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14、お茶会
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お茶会当日。
朝から由梨はバタバタと忙しく動き回っていた。今日は休日で両親も在宅していたが由梨の落ち着かない様子に二人とも苦笑を浮かべていた。
「えっと、あのお花はもう少し窓側に移動してもらえますか?あと秋里様はコーヒー派か紅茶派かわからないのでどちらも用意してください。お茶菓子は出来たかしら?」
「お嬢様、全てご用意してございますから少し落ち着いて下さい。お顔が緊張なさってますよ。」
由梨は執事にそう言われて今度は自分の格好が気になったらしく慌てて自室に戻った。
「由梨ちゃん、秋里さんの所の坊ちゃんが来るまで持つかなぁ。」
父親は既に一杯一杯になっている娘を微笑ましく見つめながら呟いた。
「そうねぇ、初めてじゃないかしら?由梨ちゃんがお茶会を主催するの。緊張もするでしょうが、倒れる前に止めないとね。海斗さんちょっと由梨ちゃんを落ち着かせてもらえるかしら?」
母にそう言われると海斗はわかりましたと由梨の部屋の方に向かった。
「姉さん、大丈夫?」
海斗が由梨の部屋をノックして入ると由梨は鏡の前に沢山の服を並べて体に充てていた。
「海斗、、、どの服が良いのかわからないのよ、、、、。私って地味でしょ?なるべく可愛くなりたいのだけど、、、お母様のような髪なら良かったのに、、、。」
由梨は未だに自分の容姿が日本ではどう見られているかも知らずに地味だからと繰り返していた。海斗はクラスメイトとの交流で自分達が目立つ事も理解したし日本的な付き合い方もわかってきたが、由梨にはまだ無理だった。
「姉さん、、姉さんは何を着ても可愛いですよ。」
今なら素直にそう言える海斗だが、由梨はそれは家族だからよと取り合わずウンウン唸っていた。
「えっと、秋里会長は姉さんがどんな服を着ていたって気を悪くする様な人じゃないよー。」
海斗はかなりの棒読みで言ったのだが、その言葉は由梨に届いた。
「そうよね!秋里様はそんな狭量な方じゃないわよね。私ったら見かけだけにこだわる方じゃないのに、、、恥ずかしいわ。」
落ち込む由梨に適当な服を渡して寝室に押し込み早く着替えるように言った。
由梨の中の優司が余りにも現実離れした性格になっている事にため息をついた。
バレないでくださいよ、会長!!
着替え終わった由梨を何とか落ち着かせてテーブルに座らせると今日の注意事項を言って聞かせる。
「良いですね?姉さんは自分を追い込む癖があるので少しでも様子がおかしくなったら無理せず退席して下さいね。会長にも話してあるので中座しても大丈夫ですからね。」
「わかったわ。」
着替えた由梨は深いブルーのワンピースに白いリボンをあしらった服を身につけて姿勢正しく聞くすがたは可愛らしく使用人達は自然と笑顔を浮かべていた。
その時玄関から呼び鈴の音がして執事に案内された優司が優雅に現れた。
今日の優司は学校では見ないライトブルーのカッターシャツとベージュのスラックスを身につけていつもは撫で付けている髪をふんわりと流していた。その姿は若手俳優のようで日本人離れした容姿とスタイルが際立っていた。
由梨はしばし優司に見とれていたがハッとして頭を下げた。
「こ、こ、こんに、ちは、秋里様」
相変わらず緊張してしまったが、由梨は自分の声が出た事にほっとした。
「今日は御招きありがとう、由梨ちゃん。海斗くんもこんにちは」
にっこり笑った優司を由梨は頬を染めて、海斗は余りの猫ぶりにびっくりしながら見つめて挨拶を返した。
三人はテーブルについて落ち着くと早速ティーカップが配られて和やかな雰囲気でお茶会が始まった。
始めのうちはなれない由梨を気遣って海斗と優司で最近の経済や勉強などについて話していたが、話題がひと段落した時に由梨が声を出した。
「あ、秋里様、、お茶のお代わりなど如何ですか?コ、コーヒーもご用意してありますのでおっしゃって下さい。」
由梨はやり切った感を前面に押し出して一気に言い切ると顔を上げてにっこり笑った。
由梨の笑顔が自分に始めて向けられた優司は柄にもなくドギマギして顔を赤くした。
海斗がニヤニヤしていたが、今は由梨を優先して慌てて答えた。
「では、折角ですからコーヒーをいただきます。先程執事の方にケーキを渡しておりますので一緒にいただきましょう。由梨ちゃんの好きな物があるといいのですが、、。」
海斗は意外にも優司の本気を目の当たりにしてこれなら大丈夫だなと席を立った。
「申し訳ありませんが、僕はここで失礼します。会長、姉さんごゆっくり楽しんで下さいね。」
意味ありげな視線を二人に投げて海斗は部屋から退出した。
部屋の外では両親こちらの様子を伺っていたので側に寄って状況を話した。
「ご心配には及ばないようですよ。僕も意外だったのですが、秋里会長は本気で姉さんを大事に思ってくれているようです。見ているこっちが恥ずかしくなるような初々しさでしたから大丈夫ですよ。」
海斗の話を聞いて両親も安心したのかそれぞれの部屋に帰っていった。
まさか会長の赤面が見られるとか?案外会長も可愛いところがあるよね。僕への腹黒さも案外照れ隠しと本気で会いたいだけだったのかもなぁ。
