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4、生徒会長
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翌日なんとか海斗を説得して学園に登校した由梨はホームルームが終わった現時点で既に後悔していた。
学園側の配慮で本来なら兄弟は別のクラスになるところを同じクラスにしてもらえたまでは良かったのだが海斗はあまりにもモテ過ぎだった。
男女問わず次々と海斗に話しかけてくるのだ。当然隣にいる由梨にも話しかけて来るが全く反応しない由梨にだんだん話しかける者がいなくなり、今は少し邪魔くらいに思われているのか女子生徒が睨んでくる。
それだけでもかなりのストレスを感じていた。
実際は由梨のつれない態度に刺激された男子生徒達が可愛いとかツンデレかとか噂して注目されている事でのやっかみ目線なのだが、対人スキルどん底の由梨には邪険にされているとしか伝わっていなかった。
海斗的には自分が前に出て由梨への干渉を減らしているつもりなのだが、いかんせん二人には日本人の集団をあしらうスキルが圧倒的に不足していた。
スイスでは黒髪黒目のエキゾチックな外見はしてはいたが、どちらかと言うと地味な見た目だったので、ここまで注目されたことがなかったのだ。
始めは丁寧に、だんだんと適当に対応しているにも関わらず人は増える一方で、当たり前だが皆同じ色彩を持っているのでイマイチ見分けも付きにくく笑顔も固まってきた時、ガラリと教室の扉が開いた。
「おいおい、僕の可愛いバディ達に何してるんだい?ビックリしてしまうだろう?」
そう言って入ってきたのは昨日話しかけきた生徒会長秋里優司だった。
学年も違うのにあたかも自分のクラスかのように堂々と歩いてきて海斗の前に立った優司はにっこりと笑って話しかけた。
「昨日は突然話しかけて悪かったね。昨日話した通り僕は君達のバディとしてこの学園の事を色々説明しにきたよ。みんなも彼等を借りるけど良いかな?」
ウインクと共に周りを見渡すと群がっていたクラスメイト達が会長ならしょうがないかと離れていった。
「さぁ海斗くん、お姉さんと一緒にこちらにおいで。誰も居ない部屋を用意してあるよ。」
海斗にのみ聞こえるように囁くと大きな声で校内を案内するよと言って先に教室を出て行った。
海斗は話に乗るべきか一瞬迷ったが真っ青な顔で表情を消している由梨を見て急いで由梨の手を引きながら優司の後について行った。
優司が案内したのは生徒会準備室として使用している所だが小さいながらもソファセットも有る応接室のような場所だった。特別教室ばかりが集まっている校舎なので一般の生徒はまず近づかないしとても静かで海斗はほっと息を吐いた。
二人をソファに座らせると簡単にお茶を入れて二人の前に置いた。そして、自らもテーブルを挟んだ椅子に座った優司は先にお茶に手をつけて安心させてから話し出した。
「二人とも大丈夫だったかい?ここは幼稚舎からの持ち上がりも多くて編入生が入ってくるといつも質問攻めにしてしまうんだよ。悪気は無いから許してやってもらえないかな?暫くすれば落ち着くからね。」
未だ何も語らず表情も消している由梨を一瞥しただけで特に気にするでもなく海斗だけに話しかける。
「海斗くんだったね。日本での生活は初めてだと聞いているから仕方がない部分もあるけれど、はっきり言って先程の君の対応ではお姉さんを守ることは出来ないと考えた方がいい。
スイスであれば目立つことがなかったかも知れないが日本では二人の容姿ははっきり言って目立ち過ぎるほどだよ。それに迂闊に一人の相手をすると百人でも同じ対応を求められてしまう。
だからと言って途中でキレたり、怒ったり、無視したら明日からは本当の意味での孤独な生活が待っていることになる。それは君の望みではないだろう?
