219 / 241
第二百十九話 ログナイト VS レイ 本気の死合い
しおりを挟む――レイ視点――
さっきの一合で、どうやらログナイト卿は本気を出したようだね。
彼から伝わる殺気が全身を突き刺していて、冷や汗が止まらないよ。
でも、僕はそれを望んでいるんだ。
目の前にいるのは、真の猛者だからね。僕の戦い方が本当に通用するのかを試してみたいんだ。
こんな機会は滅多にないから、非常に心が踊っている。
(でもなぁ、多分これ、下手すると死んじゃうかも……)
正直まだ死にたくないんだ。
だって、ハルとの子供を授かってもいないし、そもそも結婚したばかりだし!
新婚なんだから、もっとハルとイチャイチャしたいし、夫婦らしい事も沢山したい。
だから死ぬ訳にはいかないんだけど、この屈強な老人を倒すにはそれなりの覚悟は必要かもしれないね。
さてさて、お相手は大剣だけど片手で軽々扱えちゃう程の馬鹿力の持ち主。
だけどどう考えても小回りが効く動きは出来ない筈。
その分僕の剣は、細身だから小回りも効くし素早い攻撃を繰り出せる。代わりに一撃で仕留める攻撃は苦手としてるけどね。
ならば僕の攻撃は、相手に攻撃の隙を与えない連続攻撃メインだ!
「《ゴッドスピード》!」
僕は詠唱を短縮して自分の身体を光の粒子に変換する。
光速でログナイト卿の目の前まで移動した瞬間、実体化して瞬時に斬りかかる。
「ぬおっ!?」
流石ログナイト卿。
完全に不意討ちだったにも関わらず反応して、大剣をまるで盾のようにして僕の斬撃を防いだ。
普通ならもうこの一手で終わっている筈なのだけど、流石の一言しか出ない。
でもこちらもそれは想定内。
僕は攻める手を一切緩めない。
「ふっ!」
細身の剣の最大の攻撃は、斬撃ではなくて刺突にある。
剣が細いと軽すぎて骨を断つのも難しい。逆に刺突だと骨を貫く事が出来るんだ。
だから僕は、短く息を吐いて突きの乱撃を放つ。
密かに名付けたこの技術は《乱れ雨》だね。
無数に降り注ぐ雨を正確に回避出来る人間は、この世で一人もいない。
この乱撃は、相手に防戦一方にする為の技なんだ。
無数の刺突がログナイト卿を捉える。
しかしこれも大剣を盾にして、丁寧に防がれてしまう。
互いの刀身がぶつかり合う音が、細かく鳴り響く。
僕は防がれても手を緩めない。
あらゆる急所という急所を、正確に突く。
この技は結構体力勝負だ。永遠に鋭い突きを放ち続けるのは女の僕には不可能だ。
でも、相手も同じ筈。
この攻撃を防ぐ為に正確無比な剣捌きを行うのに、相当な集中力を使う。
それに攻撃をしっかり目で把握しないといけないから、ログナイト卿の疲労は僕より倍はある筈なんだ。
「ぬ、ぬぅっ……」
辛そうな呻き声が聞こえる。
もう少し、もう少しで決定的な隙が生まれる!
だから僕の体力よ、もう少しもってくれ!
すると、僕の攻撃を防いだ瞬間、少しだけログナイト卿の体幹がぶれた。
チャンスだ!
「はっ!!」
僕は眉間目掛けて渾身の突きを放つ。
その体勢なら避けられない。
しかし、ログナイト卿は、嗤った。
(ちっ、誘われたか)
呻き声と体幹がぶれたのは全て演技だったんだ。
僕の渾身の突きに合わせて、お互いの剣同士がぶつかった瞬間、自分の剣で僕の突きを弾いた。
彼の豪腕で強引に僕の攻撃を上に弾いたんだ。
弾かれた剣ごと僕の右腕は上に持っていかれ、右脇腹ががら空きになってしまった。
そう、そこを斬れば真っ二つに出来ると言わんばかりに。
「きぃええぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
ログナイト卿の奇声と共に、大剣の刃が僕の脇腹に迫る。
間違いない、僕を殺すつもりだ。
まぁ、予想通りなんだけどね。
大剣の刃が僕に触れる直前に、僕は自分の身体を光の粒子に変換する。
ログナイト卿の斬撃は、思いっきり空を切ってしまった。
「ちっ、またそれかいな!」
申し訳御座いませんね、ログナイト卿。
僕達ウィード家の人間は、使えるものは全て活用するというのがモットーなので。
では、ちょっとした手品を披露しようかな。
「幻影よ、敵を惑わせ。詠唱完了、《ミラージュ》!」
《ミラージュ》。
光属性魔法の中級にあたるもので、光の屈折によって自分の姿を本物と変わらない状態で出せる。
通常なら一体だけしか出せないけど、僕は鍛練したお陰で――
「《ミラージュ》が複数とな!?」
ログナイト卿が驚いているように、一回の詠唱で三体まで出せるようになったんだ。
三体の幻影は、彼を囲むように配置している。
そして三体共剣先を刺すべき相手に向けていた。
幻影達がログナイト卿に向けて剣を突き出す。
が、ログナイト卿もそれで終わらなかった。
「鬱陶しいわ!! 吹き飛べ《ウインドバースト》!!」
これは、中級にあたる風属性魔法。
術者を中心にして、風による衝撃波を放つ魔法だ。
衝撃波によって大気は歪み、幻影達は姿を保っていられなくなり消滅してしまう。
「本物はいない!?」
ああ、恐らく三体の幻影の中に本体である僕が紛れ込んでいると思ったんだろう。
でも残念、僕はまだ光の粒子の状態のまま、貴方の頭上に浮いている。
しかしそろそろ元に戻らないと、僕は二度と人間に戻れなくなってしまう。
では、そろそろ戻るとしよう。
僕はログナイト卿の頭上で瞬時に実体に戻り、そのまま剣を振り下ろす。
これで終わりだ!
僕は勝利を確信した。
0
お気に入りに追加
2,372
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる