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第五章 悪霊退散

35 作戦開始

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クリスティーナはルーカスから聞かされた通りの時間と場所でソワソワとサイモンを待ちながらマリアと恒例となったお茶を嗜んでいた。相変わらず賢者の石について聞いてくる時のマリアはとても怖いがそれ以外の時は極々普通の少女だった。

「クリスティーナ様?どうかなさったんですか?」

あまりに落ち着きがないクリスティーナにマリアが声をかける。クリスティーナの横で、ルーカスはあちゃーという顔をしたがマリアには気づかれなかったようだ。

「なんでもごさいませんの。えっと、、ハ、ハロルド様がいらっしゃらないかしらと思いまして、、。」

自分の演技力の無さに落ち込みながらなんとか言い訳をして座り直した。

「まぁ仲がいいんですね。いいことです!」

「ありがとうございますわ。」

その時茂みの奥からサイモンがやってきた。マリアは顔色を変えてサイモンに注意しようと立ち上がろうとしたが、その前にとルーカスが立ち上がって声をかける。

「やぁサイモン。久しぶりだね。」

「お久しぶりでございます。ルーカス様。クリスティーナ様。」

そう言ってサイモンは臣下の礼をクリスティーナにとった。
それを見届けてルーカスはマリアにサイモンを紹介した。

「マリア嬢、こちらは私達の従兄弟のサイモン・ブルーストーンです。」

「あっはい、知ってます。」

その答えを受けて作戦開始とサイモンに決められたセリフを言った。

「サイモン。一体どうしたんだい?珍しいじゃないか?」

「あ、ああ、ジツハ、、ク、クリスティーナ様に、、、お、お、お話がありまして、、。」

ルーカスはあまりの棒読みに眩暈を覚えたが今中止することも出来ずハラハラしながらクリスティーナの続きを待った。

「マ、マア、ナンデスノ、、。」

クリスティーナも緊張の面持ちでぎこちなく答える。
ルーカスは、あぁ、ダメだ、、、。と頭を抱えたくなったがグッと堪えてクリスティーナに手を差し出した。
クリスティーナは差し出された手を不思議そうに見つめてから手を取り立ち上がった。

そのままルーカスはクリスティーナをサイモンの所まで連れて行って二人を向き合わせたのだった。

「、、、二人共、、、頑張ってくれ、、。」

そのまま席に戻ると不思議そうなマリアに二人はあまり話したことがないのでいつも緊張気味に話すんですとフォローを入れた。

残された二人はなんとか決められたセリフを言っていた。

「ク、クリスティーナ様、、貴女と、、ハロルド殿下が賢者の石を、お探しと、、お聞きしました。私の家に、、、伝わる、、伝承について、聞いて頂きたいのです。」

「マ、マア、アリガトウゴサイマス、、。えっと、、、それは、、どのような物ですの?、」

「真偽はわ、、カリマ、、せんが、賢者の石を、取り出すには鍵が必要で、その鍵が我が家管理の辺境の協会にあるらしいのです。」

「まあ、凄いですわ。ワタクシも、ハロルド様ももう賢者の石は諦めようと思っていたんですの。な、な、無くてもこの百年は問題ないんですもの、、。」

「で、デハ、是非この教会にお越しいただけますか?
な、なんでもその鍵は女性のみに反応するらしく私では取り出せないのです。だからと言ってペラペラ話せる内容でもありませんし。」

「そ、そうですわね。なんて人には言えませんワ。」

その時ルーカスはマリアの気配が急に変わったのを感じた。それも悪い方に。

「そ、そうなのです!!しかもその伝承によると鍵さえあれば王族の愛も国の危機も関係なく取り出せるらしいのです!!」

サイモンの臭い演義に拍車がかかる。

「まあ、それは秘密にしなければ行けないわ!」

「わたくし、、その教会に、参ります。でも、、一人だと心細いわ。」

チラリとクリスティーナはルーカスを見て、そして隣のマリアを見て顔色をかえた。それを見てルーカスはセリフを返した。

「もちろん僕も行くよ。」

ルーカスがやっと芝居が終わるとホッとして声をかける。

「でも、お兄様がご一緒でも、、婚約者以外の殿方がいては外聞が、、、。」

その時ルーカスは隣の気配が怪しく動くのを感じ鳥肌がたった。

「はい!では私も一緒に行きます!私がサイモン様といればクリスティーナ様も、大丈夫でしょ。」

立ち上がったマリアを見たクリスティーナの顔色が更に悪く白くなっていくのを見たルーカスは慌てて立ち上がり、なんとかクリスティーナが倒れる前支える事が出来た。クリスティーナは真っ青な顔で最後のセリフを何とか言い切った。

「まあ、それは嬉しいですわ。」

ルーカスはマリアとサイモンに詳細は後日と話してそのまま倒れそうなクリスティーナを支えてその場を去った。

「クリスティーナ!大丈夫かい?」

「お兄様、、、。マリア様をご覧になりましたか?
賢者の石の話をする時いつもマリア様から黒い影が現れますの、、。わたくしあれが怖くて、、、。」

そういうとガタガタと震え始めた。

「クリスティーナのように影は見えないが、マリア嬢の雰囲気が突然変わったのは感じたよ。あれは危険な気配だった。クリスティーナの言っていることは本当なんだね。」

震えるクリスティーナを抱きしめて今まで何も気がつかなかった自分を恥じるルーカスだった。



「クリスティーナ様、どうしたのかしら?」

具合の悪そうなクリスティーナに付き添うようなルーカスの二人が去った方を見てマリアは心配顔で呟いた。
見た目は今まで通りの可愛らしいマリアなのだが、その気配は禍々しいものを感じさせていた。
そんなマリアを見てサイモンは今までのような恋慕の気持ちは湧かず、その代わりに思わず剣を抜きたくなるような危険なもの察知した。それでもサイモンはグッと奥歯を噛み締めて逃げ出したくなるのを何とか踏み留まり、剣を抜きそうになる右手を左手で抑え笑顔を作った。

「マ、マリア、、君と一緒に行けるなんて嬉しいよ。」

そうしてサイモンもなんとかマリアに最後のセリフを言ってその場を後にしたのだった。

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