでわたしは馬車に戻りましょう。
そう思い、王宮の廊下を1人歩いていた時です。
「ん?
おい! なぜ王宮にお前のような平民がいるんだ!」
「わたしは国王様に呼ばれたからですよ。
ランスロットさんこそなんで王宮に?」
「ふん、俺は子爵家の後継だからな。
父上の仕事を手伝っている。
貴様のような下賎な冒険者とはちがうのだよ」
「はぁ、そうですか。
では、わたしはこれで」
「まて」
ん?
前にもこんな事があった気がします。
「貴様はたしか冒険者としてはそこそこの実力があるらしいな」
「まぁ、そう言えなくも無いですね」
「よし、この俺の専属として雇ってやろう。
光栄に思え」
「いえ、結構です」
「な、なんだと!」
面倒ですね。
大体わたしはもう教員じゃないですし、プチっとやっちゃっても…………流石に王宮でそれは不味いですね。
「貴様! この俺はサマール子爵家の後継ランスロット・フォン・サマールだぞ!
貴様のような下賎な冒険者ごときがそのような口を聞いてタダで済むと思っているのか!」
『目には目を』ですね。
ここは権力に頼りましょう。
「わたしを雇いたいならココを通して下さい」
わたしはランスロットさんに見えるように辺境伯家の紋章が入ったメダルを掲げます。
今までわたしの所に来た貴族はこれでイチコロでした。
まさに印籠です。
「フン! なんだ! こんな物!」
バシ
「あっ!」
うぉーい
まさかの展開です。
権力を振りかざすランスロットさんは権力の象徴である貴族家の紋章をはたき落としました。
リィーン
流石辺境伯家の紋章が刻まれたメダルです。
澄んだいい音がします。
ランスロットさんにはたき落とされたメダルは大理石の床をコロコロと転がり、綺麗に磨かれた靴に当たって止まります。
靴の持ち主は腰を折りメダルを拾い上げるとこちらへゆっくり歩いて来ます。
「落としたぞ、ユウ殿」
「ありがとうございます。
早かったですね、フレイド様」
「ああ、大した用ではなかったからな」
フレイド様が拾ったメダルをわたしに手渡してくれます。
「さて、貴殿はたしか…………サマール子爵家の嫡男だったな」
「え、お、あ、はい」
フレイド様、怒ってますね。
貴族オーラ全開です。
「私はフレイド・フォン・ガスト辺境伯である」
「へ、辺きっ……」
「貴殿は我が辺境伯家が懇意にしている薬師殿に何か反意でもあるのかね?」
「め、滅相もございません、お、私は……」
「では貴殿は反意がある訳でも無いのに我が辺境伯家の紋章をはたき落としたと言うのかね?」
「い、いえ、私は……その……」
「先程の貴殿の行いはサマール子爵家の総意だと判断して構わないな?」
「いえ! 私は決っして!」
「我が辺境伯家の誇りたる紋章を侮辱されたのだ。
相応のケジメを付けさせて貰おう。
貴殿では話にならない。
サマール子爵家の当主に合わせて貰う!」
ランスロットさんは真っ青な顔でプルプルと震えています。
「ユウ殿、すまないが私は彼の父と少し話さねばならなくなった。
先に帰っていてくれ」
「分かりました。
お手間を取らせて申し訳ありません」
「いやいや、これは我が辺境伯家の問題だからな」
そう言うとフレイド様はランスロットさんを引き連れて立ち去って行きました。
貴族って面倒ですね。
所々にさり気なく飾られている壺や絵画はなかなかセンスが良いです。
「ユウ殿、時空箱はどうやって持って帰るつもりだ?
