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7、暴言

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朝生徒会室で仕事をしていると隣の生徒会準備室が開く音がした。何か話す声が聞こえたと思ったら扉が閉まり今度はここの扉がノックされた。

「どうぞ」

優司が返事をすると失礼しますという声と共に海斗が部屋に入ってきた。

「ああ、おはよう、海斗くん。」

「おはようございます。生徒会長。昨日は色々とありがとうございました。御言葉に甘えて今日から慣れるまで姉は隣の準備室を使わせていただきますのでよろしくお願いします。」

優司はそういって頭を下げた海斗に近寄るとその肩に手を乗せて優しくして微笑んだ。

「そんなに畏まらなくてもいいよ。僕はバディとして当然のことをしているだけなんだから。海斗くんもこれからはまず自分の居場所固めを頑張ってほしい。由梨さんの事はあまり干渉はしないけど、何かないかはちゃんと確認するから安心してほしい。」

そういうと海斗を促して廊下に出た。

「早速なんだが、由梨さんがちゃんと在室しているか今確認させてもらっていいかい?」

そう言って隣の部屋を指差すとカイトと共にノックをする。海斗の顔が引きつってる事に気付きながらも優司は少し強引にドアの前に立たせた。

「ね、姉さん、会長があいさつをしたいらしいけど今ドアを開けるよ」

海斗の声が響くと中からガタガタと音がして内側から掛かっていた鍵が外される音がしてドアから薄く開いた。
そこには期待と不安が入り混じった瞳をした無表情の由梨が立っていた。

うん、、今日も可愛い!

由梨はハーフアップの髪に白いリボンをつけてその長い睫毛をバサバサと上下に動かしながら何も言わずに優司に目線を向けた。

「おはよう、由梨ちゃん、今日からよろしくね。僕はいつでも隣にいるから何かあったらいつでもおいで。」

優司が少し目線を下げて由梨に優しく話しかけると由梨が小さく頷いた。その様子は小さな子供のようで思わず抱きしめたくなったがぐっと我慢して続けた。

「後、僕も心配なので午前中大体10時くらいに今のようにノックするから一度顔を見せてもらっていいかな?」

そういうと由梨は少し考えた後、小さく頷いた。内心やった!と思ったが顔には出さずにしおらしく良かったと頷いた。

「じゃあ、由梨ちゃん、また後でね」

そう言ってドアを閉めると中から慌てて鍵をする音がしたが、取り敢えずは海斗抜きで会うことが出来るようになったので優司は満足だった。そんな優司を胡散臭そうに見つめながら海斗が口を開く。

「先輩、、、、姉をちゃん付けで呼んでましたっけ?」

「うんまあ、折角バディになったんだし年下の女の子の事をさん付けもなんだし、君達は苗字も同じことだからちゃんの方が良いかなと思ったんだよ。その方が可愛いだろ?」

悪びれずにいう優司に何も言えず海斗は取り敢えず頭を下げて姉をよろしくお願いしますと言って教室に向かった。

悔しいが今は自分の友人を作ってこの学園の事や生徒会長の事を聞いて把握しないと何もわからないな。

海斗は一人顔を上げて気合を入れたのだった。

海斗の後ろ姿を見送った優司は生徒会室に戻り、取り敢えず10時までは仕事をしてしまおうと机に着いた。


由梨はソファに座りながら先程の優司との会話を思い出しては笑っていた。

きゃー今日も秋里様とお話ししてしまったわ!

自分は頷いただけなのだが、由梨の中ではすっかりやり遂げた感が満たしていた。

しかも、、、由梨ちゃんっですって!

キャー恥ずかしい、、、でも、お友達になったみたいで凄く嬉しいわ!お父様もお母様もびっくりするわよね。でも、10時にノックされたらどうしましょう、、、、。私ドアを開けることが出来るかしら、、、。


由梨も海斗無しで優司に会う事に不安を感じ始めるとその事ばかりぐるぐる頭を回り始めた、自分ではマズイとわかっているのだからそれに伴って緊張も高まり逃亡する事も出来ずそのレベルは由梨の中で既にレベル3に達していたのだった。
その時トントンとノックの音が響くとビクッと体が跳ねる。レベル3になった由梨は猫がフーと毛を逆立てているように攻撃的になるので朝とは逆にバンと大きな音を立ててドアを全開に開けたのだった。

そこにびっくり顔の優司がいたのだがもう由梨は止まれない。優司をキッと睨むと口を開いた。

「秋里先輩!レディが一人の部屋に来ることがどんなに失礼な事か貴方ご存知!?そのにやけたお顔ごとサッサとお戻りなって頂戴。わたくし気分が悪くなってしまいますわ!」

そう言うと優司の鼻先でバンッとドアを閉めて鍵をかけた。
ドアの向こうからやっと今現実に戻ったかのような優司の声が廊下に響いたが、由梨には聞こえず、由梨ドアの前に座り込み後悔に沈んだ。

「えっ?え?えーーー?!」

優司は10時なると意気揚々と隣のドアをノックしたまでは良かったがその後の展開についていず既に閉まったドアを見つめて声を上げていた。

確かに今由梨は出てきた。しかも思ったよりも勢い良く。そして、、、そして文句を言われて、、、追い返されたよな?俺?

由梨の言った言葉を信じられない様子で反芻し、うん、追い返された、、と結論を出した優司は一旦隣の生徒会室に戻った。


あああああああああ、、、。やってしまった。

ドアを勢い良く閉め、鍵をガチャリと閉めた後、我にかえった由梨は今の言動を思い返して頭を抱えてその場に座り込んだ。
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