まずは集まって来る彼等を上手く笑顔であしらうことを覚えるといい。先程の僕のやり方を見ただろう?あんな感じで、、まぁ自分をテレビの中のアイドルくらいに考えてファンを相手にするイメージかな?でやればその他大勢と本当の友人を見極められるようになるさ。」
そう言うとカップを持って一口紅茶を飲んだ。海斗は今言われたことをしっかりと頭に叩き込んで頷いた。
「今日の所はお礼を言っておきます。秋里先輩。僕も日本を舐めていたようですし、貴方のやり方はとてもスマートだった。これから参考にさせてもらいます。」
そう言うと海斗も紅茶を一口飲むと聞きたかったことを口にした。
「それにしても、、、昨日と比べて随分と僕達の事をご存知のようですね?姉に対する態度も昨日とは段違いです。もう隠すことは何もないと考えていた方がいいですか?」
「まぁそうだね。勿論僕個人の情報なので学園は昨日レベルの話しか知らないから安心していいよ。口は堅い方なんだ。」
にっこり笑う優司の胡散臭い笑顔を冷たい目で見つめた海斗はそれでもこの男は信頼できるかなとため息を吐いた。
「先輩の事はある程度信用することにします。今日も助けてもらいましたし。ご存知の通り僕達はまだ日本に慣れていないので今後も今回のような事が無いとも限りません。今後とも本当の意味でのバディとしてよろしくお願いします。姉はこの通りなので、今現在も此処に居るだけでもまだ気を許していると考えてください。一応姉の症状も説明しておきますね。」
そういうと海斗は由梨の対人恐怖症レベルを説明して、昨日の状態はレベル2、今はレベル1だと教えた。ふんふんと真剣に聞いていた優司だが、海斗が由梨の手を取ったのを見ると何故か胸がムカムカするのは止められなかった。
「海斗くん、大体由梨さんの状況は把握したよ。大変な事だと同情もするが、どうしても団体行動の多い日本の学校ではかなりストレスが溜まるんじゃないかい?無理して通う必要も君達の学力を考えると無さそうだが、何か理由が有るのかい?」
海斗は両親の事や由梨の希望も伝え、なるべく平和に学園生活が過ごせるように優司に協力を求めた。
学園側の配慮で本来なら兄弟は別のクラスになるところを同じクラスにしてもらえたまでは良かったのだが海斗はあまりにもモテ過ぎだった。
男女問わず次々と海斗に話しかけてくるのだ。当然隣にいる由梨にも話しかけて来るが全く反応しない由梨にだんだん話しかける者がいなくなり、今は少し邪魔くらいに思われているのか女子生徒が睨んでくる。
それだけでもかなりのストレスを感じていた。
実際は由梨のつれない態度に刺激された男子生徒達が可愛いとかツンデレかとか噂して注目されている事でのやっかみ目線なのだが、対人スキルどん底の由梨には邪険にされているとしか伝わっていなかった。
海斗的には自分が前に出て由梨への干渉を減らしているつもりなのだが、いかんせん二人には日本人の集団をあしらうスキルが圧倒的に不足していた。
スイスでは黒髪黒目のエキゾチックな外見はしてはいたが、どちらかと言うと地味な見た目だったので、ここまで注目されたことがなかったのだ。
始めは丁寧に、だんだんと適当に対応しているにも関わらず人は増える一方で、当たり前だが皆同じ色彩を持っているのでイマイチ見分けも付きにくく笑顔も固まってきた時、ガラリと教室の扉が開いた。
「おいおい、僕の可愛いバディ達に何してるんだい?ビックリしてしまうだろう?」
そう言って入ってきたのは昨日話しかけきた生徒会長秋里優司だった。
学年も違うのにあたかも自分のクラスかのように堂々と歩いてきて海斗の前に立った優司はにっこりと笑って話しかけた。
「昨日は突然話しかけて悪かったね。昨日話した通り僕は君達のバディとしてこの学園の事を色々説明しにきたよ。みんなも彼等を借りるけど良いかな?」
ウインクと共に周りを見渡すと群がっていたクラスメイト達が会長ならしょうがないかと離れていった。
