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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

117話 名刺とわたし

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「ま、待ってくれ、投降するだかがばっ」

「わたしは3つ数える内にと言ったはずです」

  あと2人です。

「わ、分かった! 交渉しよう! 今までに奪った金と物資は全部やる。だからごっ!」

  あと1人です。

「あ、あ、あ、あぁぁあ‼︎ あばぁ!」

「実に愚かです」

  投降しなかった盗賊を始末したわたしは、青い顔をしている盗賊の頭を無視して襲われていた商人さんと冒険者達に近づきます。

「仲間の傷は大丈夫ですか?」

「あ、ああ、かなり深い傷だったがポーションのお陰で助かったよ」

「そうですか、間に合って良かったですね」

「ああ、それでポーションの代金なんだが……」

「あー」

  彼らの年齢や装備を見るに、ようやく駆け出しを卒業したぐらいでしょう。
  渡したポーションは上級品レアの物です。
  やっと一人前になったばかりの冒険者では払えないと言う程、高価な訳では有りませんが、依頼2、3回分の報酬くらいは飛んでしまう額です。

「そうですね…………とりあえずその話は後にして、盗賊共を縛り上げて貰えますか?
  わたしは少し商人さんとお話して来ますので」

「分かった」

  冒険者が盗賊共の方に向かったのを見て、商人さんがわたしの方に近寄って来ました。

「ありがとうございます。
  貴女のお陰で命を拾いました」

「いえいえ、たまたま通りかかっただけですから。
  それより少し相談があるのですが……」

  わたしが商人さんと交渉していると、盗賊共を縛り上げた冒険者達が戻って来ました。

「拘束してきたぞ」

「ありがとうございます」

「それで、ポーションの代金だが、いくら払えばいいんだ?
  正直に言うとあまり金は無いんだが……」

「お金は要りません、その代わりこの盗賊共を街に運ぶまで監視、管理して下さい」

「どう言う事だ?」

「わたしは依頼受けていてあまり道草を食う事は出来ないのです。
  ですのでこの盗賊共をこちらの商人さんに売ります。
  貴方達は商人さんが街の衛兵に奴らを渡して、犯罪奴隷として売却するまで、無償で商人さんの護衛をして下さい。
  その護衛の代金と盗賊共の最低売却額を商人さんに払って貰います」

「なるほど、分かった。
  それで良い」

「では、契約成立ですね。
  申し遅れました、私はレブリック商会に所属するDランク商人のコナーと申します」

  コナーさんが首から提げていた金属製のカードを見せてきました。
  コレは商業ギルドのギルドカードです。
  冒険者ギルドや商業ギルドの発行するギルドカードには、魔力が記録されていて偽造するのが極めて困難な身分証です。
  商業ギルドに登録してある商人は、コレを取り引き相手に見せる事である程度の信用を得る事ができるのです。
  感覚としては名刺みたいな感じでしょうか?
  前世では大学生だったわたしは残念ながら名刺は持ってなかったのでよく分かりません。
  わたしもコナーさんに倣い、ギルドカードを取り出しました。

「わたしはユウと言います。Aランク冒険者です」

  わたしのランクを聞いてコナーさんや冒険者達が驚いています。

「Aランク‼︎ マジかよ」

「私達より若いのにAランクなんて、すごいです!」

「かなりの実力者だと思っていたが、まさかAランクとは……」

「Aランクのギルドカードなんて、初めて見ました!」

  そこの魔法使い風のお嬢さん。
  多分わたしはあなたより歳上です。
  冒険者達は少し興奮し、ガヤガヤとざわついています。
  
ざわ……ざわ……
        衝撃が走る! 冒険者達の頭に!
         圧倒的高ランク‼︎
   
  なんちゃって。

「Aランクと言ってもまだ昇格したばかりですし、昇格試験で目を失うヘマをやってしまいましたからねぇ。
  あまり自慢出来ないのですよ」

  わたしが苦笑しながらそう言うと、冒険者達は苦笑いを返してきました。

「ははは、Dランクの俺達からすれば、Aランクでも、Bランクでも十分すげぇと思うけどな」

「ははは、さて、コナーさん。
  後はお任せしてもよろしいですか?」

「はい、お任せ下さい。
  それにしても本当にあの金額で良かったのですか?
  Aランク冒険者に働いて貰ったとすればあの程度の金額では到底足りないと思いますが?」

「良いのですよ。正式な依頼ではないですし、わたしは先を急いでいますからね」

「では、ユウ様、またいずれこのご恩をお返し致します」

「ええ、ではしばらく預けると言う事で」

「ユウさん、ありがとな。お陰でロイの命が助かったよ」

「気にしないで下さい。
  もし、恩義を返したいのなら経験を積んだ後、後輩の冒険者に親切にする事です」

「分かった、必ず!」

「ではみなさん、縁が有ったらまた会いましょう」

  わたしは彼らに見送られながらオリオンと共に飛び去ったのでした。

  
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