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「じゃあ、行って来ます!!」
私はネイトとサイラスに見送られて、大きなリュックを背負って庭園に向かう。
もちろん、ここまでにはいろいろなことを試してみた。
まず、ネイト、サイラスが庭園に足を踏み入れる。
すると、姿がパッと消えて、その後にパッと現れるのだ。
不思議としか言いようがない。
二人に聞くと、庭園の出口に出て、戻って来たらしい。
今度は私と手を繋いで入ってみる。
私の目の前には庭園があるが、二人の姿は消えてしまった。
本当に私だけが入れるらしい。理由はわからないが。
そして、結果的に私一人で魔力補完装置を止めに行くことになった。
リュックの中にはサイラスが用意した地図とネイトが用意したハンマーが入っている。
これで叩くのが一番簡単らしい。
それにもしもの時のための食料と飲み物、休憩用のブランケットも入っている。
なんだか、本当のお兄ちゃんのようだ。
まぁ、兄ではあるが。
「無理だったら戻ってくるんだぞ」
ネイトが手を振りながら、私向かって叫んでいる。
私は手を振りかえしながら頷いた。
「行って来まーす」
ああ、行ってきますなんて、いつぶりにいうだろう。
もう何年も言っていない気がする。
それだけで、遠足みたいに楽しくなって来た。
私はそうして庭園の奥に向かったのだった。
「やっぱり入れるね」
前の時と同じように目の前には迷路の入り口が見える。
私は、その迷路の中に足を踏み入れた。
「えっと、こっちだっけ?」
あの時は走ってしまったので、道をあまり覚えていない。
「あっ! 地図があるんだ!」
サイラスが書いた地図を広げてみると、確かに迷路の道順が書いてある。
きっと子供の時の記憶を頼りに書いてくれたのだろう。
私はその地図をギュッと握って歩き出した。
「この先を曲がれば、池のはず……」
迷路から出てみると、確かにこの前の池が見える。
そして、ネイトが言っていたように池の向こうには小さな屋根があるようだ。
「あれかな?」
スタスタと歩いてむかうと、確かにそこには小さな東屋があった。
小さら三角屋根の下にベンチが二つ向かい合っているように置かれている。
そして、その上に小さな箱が置いてあった。
私はその箱の前に立った。
「取り敢えず中を確認しなくちゃ」
ゆっくりとその箱の中を覗いてみる。
箱の中には赤い石が見える。
「サイラスの言っていた通りだ」
サイラスから魔力補完装置の核には魔法石が使われていると言われていたからだ。
この石を壊せば、この庭園の魔法は消える。
私は背中からリュックを下ろすと中からハンマーを取り出した。
「うー、緊張する……」
その時、ふとある疑問が頭に浮かんだ。
もし私がこの石を壊したら、私はどうなるのだろう?
この庭園の時間が動き出した時に、私の時間はどうなるのかな?
箱の蓋を持ち上げて、もう一度中を確認する。
「本当に大丈夫かな……」
サイラスと、ネイトの顔が頭に浮かぶ。
悪い人たちには見えなかった。
本当のお兄ちゃんみたいだった。
「うん! 大丈夫!!」
私はハンマーを振り上げて、魔法石を思いっきり叩いたのだった。
「今あっちからすげえ音がしたぞ」
ネイトはそういうと庭園が見渡せるテラスから身を乗り出した。
見えるのに行けない場所だ。
そして、会ったばかりの妹をたった一人で行かせた場所。
妹が見つかったという知らせは突然もたらされた。
今までも何度かそういうことがあったが、本物だったことはない。
それが初めて遺伝魔法で判明したと連絡が来たのだ。
その時感じたことは、『可哀想に』ということだ。
アイツが突然できた娘を認めるはずないし、相手にすることもない。
なんなら、酷い言葉で罵るだろうことは予想できる。
そう考えていると、同じ寮に住んでいる弟が飛び込んできたのだ。
「兄さん!! 聞いた?」
弟のサイラスの顔には驚きと好奇心、そして、同情が見える。
「ああ、妹……な」
「びっくりだよね。でも、かわいそー。絶対放置されてるよ」
その言葉にネイトは頷いた。
「まぁな。でも、ニコルソンがいるんだ。飢えるようなことにはならんだろ?」
「そうだけどさ。会いに行く?」
会いに行く。それはどうだろうか?
あの冷たい公爵家には行くと考えただけで、身が固くなる。
自分の知っている家はあの事件から無くなったのだ。
母親の顔も最近は朧げになってきたし、父親にはなんの期待もしていない。
爺さん達にも見捨てられ、行き場をなくした俺たちはこの学校の寮にいるのだ。
そんな俺たちよりも悲惨な扱いをされるであろう子供に会って何を話せというのか?
