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第五章 悪霊退散

32 誤解と新しい仲間

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クリスティーナとアカネは早速ハロルドと連絡をとり今後の方針を話すことになった。

「成る程な鍵とはよく考えたではないか。それなら壁画の伝承を信じさせたままマリアを連れだせそうだ。しかも彼女の狙いは賢者の石であってクリスティーナではないのだからクリスティーナの危険度も下がるし、一石二鳥だ。」

ハロルドが満足そうに頷く。

「でも、わたくしも一緒に行くつもりですのよ!ハロルド様。」

クリスティーナはハロルドが如何にもクリスティーナは連れて行かなくてもと話しているのでキッと睨んだ。

「そんな。クリスティーナが来なくてもマリアは鍵を手に入れるために来ると思うし危険だ。君には危険な真似はさせられない。」

「ここまで一緒にやってきましたのよ。しかもわたくしはその幽霊に怪我までさせられているのに最後の瞬間は見られないなんて納得できません!」

更にクリスティーナはハロルドに詰め寄る。あまりの剣幕に一歩引いたハロルドがセイジに視線を向けて助けを求めた。

「諦めろ。ハロルド。クリスティーナ嬢の言ってることはもっともだ。それにいくら上手くルーカスとサイモンに協力してもらうにしてもクリスティーナが行かないといまいち信憑性に欠けるからな。お前がしっかり守ればいい話だろ?それとも自信がないのか?」

セイジが煽るようにハロルドにいうとハロルドはガシッとクリスティーナの手を取って宣言しだ。

「クリスティーナ!君の事は私が身命を賭して守ってみせる!安心してくれ!」

「はい!よろしくお願いします。」

お互いに見つめ合う二人から視線を外して二人に聞こえない様にセイジはアカネに話しかける。

「これってあれか?ゲームのイベントか?」

「うん、そうなの。不思議でしょ?王子ルートのシナリオは終わってるのに他の攻略対象者ルートのイベントは未だに発生しているんだよ。
私もすっかりゲームは終わったと思ってたのにサイモンのイベントを見て使えるなぁと思ったんだよね。」

「良いところに目をつけたな!」

「でしょ?」

ふふんと胸を張るアカネの頭をセイジはくしゃくしゃと撫でた。

「でも、、ゲームでは攻略対象者とヒロインの二人旅なんだよね。こんなにたくさんで行っても大丈夫かな?」

「まぁなんとかなるだろ?それよりハロルド!ルーカスとサイモンへはどう説明するつもりだ?」

ハロルドはクリスティーナの手を優しく離すとセイジに返事を返した。

「そうだな。この際だからルーカスには真実を話そうと思う。いつもあそこで首を傾げているのも哀れだからな。」

そういうと今日もドアの前でこちらを見ているルーカスを指差した。

「そうですわね。わたくしも賛成です。わたくしもお兄様にはお話ししなくてはと思っておりましたの。」

ハロルドはクリスティーナに頷いた。

「サイモンについてはルーカスの意見を参考にしよう。恥ずかしい話だが私もまだサイモンとはそれ程懇意になっていないのでな。何故か彼らは私よりもあの女と一緒にいる事が多く、あまり話せなかったのだ。」