オリオンに運ばせるなら木箱か何か用意させるし、陸路を運ばせるなら私が人を出そう」
「そうですね。
オリオンに運んでもらおうと思います」
「そうか、では木箱を用意しよう」
「ありがとうございます」
そうなのです。
わたしが時空箱がハズレだと思うもう1つの理由がコレです。
空間魔法が施された常時起動型のマジックアイテムはマジックバックにしまう事が出来ないのです。
常時起動型とはマジックアイテムの分類の1つです。
マジックアイテムは常時起動型と魔力起動型に分けられます。
常時起動型は空気中の魔力を自動で吸収し、常に起動している物です。
マジックバックなどが常時起動型です。
魔力起動型は魔力を込める事で効果が発動するマジックアイテムでわたしが持っている物だと導きの焔や金剛の剣などですね。
空間魔法が常に起動しているので干渉し合い、マジックバックをマジックバックにしまうことが出来ないのです。
なのでわたしは時空箱を自力で持ち帰らなければいけないのです。
コレがダンジョンで見つけた物などならアイテムボックスに入れてこっそりと運べるのでこんな事をしなくても良いのですが……
「おっと、すまないユウ殿、少し用事を思い出した。
先に馬車まで行ってくれ。
直ぐに戻る」
「分かりました」
何か用事を思い出したらしいフレイド様は、小走りで来た道を引き返して行きました。
直ぐに戻ると言っていたのでわたしは馬車に戻りましょう。
そう思い、王宮の廊下を1人歩いていた時です。
「ん?
おい! なぜ王宮にお前のような平民がいるんだ!」
「わたしは国王様に呼ばれたからですよ。
ランスロットさんこそなんで王宮に?」
「ふん、俺は子爵家の後継だからな。
父上の仕事を手伝っている。
貴様のような下賎な冒険者とはちがうのだよ」
「はぁ、そうですか。
では、わたしはこれで」
「まて」
ん?
前にもこんな事があった気がします。
「貴様はたしか冒険者としてはそこそこの実力があるらしいな」
「まぁ、そう言えなくも無いですね」
「よし、この俺の専属として雇ってやろう。
光栄に思え」
「いえ、結構です」
「な、なんだと!」
面倒ですね。
大体わたしはもう教員じゃないですし、プチっとやっちゃっても…………流石に王宮でそれは不味いですね。
「貴様! この俺はサマール子爵家の後継ランスロット・フォン・サマールだぞ!
貴様のような下賎な冒険者ごときがそのような口を聞いてタダで済むと思っているのか!」
『目には目を』ですね。
ここは権力に頼りましょう。
「わたしを雇いたいならココを通して下さい」
わたしはランスロットさんに見えるように辺境伯家の紋章が入ったメダルを掲げます。
今までわたしの所に来た貴族はこれでイチコロでした。
まさに印籠です。
「フン! なんだ! こんな物!」
バシ
「あっ!」
うぉーい
まさかの展開です。
権力を振りかざすランスロットさんは権力の象徴である貴族家の紋章をはたき落としました。
リィーン
流石辺境伯家の紋章が刻まれたメダルです。
澄んだいい音がします。
ランスロットさんにはたき落とされたメダルは大理石の床をコロコロと転がり、綺麗に磨かれた靴に当たって止まります。
靴の持ち主は腰を折りメダルを拾い上げるとこちらへゆっくり歩いて来ます。
「落としたぞ、ユウ殿」
「ありがとうございます。
早かったですね、フレイド様」
「ああ、大した用ではなかったからな」
フレイド様が拾ったメダルをわたしに手渡してくれます。
「さて、貴殿はたしか…………サマール子爵家の嫡男だったな」
「え、お、あ、はい」
フレイド様、怒ってますね。
貴族オーラ全開です。
「私はフレイド・フォン・ガスト辺境伯である」
「へ、辺きっ……」
「貴殿は我が辺境伯家が懇意にしている薬師殿に何か反意でもあるのかね?」
「め、滅相もございません、お、私は……」
「では貴殿は反意がある訳でも無いのに我が辺境伯家の紋章をはたき落としたと言うのかね?」
「い、いえ、私は……その……」
「先程の貴殿の行いはサマール子爵家の総意だと判断して構わないな?」
「いえ! 私は決っして!」
「我が辺境伯家の誇りたる紋章を侮辱されたのだ。
相応のケジメを付けさせて貰おう。
貴殿では話にならない。
サマール子爵家の当主に合わせて貰う!」
ランスロットさんは真っ青な顔でプルプルと震えています。
「ユウ殿、すまないが私は彼の父と少し話さねばならなくなった。
先に帰っていてくれ」
「分かりました。
お手間を取らせて申し訳ありません」
「いやいや、これは我が辺境伯家の問題だからな」
そう言うとフレイド様はランスロットさんを引き連れて立ち去って行きました。
貴族って面倒ですね。
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