海斗は自分の人を見る目はまだまだだなと反省した。
朝から由梨はバタバタと忙しく動き回っていた。今日は休日で両親も在宅していたが由梨の落ち着かない様子に二人とも苦笑を浮かべていた。
「えっと、あのお花はもう少し窓側に移動してもらえますか?あと秋里様はコーヒー派か紅茶派かわからないのでどちらも用意してください。お茶菓子は出来たかしら?」
「お嬢様、全てご用意してございますから少し落ち着いて下さい。お顔が緊張なさってますよ。」
由梨は執事にそう言われて今度は自分の格好が気になったらしく慌てて自室に戻った。
「由梨ちゃん、秋里さんの所の坊ちゃんが来るまで持つかなぁ。」
父親は既に一杯一杯になっている娘を微笑ましく見つめながら呟いた。
「そうねぇ、初めてじゃないかしら?由梨ちゃんがお茶会を主催するの。緊張もするでしょうが、倒れる前に止めないとね。海斗さんちょっと由梨ちゃんを落ち着かせてもらえるかしら?」
母にそう言われると海斗はわかりましたと由梨の部屋の方に向かった。
「姉さん、大丈夫?」
海斗が由梨の部屋をノックして入ると由梨は鏡の前に沢山の服を並べて体に充てていた。
「海斗、、、どの服が良いのかわからないのよ、、、、。私って地味でしょ?なるべく可愛くなりたいのだけど、、、お母様のような髪なら良かったのに、、、。」
由梨は未だに自分の容姿が日本ではどう見られているかも知らずに地味だからと繰り返していた。海斗はクラスメイトとの交流で自分達が目立つ事も理解したし日本的な付き合い方もわかってきたが、由梨にはまだ無理だった。
「姉さん、、姉さんは何を着ても可愛いですよ。」
今なら素直にそう言える海斗だが、由梨はそれは家族だからよと取り合わずウンウン唸っていた。
「えっと、秋里会長は姉さんがどんな服を着ていたって気を悪くする様な人じゃないよー。」
海斗はかなりの棒読みで言ったのだが、その言葉は由梨に届いた。
「そうよね!秋里様はそんな狭量な方じゃないわよね。私ったら見かけだけにこだわる方じゃないのに、、、恥ずかしいわ。」
落ち込む由梨に適当な服を渡して寝室に押し込み早く着替えるように言った。
由梨の中の優司が余りにも現実離れした性格になっている事にため息をついた。
バレないでくださいよ、会長!!
着替え終わった由梨を何とか落ち着かせてテーブルに座らせると今日の注意事項を言って聞かせる。
「良いですね?姉さんは自分を追い込む癖があるので少しでも様子がおかしくなったら無理せず退席して下さいね。会長にも話してあるので中座しても大丈夫ですからね。」
「わかったわ。」
着替えた由梨は深いブルーのワンピースに白いリボンをあしらった服を身につけて姿勢正しく聞くすがたは可愛らしく使用人達は自然と笑顔を浮かべていた。
その時玄関から呼び鈴の音がして執事に案内された優司が優雅に現れた。
今日の優司は学校では見ないライトブルーのカッターシャツとベージュのスラックスを身につけていつもは撫で付けている髪をふんわりと流していた。その姿は若手俳優のようで日本人離れした容姿とスタイルが際立っていた。
由梨はしばし優司に見とれていたがハッとして頭を下げた。
「こ、こ、こんに、ちは、秋里様」
相変わらず緊張してしまったが、由梨は自分の声が出た事にほっとした。
「今日は御招きありがとう、由梨ちゃん。海斗くんもこんにちは」
にっこり笑った優司を由梨は頬を染めて、海斗は余りの猫ぶりにびっくりしながら見つめて挨拶を返した。
三人はテーブルについて落ち着くと早速ティーカップが配られて和やかな雰囲気でお茶会が始まった。
始めのうちはなれない由梨を気遣って海斗と優司で最近の経済や勉強などについて話していたが、話題がひと段落した時に由梨が声を出した。
「あ、秋里様、、お茶のお代わりなど如何ですか?コ、コーヒーもご用意してありますのでおっしゃって下さい。」
由梨はやり切った感を前面に押し出して一気に言い切ると顔を上げてにっこり笑った。
由梨の笑顔が自分に始めて向けられた優司は柄にもなくドギマギして顔を赤くした。
海斗がニヤニヤしていたが、今は由梨を優先して慌てて答えた。
「では、折角ですからコーヒーをいただきます。先程執事の方にケーキを渡しておりますので一緒にいただきましょう。由梨ちゃんの好きな物があるといいのですが、、。」
海斗は意外にも優司の本気を目の当たりにしてこれなら大丈夫だなと席を立った。
「申し訳ありませんが、僕はここで失礼します。会長、姉さんごゆっくり楽しんで下さいね。」
意味ありげな視線を二人に投げて海斗は部屋から退出した。
部屋の外では両親こちらの様子を伺っていたので側に寄って状況を話した。
「ご心配には及ばないようですよ。僕も意外だったのですが、秋里会長は本気で姉さんを大事に思ってくれているようです。見ているこっちが恥ずかしくなるような初々しさでしたから大丈夫ですよ。」
海斗の話を聞いて両親も安心したのかそれぞれの部屋に帰っていった。
まさか会長の赤面が見られるとか?案外会長も可愛いところがあるよね。僕への腹黒さも案外照れ隠しと本気で会いたいだけだったのかもなぁ。
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