そういうと早速ハロルドはルーカスを呼んで正面に座らせた。

「おい、どうしたんだ?ハロルド?」

ルーカスは突然お妃教育に呼ばれて目を白黒させてた。

「ルーカス。初めにこれから話すことを今まで黙っていて済まなかった。先に謝らしてくれ。」

「え?は?クリスティーナ?」

「お兄様、わたくしもお兄様に秘密があるんですの。わたくしも始めに謝っておきますわ。ごめんなさい。」

目の前で並んで座る二人をじっと見てルーカスは突然立ち上がりハロルドに掴みかかった。

「ハロルド!!きっさまー!よくもクリスティーナに手を出しやがったな!!」

ルーカスはいきなりハロルドに殴りかかり右ストレートを頬に決めた。

ドゴッ

「ち、ち、違うぞ!ルーカス!違う!!待ってくれ!おい!」

尚も殴りかかろうとしたルーカスに尻餅をついたハロルドが必死に言い募り、クリスティーナは慌ててルーカスの手に抱きついた。

「お兄様!!!誤解ですわ!お兄様!!違いますの!違う話ですの!!」

「クリスティーナ!婚姻前に手を出す様な男はこの兄が成敗してやるから、、、へ?」

クリスティーナの声にやっと拳を下ろしたルーカスにクリスティーナは首を横に振り続けた。

「違いますの、、。お兄様、、。」


やっと誤解を解いたハロルド達は再び腰を下ろした。その後ろでセイジとアカネの無常な声が響いていた。

「いや~これが修羅場ってやつだな。初めて見たぜ。」

「ほんと。ルーカスって草食系というか頭脳派だと思ってたのに案外拳で語るタイプだったのね~。いっがーい。」

「でもハロルド、大丈夫かね。あんなに私が守りますって言ってたのにあっという間にやられちまったぜ。」

「それは言っちゃダメだよ。セイジ。王子様が哀れすぎる、、わぁ王子様の頬がどんどん腫れてくよ。
クリスティーナ。冷やしてあげた方がいいよ。」

呆然としていたクリスティーナは慌てて冷やしタオルを持って来てもらい、ハロルドの頬を見てヒッと言いながらタオルを当てた。

ハロルドはその間俯いて恥ずかしいやら、びっくりしたやら、怒りたいやらグルグルしていたがやっと顔を上げて最後の審判を待つ様な顔をしたルーカスに話しかけた。

「誤解を生む様な言い方をしてすまないな。確かにクリスティーナにも関係はあるがお前が心配する様なことではないから今度は最後まで聞いてくれ。」

「はい、申し訳ございませんでした。」

消え入りそうな声でルーカスが返事をするとハロルドは今までの事を包み隠さず全て話したのだった。



「まぁ、こんな事情だったんだ。信じられない話だとは思うが俺には信じてくれとしか言えない。」

「、、あぁ、、、クリスティーナも、、それは本当なのかい?」

「はい。今まで黙っていて申し訳ありませんでした。でも、全て本当の事なんですの。お兄様。」

するとルーカスが顔をキョロキョロして不思議そうに言った。

「今もそのセイジ殿とアカネ殿はいらっしゃるのか?」

「ああ。お前のすぐ後ろに二人ともいるぞ。と言っても俺に見えるのはセイジだけでアカネの事は声しか聞こえないのだが。クリスティーナ?アカネはいるかい?。」

「ええ、アカネもお兄様の後ろにいますわ。」

ルーカスはくるりと振り返り自分の後ろを確認したがそこには何もいなかった。

「俄かには信じられないが、他ならぬハロルドとクリスティーナがこんな嘘をつくとはとても思えない。だから、二人にはそう見えているんだなという認識という事でいいだろうか?」

「ああ。今はそれで十分だ。」

「で、今までこの部屋で行われていたのはお妃教育ではなく話し合いだったってことか。それは納得だな。いつも不思議だったんだ。
もちろん声は聞こえない距離は保っていたがいつも二人で壁に向かって話している様に見えていたからな。
てっきり演説の練習でもしているのかと思っていたよ。」

ルーカスは自らの疑問に対する答えを得て、少しスッキリとした顔をした。

「いや、本当にすまなかったな。ただ、中々話せる内容でもなくてな。」

「もういいさ。僕も殴ってしまって、、。本当にすまない。」

ハロルドとルーカスはお互いにガッチリと握手を交わして今後の事を話し始めた。

「成る程。サイモン・ブルーストーンか。あいつは真面目すぎるくらい真面目だからそこを突けばなんとかなるかもしれないな。」

少し考えてルーカスはハロルド達に提案した。

「サイモンに協力を仰ぐ件は僕に任せてくれないか?」
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