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第八章 不穏な繋がり
70、上手くいかないことばかり(ミア視点)
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「どうして! どうして! どうして!」
ミアは私室でベッドをバシバシと叩いて不満をぶつけていた。
折角シモン様と仲良くなったのに! 確かに他言無用と言われたことを話してしまったのは悪かったかもしれない。でも、だからといって支援を打ち切るほどのこと? 折角上流階級の仲間入りできたのに? そんな悪いことをしたの?
ミアは泣き崩れた顔を上げた。
「そんなことないわよ! 絶対あのコーデリア様がシモン様に色々言い付けたのよ!」
シモン様がコーデリア様を優しく見つめる顔を思い出すと悔しくてたまらない。私はシモン様の恩人なのに!
ミアは怒りで目の前が赤く滲むのを感じる。今こそ夢実の魔法を使うべきなんじゃない?
呪いの魔法だもの。今こそ、その時なのよ!
シモン様と仲良くなることにはこの魔法を使わなかった。だって魔法で仲良くなる必要なんてないと思ったんだもの。でも、こんなことになるのなら魔法でも呪いでも使えばよかったのよ。
「そうよ。今からでも遅くない。コーデリア様さえいなければ。そうすればシモン様は私と……」
ミアは立ち上がると部屋にある机に向かった。そして、一冊のノートを取り出す。このノートには子供の頃から夢を書き留めている。そして、遅かれ早かれ現実になったものも多い。些細なおやつはケーキがいいという夢から王子様に会いたいという無謀なものまで。
ミアはペンを手にすると一気に夢を書き込んだ。
『コーデリアは痛い目に遭えばいい』
『もう一度シモン様に会いたい』
そして、ペンを置いた。
「今はこれでいいかな。早く願いが叶うといいなぁ」
その機会は思ったよりも早く訪れた。ミアが街を歩いていると声をかけられたのだ。学校を辞めてからすぐのことだ。
「ミア・グランドさんですか?」
礼儀正しく頭を下げたその人は貴族だと思う。物腰が柔らかく、あの学校でよく見たタイプなのだ。ミアは卒なく貴族がする礼を執った。
「はい、ミアでございます」
するとその人は優しく話しかけてきた。
「学校での話を耳にしてミアさんがあまりに不当に扱われたと思い、居ても立っても居られずに声をかけてしまいました。ご無礼をお許しください」
そう言ってその人はミアの前に跪き手の甲にキスを落とした。
「あ、いえ、そんな……」
街中で突然のキスに周りの人々が騒ぎ始める。ミアはこの街では有名人なのだ。
「あ、あの、あちらにカフェがあるので、ここは、ちょっと……」
スクッと立ち上がったその人はサッと手を差し出してエスコートを申し出てくれる。こんなことをされるのは初めてだ。
「失礼しました。では、そちらまでエスコートさせて下さい」
「は、はい」
ミアは顔を赤らめてその手に自分の手を乗せた。まるで貴族の令嬢のように扱われてミアの心は浮き立つ。
きっと私に同情して救いの手を差し伸べてくれるんだわ。そうよ。シモン様でなくたって貴族になる方法はいくらだってるわ。よく見たら凄く若いし、格好いいもの。きっと弟が妹が学校にいて私が受けた酷い仕打ちを聞いたのね。
ミアはにっこりと微笑んでその人と共にカフェに向かったのだった。
その男の胸元にあの紋章があることには気が付かずに。
ミアは私室でベッドをバシバシと叩いて不満をぶつけていた。
折角シモン様と仲良くなったのに! 確かに他言無用と言われたことを話してしまったのは悪かったかもしれない。でも、だからといって支援を打ち切るほどのこと? 折角上流階級の仲間入りできたのに? そんな悪いことをしたの?
ミアは泣き崩れた顔を上げた。
「そんなことないわよ! 絶対あのコーデリア様がシモン様に色々言い付けたのよ!」
シモン様がコーデリア様を優しく見つめる顔を思い出すと悔しくてたまらない。私はシモン様の恩人なのに!
ミアは怒りで目の前が赤く滲むのを感じる。今こそ夢実の魔法を使うべきなんじゃない?
呪いの魔法だもの。今こそ、その時なのよ!
シモン様と仲良くなることにはこの魔法を使わなかった。だって魔法で仲良くなる必要なんてないと思ったんだもの。でも、こんなことになるのなら魔法でも呪いでも使えばよかったのよ。
「そうよ。今からでも遅くない。コーデリア様さえいなければ。そうすればシモン様は私と……」
ミアは立ち上がると部屋にある机に向かった。そして、一冊のノートを取り出す。このノートには子供の頃から夢を書き留めている。そして、遅かれ早かれ現実になったものも多い。些細なおやつはケーキがいいという夢から王子様に会いたいという無謀なものまで。
ミアはペンを手にすると一気に夢を書き込んだ。
『コーデリアは痛い目に遭えばいい』
『もう一度シモン様に会いたい』
そして、ペンを置いた。
「今はこれでいいかな。早く願いが叶うといいなぁ」
その機会は思ったよりも早く訪れた。ミアが街を歩いていると声をかけられたのだ。学校を辞めてからすぐのことだ。
「ミア・グランドさんですか?」
礼儀正しく頭を下げたその人は貴族だと思う。物腰が柔らかく、あの学校でよく見たタイプなのだ。ミアは卒なく貴族がする礼を執った。
「はい、ミアでございます」
するとその人は優しく話しかけてきた。
「学校での話を耳にしてミアさんがあまりに不当に扱われたと思い、居ても立っても居られずに声をかけてしまいました。ご無礼をお許しください」
そう言ってその人はミアの前に跪き手の甲にキスを落とした。
「あ、いえ、そんな……」
街中で突然のキスに周りの人々が騒ぎ始める。ミアはこの街では有名人なのだ。
「あ、あの、あちらにカフェがあるので、ここは、ちょっと……」
スクッと立ち上がったその人はサッと手を差し出してエスコートを申し出てくれる。こんなことをされるのは初めてだ。
「失礼しました。では、そちらまでエスコートさせて下さい」
「は、はい」
ミアは顔を赤らめてその手に自分の手を乗せた。まるで貴族の令嬢のように扱われてミアの心は浮き立つ。
きっと私に同情して救いの手を差し伸べてくれるんだわ。そうよ。シモン様でなくたって貴族になる方法はいくらだってるわ。よく見たら凄く若いし、格好いいもの。きっと弟が妹が学校にいて私が受けた酷い仕打ちを聞いたのね。
ミアはにっこりと微笑んでその人と共にカフェに向かったのだった。
その男の胸元にあの紋章があることには気が付かずに。
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