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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

121話 邂逅とわたし

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  翌日、わたし達はギルドの会議室に集められました。
  これから依頼についてテレサ様から説明があるらしいです。

「お、王族の方にお会いするなんて緊張するわね」

「そ、そうだな」

「お前ら、しっかりしろ、ユウを見習え」

  隣では《遥かな大地》の3人が騒いでいます。
  
「おら、お前ら!静かにしろ!」

  扉が開き、ギルドマスターとテレサ様、いつものメイドさんが入ってきました。
  冒険者達はみなさん緊張しているのか、会議室は静まり返っています。

「さて、ギルドマスター、この者達が今回の依頼を受ける冒険者達なのだな」

「はい、C、Dランクばかりですが信頼の置ける者達を集めました」

「うむ、まぁ、言葉は悪いが数合わせのようなものだ。
  信頼できる者なら腕は問わん」

「ですが、1人だけAランクの猛者が名乗りを上げてくれました」

「なに、あの条件でか?」

「はい、そこの黒髪の少女です」

  ギルドマスターがわたしに視線をやり、テレサ様に説明します。

「彼女はAランクに昇格したばかりですが、戦闘力や経験も申し分なく……」

「ああ、説明はいい……ユウちゃん、帰ったんじゃなかったの?」

「面白そうな依頼が有ったので」

「Aランク冒険者に見合う報酬は払えないわよ?」

「良いですよ。
  お金には困って無いですし、わたしは怪人108面相に興味があるのですよ」
 
「そぉ、分かったわ。
  報酬を増やす事は出来ないけどそれでも良いなら協力して頂戴」

「はい」

「でも、殺しちゃダメよ」

「もちろんです」

  テレサ様はわたしをなんだと思っているのでしょうか?
  テレサ様から何度もクギを刺された後、みんなで今回の依頼の説明を受けます。
  今回、わたし達が護るのはカーネス子爵の屋敷です。
  配置はわたし達が屋敷の庭や周り、屋敷の中をカーネス子爵の私兵が警備するらしいです。
  あとから聞いたのですがカーネス子爵が冒険者を屋敷の中に入れるのを嫌がったそうです。
  後ろ暗い所がいっぱいあるのでしょう。
  怪人108面相を捕らえるついでに悪事を公に晒せないものでしょうか?
  一通りの説明を聞き、今日は解散になりました。
  テレサ様が部屋から出るとリーナさんが駆け寄って来ました。

「ゆ、ユウちゃん! なんでテスタロッサ殿下と仲良く話してるの⁉︎」

「え? 前に偶然お会いしまして……」

「ぐ、偶然に合うものなのか?」

「すげーな」

「はっはは」

  秘技笑って誤魔化すです。



  そして、犯行予告日を明日に控えて、わたし達はカーネス子爵の屋敷に来ています。
  本来、わたしは外の警備なのですが、唯一のAランク冒険者としてテレサ様やカーネス子爵の話し合いに同席するため、カーネス子爵邸の宝物庫に来ています。
  しかし、貴族の挨拶とやらはつまらないですね。
  カーネス子爵が心にも無いだろうお世辞でテレサ様を持ち上げるのをつまらない顔を隠さずに見ていたのですが、それに気がついたカーネス子爵に睨みつけられました。
  その後、カーネス子爵とテレサ様がああでも無い、こうでも無いと何かを話しているのを聞きながら過ごします。
  それにしても悪趣味な部屋です。
  一つ一つは美しく、素晴らしい芸術品ですが、配置も何もなくただ集めただけの部屋です。
  成金趣味ここに極まるって感じですね。
  だいたい、これほどの財宝をたかが1国のたかが子爵ごときが買い集められるとは思いません。
  テレサ様に聞いたカーネス子爵の黒い噂は盗賊との癒着、税金の横領、不正奴隷の売買、違法薬物の取引と多岐に渡るらしいですが、どれも噂程度の物で、証拠はないそうです。
  わたしが悪趣味な部屋を観察していると、部屋の中にノックの音が響きました。
  扉の横に控えていたメイドが相手を確認して扉を開きます。
  部屋に入って来たのはテレサ様付きの無表情なメイド、マリルさんです。

「あら、どうしたのマリル?」

「はい、警備の班長に頼まれ屋敷の見取り図をお借りしに参りました。
  カーネス子爵様、見取り図をお借りしてもよろしいでしょうか?」

  テレサ様のお付きですから当然マリルさんも高位貴族です。
  確か伯爵令嬢だと聞いた気がします。
  何より彼女はテレサ様の配下であり、彼女の行動はテレサ様の名の下に行われているも同然なのです。
  つまり、カーネス子爵は、正当な理由も無く見取り図を渡さないと言う事は出来ないのです。
  彼は、悔しさを顔に出さないようにしている顔で見取り図をマリルさんに差し出します。

「お借りいたします」

「マリル」

  マリルさんが見取り図に触れようとした所でテレサ様が声を掛けます。

「はい、何でしょうかテレサ様」

  ヒュッ

  マリルさんが返事を返した瞬間、テレサ様が腰のレイピアを抜き放ち、マリルさんに鋭い突きを繰り出しました。
  高い技量と業物の刃によって空気すら切り裂くような剣線にマリルさんのメイド服は貫かれてしまいました。
  メイド服だけです。
  そしてレイピアを突き出したテレサ様の横に背の高い男が1人立っています。
  タキシードの様な服にシルクハット、目元を隠す仮面をつけ、ステッキを持っています。
  変態です!
  その姿はまるで月に変わってお仕置きする、水兵服の美少女戦士に登場する、中学生に思いを寄せる仮面のあいつの様です。
  と言うかまんまです。
  オリジナリティが有りませんね。
  つい、唖然としていたわたしを尻目にテレサ様と変態は間合いとり睨み合っています。

「やはり、今回も事前に内情を探りに来たわね」

「ふむ、参考までに教えて貰いたい。
  何故我輩が、偽物であると気付いたのかね?」

「マリルが、私をテレサ様と呼ぶのはプライベートだけよ」

「そうか、これは迂闊だった。
  以後、気をつけるとしよう」

「以後は無いわ」

  テレサ様が踏み込もうと足に力を入れた時、怪人108面相の周りから大量の煙が出て来ました。
  これは闇属性魔法のスモークですね。

「ごほ、ごほ」

  煙の中、怪人108面相の声のみが響きます。

「はっはっは、じゃ~な~とっちゃ~ん」

  そこは、『さらばだ明智くん』と言うべきでしょう‼︎









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