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ライバル?婚約者?
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翌日同じ時間同じ場所でお茶会を用意していたエミリアは何も持たずに現れたアルバートを見て首を傾げる。
「ようこそお越しくださいました。どうぞお掛けください。」
そう言って自らも座ったエミリアは再度アルバートの持ち物を確認したが何も持っていないようだ。更にアルバートの周りの者達も手ぶらである。
「アルバート王子、本日は私の欲しい物はお待ちいただけたのでしょうか?」
「これは失礼したしました。こちらです。ご確認下さい。」
そう言ってアルバートは分厚い書類を胸ポケットから取り出してエミリアの方へ差し出した。
サッと開いて中身を確認したエミリアはアルバートを見返して再度書類を読み込んだ、そして今まで婚約者候補には見せたことがない笑顔を向けた。
エミリアの笑顔をみた侍女や護衛の騎士は騒ついたのだった。
エミリアの背後を見てゆっくりと笑みを深めたアルバートはエミリアに人払いを即した。
「エミリア王女、こちらの内容は大変デリケートなので人払いをお願いします」
「そうね。皆下がって頂戴。」
書類から顔も上げずに手を振って皆を下がらせると閉められたドアの向こうからワーッと歓声が上がった。
「、、、、、、え?」
それを聞いたエミリアは下がらずに控えていたハーミットを見ると苦虫を潰したような顔をしていた。
「姫様、まんまとしてやられたようですよ」
「え?どういう事?」
「そちらの書類に何が書かれているのかは存じませんが、そちらを見てあのような笑顔を浮かべれば皆は姫様が気に入った贈り物だったのだと思います。そして、姫様自ら人払いをして2人きりでのお話をご希望されました。その事実だけでアルバート様は姫様の御婚約者となられるとの憶測を呼び今まさに王宮を駆け巡っていること間違いありません。そして、これは私の憶測ですが、アルバート様はそうなる事を見越して全てを整えていらしたように見受けられますので、もう撤廃は難しいかと存じます。」
「そうなのかしら?アルバート様?」
「いやはや流石にエミリア王女の側近をされているだけの事はありますね。ご推察の通り今頃ここか退出したものと私自身の部下がこの噂を広めている所です。もう市井にも広がっているのでお祝いムードでしょうね。」
自分の婚約だというのに呑気に答えるアルバートをキッと睨んで手にしていた書類をテーブルに叩きつけた。
「一体何がしたいの?貴方は自国でも重要な地位についていらっしゃるし、今更王配など魅力はないのではなくて?いくらこの書類の通りカルスト国と我が国を跨いだ街道の建設とその費用そして未だに公になっていない鉱山の採掘権を頂いたら、カルスト国にあまりメリットは無くなってしまうわよ?」
「エミリア王女は誤解していらっしゃる。私は王配の地位を望んでいるのではなく、実権を望んでいるのです。カルスト国は兄達が上手く繁栄させていく事でしょう。あの2人はとても優秀ですので、但しその為には優秀な隣国が必要なのです。カルスト国が大陸中央に出る為にはこの国が必要不可欠です。いくら豊富な資源があっても輸送手段とその流通には安全安心な国を通る必要があるのですよ。その為に私はこちらにやってきたのです。」
そして、テーブルに肘をついて顎を支えるとにっこりと微笑んだ。
「エミリア王女、貴女は名ばかりの女王となりなさい。私が貴女を王という重圧や責任から解放してあげますよ。貴女は好きなことだけをして生きていけばいい。」
そう、その言葉こそエミリアがずっと欲しかった言葉だ。生まれてから誰1人として王になる責任を放棄させてくれなかった。当たり前のように素晴らしい成績や態度を要求し、それに答えていく事が日常だった。
確かに解放されたかったのだ、、、、ついさっきまでは!
「確かに貴方は私の望んでいた言葉をくれたわ。でも、いやいやながらでも身につけてきたものはこの国の為、国民の為なのよ。それを放棄して遊んで暮らすのは絶対に嫌だわ。貴方に実権は渡さないわ!」
「それは面白い。今更今日の事を無効には出来ません。婚約者として明日にでもご挨拶に伺います。これからもよろしくお願いします。私はそこそこ優秀ですよ。更に貴女はとても私の好みです。容姿も能力もその負けず嫌いの性格もね。マイハート。」
そうして私達の実権争いと恋の駆け引きが始まったのだった。
「ようこそお越しくださいました。どうぞお掛けください。」
そう言って自らも座ったエミリアは再度アルバートの持ち物を確認したが何も持っていないようだ。更にアルバートの周りの者達も手ぶらである。
「アルバート王子、本日は私の欲しい物はお待ちいただけたのでしょうか?」
「これは失礼したしました。こちらです。ご確認下さい。」
そう言ってアルバートは分厚い書類を胸ポケットから取り出してエミリアの方へ差し出した。
サッと開いて中身を確認したエミリアはアルバートを見返して再度書類を読み込んだ、そして今まで婚約者候補には見せたことがない笑顔を向けた。
エミリアの笑顔をみた侍女や護衛の騎士は騒ついたのだった。
エミリアの背後を見てゆっくりと笑みを深めたアルバートはエミリアに人払いを即した。
「エミリア王女、こちらの内容は大変デリケートなので人払いをお願いします」
「そうね。皆下がって頂戴。」
書類から顔も上げずに手を振って皆を下がらせると閉められたドアの向こうからワーッと歓声が上がった。
「、、、、、、え?」
それを聞いたエミリアは下がらずに控えていたハーミットを見ると苦虫を潰したような顔をしていた。
「姫様、まんまとしてやられたようですよ」
「え?どういう事?」
「そちらの書類に何が書かれているのかは存じませんが、そちらを見てあのような笑顔を浮かべれば皆は姫様が気に入った贈り物だったのだと思います。そして、姫様自ら人払いをして2人きりでのお話をご希望されました。その事実だけでアルバート様は姫様の御婚約者となられるとの憶測を呼び今まさに王宮を駆け巡っていること間違いありません。そして、これは私の憶測ですが、アルバート様はそうなる事を見越して全てを整えていらしたように見受けられますので、もう撤廃は難しいかと存じます。」
「そうなのかしら?アルバート様?」
「いやはや流石にエミリア王女の側近をされているだけの事はありますね。ご推察の通り今頃ここか退出したものと私自身の部下がこの噂を広めている所です。もう市井にも広がっているのでお祝いムードでしょうね。」
自分の婚約だというのに呑気に答えるアルバートをキッと睨んで手にしていた書類をテーブルに叩きつけた。
「一体何がしたいの?貴方は自国でも重要な地位についていらっしゃるし、今更王配など魅力はないのではなくて?いくらこの書類の通りカルスト国と我が国を跨いだ街道の建設とその費用そして未だに公になっていない鉱山の採掘権を頂いたら、カルスト国にあまりメリットは無くなってしまうわよ?」
「エミリア王女は誤解していらっしゃる。私は王配の地位を望んでいるのではなく、実権を望んでいるのです。カルスト国は兄達が上手く繁栄させていく事でしょう。あの2人はとても優秀ですので、但しその為には優秀な隣国が必要なのです。カルスト国が大陸中央に出る為にはこの国が必要不可欠です。いくら豊富な資源があっても輸送手段とその流通には安全安心な国を通る必要があるのですよ。その為に私はこちらにやってきたのです。」
そして、テーブルに肘をついて顎を支えるとにっこりと微笑んだ。
「エミリア王女、貴女は名ばかりの女王となりなさい。私が貴女を王という重圧や責任から解放してあげますよ。貴女は好きなことだけをして生きていけばいい。」
そう、その言葉こそエミリアがずっと欲しかった言葉だ。生まれてから誰1人として王になる責任を放棄させてくれなかった。当たり前のように素晴らしい成績や態度を要求し、それに答えていく事が日常だった。
確かに解放されたかったのだ、、、、ついさっきまでは!
「確かに貴方は私の望んでいた言葉をくれたわ。でも、いやいやながらでも身につけてきたものはこの国の為、国民の為なのよ。それを放棄して遊んで暮らすのは絶対に嫌だわ。貴方に実権は渡さないわ!」
「それは面白い。今更今日の事を無効には出来ません。婚約者として明日にでもご挨拶に伺います。これからもよろしくお願いします。私はそこそこ優秀ですよ。更に貴女はとても私の好みです。容姿も能力もその負けず嫌いの性格もね。マイハート。」
そうして私達の実権争いと恋の駆け引きが始まったのだった。
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