16 / 82
第二章 生まれながらの悪役令嬢
15、物語の強制力……なの?
しおりを挟む
早速シモン王子とアルバートは騎士道精神の先生に連れられて、教室となっている部屋に向かいました。
我が家の中をキョロキョロしながら歩く王子はまだ幼く、可愛らしく、わたくしは自然と笑顔になりました。
わたくしは今のシモン王子ならば如何様にも変わっていけるように感じております。
物語の中の自己中で、我が儘で、俺様で、おバカな王子はやはり教育に問題があったのです。
今の時点であれだけ教師に不信感を抱いていれば、授業で教わる事など身につくはずも無いのです。
わたくしはひとまず山を乗り越えた事に頷いて、新たな山に向かいました。
そう、コーデリアでございます。
いくらレオポルト様のお許しがあっても、我が家に王子がやって来たのです。
しかも、自分の婚約者ですわ。
ご挨拶くらいはしなくてはなりません。
まるで物語の悪役令嬢そのままの行動をする真理子さんにも一言言わなくては!と、コーデリアの部屋に向かいました。
「コーデリア? いるのでしょう?」
わたくしはドアをノックするとさっさと開けて中に入りました。
すると、窓際に椅子を置いてその窓から外を見つめるコーデリアがおりました。
「コーデリア?」
わたくしが近づいて、同じく窓の外を見てみるとそこにはシモン王子とアルバートが体操している姿が見えました。
きっと騎士道精神の先生は授業の前に少し体を動かす事にしたのでしょう。
「コーデリア、気になるのなら、きちんとご挨拶くらいはすれば良かったでしょう」
わたくしの言葉に視線は外に向けたまま答えてきました。
「だって、引っ張られそうなんだもの……」
「引っ張られる?」
「うん、そうなの。王宮での事を何度も思い出してみたのよ。そうすると凄く不思議なの。私はお母様と約束もしたし、物語の後の世界の為に王子とは仲良くしようと思っていたのよ? 実際王様たちには、きちんとした態度だったでしょう?」
「ええ」
「それが可笑しいのよ。確かに初対面で失礼な態度だったのはあの王子様よ!! でも、私はにっこり笑って受け流す予定だったの! 信じてくれないかもしれないけれど、ビンタしようとは思っていなかったのよ」
「え?! そうですの?」
するとコーデリアはやっと外を見るのはやめて、わたくしの顔を見つめて来ました。
「なんだか……夢の中にいるみたいだったの。そうしたら、体が勝手に動いてしまったのよ。お母様に止められるまでは止まれなかったわ」
そういうとコーデリアは深いため息を吐きました。
その姿は三歳には、似つかわしくありませんが本当のことだと思わせてくれました。
「では、シモン王子の側だと意志とは関係なく悪役令嬢っぽい言動をとってしまうということかしら?」
「そうね。そう思うわ。窓から見ても私は私のままだから距離が離れれば平気みたいだけど、また近づいたらどうなるのかわからないの」
「つまり‥…強制力が働くという事?」
「あら、お母様もそんな事を知っているのね? お仲間で嬉しいわ。多分その通りね。だから、お母様の計画通りに王子と仲良くするためには会わない方がいいのよ」
「でも、会わないとそれこそ仲良くなる機会がないわ。だってミアに心を奪われないようにコーデリアがガッチリと心を掴む予定じゃない?」
「それはそうなんだけど、マイナスになるよりはいいのかなと思って。それにお父様はお母様の言う通り私が死んだら大変そうだし……」
そういうとコーデリアは考え込んでしまいましたわ。
わたくしは会わなくても仲良くなる方法を考えなければならないようですわ。
これまた、前途多難です。
「ねぇ。コーデリア」
「なあに?」
「あの、ビンタは強制力として、王子自体はどう思って?」
「今はまだ、可愛いわ。顔は大好きなのよ。それに、あの俺様が泣いたのかと思うと何だか意外で……そういうギャップは大好物よ」
「だから、コーデリアは窓から王子をみていたのね?」
わたくしが指摘すると顔を真っ赤にして否定しました。
「ちょっ! そ、そんな事ないわよ! 偶々覗いたらいただけよ!」
