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第七章 王族の力

63、バルターク公爵家の常識、、、なの?

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シモン王子の特訓はその日から本当に超特訓となりました。本当に朝から晩まで続けるためにシモン王子の要望もあり、バルターク公爵家に泊まり込んでの特訓ですの。
アルバートもあの日から何か思うところがあるのか学校を休んでシモン王子の特訓を手伝ってくれるようになりました。時々空を見上げてため息を吐いているのが心配ですがもう子供ではないのですもの。黙って見守るのも母親の役目ですわ!
コーデリアは……いつも通り部屋からシモン王子の特訓を眺めて眺めて眺めています。待っていてね。コーデリア。お母様がシモン王子を鍛えてみせますわ!
そんなこんなで今日も朝からシモン王子の特訓が始まりました。
「シモン王子、その調子ですわ! ゆっくり魔力を溜め込みますのよ」
どうもシモン王子は魔力の無駄遣いが多くて効率が良くないため威力が半減してしまうようですの。わたくしもおかしいと思っていました。王族であるシモン王子が何故古代魔法如きに囚われるのか。その答えはここにありました。
その時執事がやってきました。
「奥様、旦那様がお呼びです」
「レオポルド様が? すぐに行くわ」
わたくしはテラスの椅子に腰掛けて空を見上げているアルバートに声をかけました。
「アルバート、わたくしはレオポルド様にお会いしますの。シモン王子を見てあげてくれるかしら?」
わたくしの声に振り返ったアルバートはそのまま頷くと立ち上がるのが見えました。
アルバートが見てくれるのなら安心ですもの。わたくしはシモン王子にも断って屋敷の中に入りました。
バルターク公爵家の家訓で不要不急の魔法は使わないことにしているのです。

トントン
「貴方? どうなさったの?」
「アリアドネ、急に呼んですまない。実は急ぎ伝えなくてはならないことが出来てしまった」
そう言って執務室の机に肘をついてため息を吐いた。
わたくしは急いで駆け寄るとレオポルド様の肩に手を置いた。
「レオポルド様、大丈夫ですか?」
レオポルド様はわたくしの手を取ってキスを落としました。
「ああ、だが、大変まずいことになった」
「一体何が?」
「あの、ほら、コーデリアが婚約破棄を言い出した原因の少女がいただろう?」
「ミアさん? ですわよね?」
「ああ、その子だ。その子が口止めしていたはずのシモン王子の誘拐事件についてペラペラと話し出したらしい」
「え? 本当ですか?! でも、あの件は無かったことになっているはずでは……」
「そうなっているし、だからこそその子は今学校に通っているのだ。それなのにシモン王子の次期婚約者という噂を聞きつけた途端、自分はシモン王子とは運命の相手で、過去には誘拐犯からシモン王子を助けたことがあると言い出したんだ」
「まぁ! それでは……」
「前王原理主義者達が躍起になるだろうな。やつらはプライドが高いから失敗した誘拐など認めないか今度こそ本当に誘拐して汚名を挽回するか……。それくらいはやる奴らだ」
「……はぁ。あの方々は夢を見過ぎですわ。お父様は決してそんなお方ではないのに何故ここまで心酔するのか全く理解できませんわ」
わたくしにとっての父である前王は決して神のような存在ではなく、気さくで少し抜けているところもある愛嬌たっぷりなおじいちゃんなのです。
「確かに前王陛下がいくら明君とはいえもう数十年前のことだ。何故あいつらはあんなに……」
前王原理主義者は前王の王位復活のみを掲げる過激派組織だ。彼らの理想には前王からの王位を拒否したアリアドネは裏切り者、王位についた現王は簒奪者となる。そんなふたりの子供達が婚約して王位につくのは彼らにとっては考えられないことらしい。だからシモン王子を誘拐してコーデリアとの婚約をダメにしたかったのだろう。その結果、わたくしや現王が苦しめば彼らは喜ぶのです。
「本当に夢みがちな嫌な方達ですわ」
わたくしがふいっとそっぽを向くとレオポルド様が優しく抱きしめてくださいました。
「案ずるな。コーデリアの身の安全は私が保証するし、魔法もかける」
「わたくしも、よろしいかしら?」
これは結婚の時の約束に反すること。わたくし達はこれだけ世間を騒がせて結婚したのだから、これからはひっそりと慎ましく暮らすことを約束したのです。
極力魔法に頼らず、夜会にも出ず、どの貴族とも懇意にしない。決して現王に反するいかなる組織とも関わらない。そんな約束を交わしたのです。
「私達からは決して破ることはないが、売られたものは買わねばならないだろうな」
「まぁ! ふふふ。そうですわね」
わたくし、レオポルド様のこういうところを愛しているのですわ!
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