「さぁ海斗くん、お姉さんと一緒にこちらにおいで。誰も居ない部屋を用意してあるよ。」
海斗にのみ聞こえるように囁くと大きな声で校内を案内するよと言って先に教室を出て行った。
海斗は話に乗るべきか一瞬迷ったが真っ青な顔で表情を消している由梨を見て急いで由梨の手を引きながら優司の後について行った。
優司が案内したのは生徒会準備室として使用している所だが小さいながらもソファセットも有る応接室のような場所だった。特別教室ばかりが集まっている校舎なので一般の生徒はまず近づかないしとても静かで海斗はほっと息を吐いた。
二人をソファに座らせると簡単にお茶を入れて二人の前に置いた。そして、自らもテーブルを挟んだ椅子に座った優司は先にお茶に手をつけて安心させてから話し出した。
「二人とも大丈夫だったかい?ここは幼稚舎からの持ち上がりも多くて編入生が入ってくるといつも質問攻めにしてしまうんだよ。悪気は無いから許してやってもらえないかな?暫くすれば落ち着くからね。」
未だ何も語らず表情も消している由梨を一瞥しただけで特に気にするでもなく海斗だけに話しかける。
「海斗くんだったね。日本での生活は初めてだと聞いているから仕方がない部分もあるけれど、はっきり言って先程の君の対応ではお姉さんを守ることは出来ないと考えた方がいい。
スイスであれば目立つことがなかったかも知れないが日本では二人の容姿ははっきり言って目立ち過ぎるほどだよ。それに迂闊に一人の相手をすると百人でも同じ対応を求められてしまう。
だからと言って途中でキレたり、怒ったり、無視したら明日からは本当の意味での孤独な生活が待っていることになる。それは君の望みではないだろう?
まずは集まって来る彼等を上手く笑顔であしらうことを覚えるといい。先程の僕のやり方を見ただろう?あんな感じで、、まぁ自分をテレビの中のアイドルくらいに考えてファンを相手にするイメージかな?でやればその他大勢と本当の友人を見極められるようになるさ。」
そう言うとカップを持って一口紅茶を飲んだ。海斗は今言われたことをしっかりと頭に叩き込んで頷いた。
「今日の所はお礼を言っておきます。秋里先輩。僕も日本を舐めていたようですし、貴方のやり方はとてもスマートだった。これから参考にさせてもらいます。」
そう言うと海斗も紅茶を一口飲むと聞きたかったことを口にした。
「それにしても、、、昨日と比べて随分と僕達の事をご存知のようですね?姉に対する態度も昨日とは段違いです。もう隠すことは何もないと考えていた方がいいですか?」
「まぁそうだね。勿論僕個人の情報なので学園は昨日レベルの話しか知らないから安心していいよ。口は堅い方なんだ。」
にっこり笑う優司の胡散臭い笑顔を冷たい目で見つめた海斗はそれでもこの男は信頼できるかなとため息を吐いた。
「先輩の事はある程度信用することにします。今日も助けてもらいましたし。ご存知の通り僕達はまだ日本に慣れていないので今後も今回のような事が無いとも限りません。今後とも本当の意味でのバディとしてよろしくお願いします。姉はこの通りなので、今現在も此処に居るだけでもまだ気を許していると考えてください。一応姉の症状も説明しておきますね。」
そういうと海斗は由梨の対人恐怖症レベルを説明して、昨日の状態はレベル2、今はレベル1だと教えた。ふんふんと真剣に聞いていた優司だが、海斗が由梨の手を取ったのを見ると何故か胸がムカムカするのは止められなかった。
「海斗くん、大体由梨さんの状況は把握したよ。大変な事だと同情もするが、どうしても団体行動の多い日本の学校ではかなりストレスが溜まるんじゃないかい?無理して通う必要も君達の学力を考えると無さそうだが、何か理由が有るのかい?」
海斗は両親の事や由梨の希望も伝え、なるべく平和に学園生活が過ごせるように優司に協力を求めた。
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