「会わん」
「え? どうして? 妹だよ」
「今はないな。あの家だぞ。慣れるまでに時間もかかるし、もしかしたら明日にでもいなくなるかもしれん」
ネイトの言葉きサイラスも頷いた。
そして、ネイト達は静観することにしたのだ。
あの連絡が入るまでは……
ニコルソンがよこした連絡には新しい妹が庭園に入ったこと、そのことをアイツは容認したことが書いてあった。
そんなことあるか? 息子の俺たちでも入れなくなった場所だ。
ネイトがグシャッと手紙を握りつぶした時、サイラスが飛び込んできたのだ。
今度はその瞳から期待が見える。
あの家が、アイツが変わるとしたら、今しかないのかもしれない。
何故ならこの八年で初めての変化なのだ。
そうして、ネイトはサイラスと家に帰ることにした。
それは実に二年ぶりのことなのだった。
私はネイトとサイラスに見送られて、大きなリュックを背負って庭園に向かう。
もちろん、ここまでにはいろいろなことを試してみた。
まず、ネイト、サイラスが庭園に足を踏み入れる。
すると、姿がパッと消えて、その後にパッと現れるのだ。
不思議としか言いようがない。
二人に聞くと、庭園の出口に出て、戻って来たらしい。
今度は私と手を繋いで入ってみる。
私の目の前には庭園があるが、二人の姿は消えてしまった。
本当に私だけが入れるらしい。理由はわからないが。
そして、結果的に私一人で魔力補完装置を止めに行くことになった。
リュックの中にはサイラスが用意した地図とネイトが用意したハンマーが入っている。
これで叩くのが一番簡単らしい。
それにもしもの時のための食料と飲み物、休憩用のブランケットも入っている。
なんだか、本当のお兄ちゃんのようだ。
まぁ、兄ではあるが。
「無理だったら戻ってくるんだぞ」
ネイトが手を振りながら、私向かって叫んでいる。
私は手を振りかえしながら頷いた。
「行って来まーす」
ああ、行ってきますなんて、いつぶりにいうだろう。
もう何年も言っていない気がする。
それだけで、遠足みたいに楽しくなって来た。
私はそうして庭園の奥に向かったのだった。
「やっぱり入れるね」
前の時と同じように目の前には迷路の入り口が見える。
私は、その迷路の中に足を踏み入れた。
「えっと、こっちだっけ?」
あの時は走ってしまったので、道をあまり覚えていない。
「あっ! 地図があるんだ!」
サイラスが書いた地図を広げてみると、確かに迷路の道順が書いてある。
きっと子供の時の記憶を頼りに書いてくれたのだろう。
私はその地図をギュッと握って歩き出した。
「この先を曲がれば、池のはず……」
迷路から出てみると、確かにこの前の池が見える。
そして、ネイトが言っていたように池の向こうには小さな屋根があるようだ。
「あれかな?」
スタスタと歩いてむかうと、確かにそこには小さな東屋があった。
小さら三角屋根の下にベンチが二つ向かい合っているように置かれている。
そして、その上に小さな箱が置いてあった。
私はその箱の前に立った。
「取り敢えず中を確認しなくちゃ」
ゆっくりとその箱の中を覗いてみる。
箱の中には赤い石が見える。
「サイラスの言っていた通りだ」
サイラスから魔力補完装置の核には魔法石が使われていると言われていたからだ。
この石を壊せば、この庭園の魔法は消える。
私は背中からリュックを下ろすと中からハンマーを取り出した。
「うー、緊張する……」
その時、ふとある疑問が頭に浮かんだ。
もし私がこの石を壊したら、私はどうなるのだろう?
この庭園の時間が動き出した時に、私の時間はどうなるのかな?
箱の蓋を持ち上げて、もう一度中を確認する。
「本当に大丈夫かな……」
サイラスと、ネイトの顔が頭に浮かぶ。
悪い人たちには見えなかった。
本当のお兄ちゃんみたいだった。
「うん! 大丈夫!!」
私はハンマーを振り上げて、魔法石を思いっきり叩いたのだった。
「今あっちからすげえ音がしたぞ」
ネイトはそういうと庭園が見渡せるテラスから身を乗り出した。
見えるのに行けない場所だ。
そして、会ったばかりの妹をたった一人で行かせた場所。
妹が見つかったという知らせは突然もたらされた。
今までも何度かそういうことがあったが、本物だったことはない。
それが初めて遺伝魔法で判明したと連絡が来たのだ。
その時感じたことは、『可哀想に』ということだ。
アイツが突然できた娘を認めるはずないし、相手にすることもない。
なんなら、酷い言葉で罵るだろうことは予想できる。
そう考えていると、同じ寮に住んでいる弟が飛び込んできたのだ。
「兄さん!! 聞いた?」
弟のサイラスの顔には驚きと好奇心、そして、同情が見える。
「ああ、妹……な」
「びっくりだよね。でも、かわいそー。絶対放置されてるよ」
その言葉にネイトは頷いた。
「まぁな。でも、ニコルソンがいるんだ。飢えるようなことにはならんだろ?」
「そうだけどさ。会いに行く?」
会いに行く。それはどうだろうか?
あの冷たい公爵家には行くと考えただけで、身が固くなる。
自分の知っている家はあの事件から無くなったのだ。
母親の顔も最近は朧げになってきたし、父親にはなんの期待もしていない。
爺さん達にも見捨てられ、行き場をなくした俺たちはこの学校の寮にいるのだ。
そんな俺たちよりも悲惨な扱いをされるであろう子供に会って何を話せというのか?
「会わん」
「え? どうして? 妹だよ」
「今はないな。あの家だぞ。慣れるまでに時間もかかるし、もしかしたら明日にでもいなくなるかもしれん」
ネイトの言葉きサイラスも頷いた。
そして、ネイト達は静観することにしたのだ。
あの連絡が入るまでは……
ニコルソンがよこした連絡には新しい妹が庭園に入ったこと、そのことをアイツは容認したことが書いてあった。
そんなことあるか? 息子の俺たちでも入れなくなった場所だ。
ネイトがグシャッと手紙を握りつぶした時、サイラスが飛び込んできたのだ。
今度はその瞳から期待が見える。
あの家が、アイツが変わるとしたら、今しかないのかもしれない。
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