「ふふふ、そういう事にいておきましょうね」
「も、もう! 本当よ!」
「はいはい。それではわたくしは会わないで仲良くなる方法を考えますわ! 王子も実はとても良い子みたいですし、これからの教育が楽しみですの」
わたくしはそういうと、まだ少し顔が赤いコーデリアに先程のエントランスでの出来事を話して聞かせました。
「……というわけで、あの物語の愚かな王子様は大人の裏切りが作ったと言っても過言ではないと思うわ。でも、だからこそ治せると思うの」
「どうやって?」
「まだ、三歳ですもの。足りない知識は増やし、足りない愛情は与え、足りない信頼は育てるわ。そうすればきっと真理子さんの理想に近づくはずよ?」
わたくしがそういうと、コーデリアは再び窓の外を見てから言いました。
「ふ、ふーん。楽しみにしているわ。お母様」
もう既に王子は部屋に入っていたらしく、誰もいなくなった庭を少し残念そうにコーデリアは眺めていました。
我が家の中をキョロキョロしながら歩く王子はまだ幼く、可愛らしく、わたくしは自然と笑顔になりました。
わたくしは今のシモン王子ならば如何様にも変わっていけるように感じております。
物語の中の自己中で、我が儘で、俺様で、おバカな王子はやはり教育に問題があったのです。
今の時点であれだけ教師に不信感を抱いていれば、授業で教わる事など身につくはずも無いのです。
わたくしはひとまず山を乗り越えた事に頷いて、新たな山に向かいました。
そう、コーデリアでございます。
いくらレオポルト様のお許しがあっても、我が家に王子がやって来たのです。
しかも、自分の婚約者ですわ。
ご挨拶くらいはしなくてはなりません。
まるで物語の悪役令嬢そのままの行動をする真理子さんにも一言言わなくては!と、コーデリアの部屋に向かいました。
「コーデリア? いるのでしょう?」
わたくしはドアをノックするとさっさと開けて中に入りました。
すると、窓際に椅子を置いてその窓から外を見つめるコーデリアがおりました。
「コーデリア?」
わたくしが近づいて、同じく窓の外を見てみるとそこにはシモン王子とアルバートが体操している姿が見えました。
きっと騎士道精神の先生は授業の前に少し体を動かす事にしたのでしょう。
「コーデリア、気になるのなら、きちんとご挨拶くらいはすれば良かったでしょう」
わたくしの言葉に視線は外に向けたまま答えてきました。
「だって、引っ張られそうなんだもの……」
「引っ張られる?」
「うん、そうなの。王宮での事を何度も思い出してみたのよ。そうすると凄く不思議なの。私はお母様と約束もしたし、物語の後の世界の為に王子とは仲良くしようと思っていたのよ? 実際王様たちには、きちんとした態度だったでしょう?」
「ええ」
「それが可笑しいのよ。確かに初対面で失礼な態度だったのはあの王子様よ!! でも、私はにっこり笑って受け流す予定だったの! 信じてくれないかもしれないけれど、ビンタしようとは思っていなかったのよ」
「え?! そうですの?」
するとコーデリアはやっと外を見るのはやめて、わたくしの顔を見つめて来ました。
「なんだか……夢の中にいるみたいだったの。そうしたら、体が勝手に動いてしまったのよ。お母様に止められるまでは止まれなかったわ」
そういうとコーデリアは深いため息を吐きました。
その姿は三歳には、似つかわしくありませんが本当のことだと思わせてくれました。
「では、シモン王子の側だと意志とは関係なく悪役令嬢っぽい言動をとってしまうということかしら?」
「そうね。そう思うわ。窓から見ても私は私のままだから距離が離れれば平気みたいだけど、また近づいたらどうなるのかわからないの」
「つまり‥…強制力が働くという事?」
「あら、お母様もそんな事を知っているのね? お仲間で嬉しいわ。多分その通りね。だから、お母様の計画通りに王子と仲良くするためには会わない方がいいのよ」
「でも、会わないとそれこそ仲良くなる機会がないわ。だってミアに心を奪われないようにコーデリアがガッチリと心を掴む予定じゃない?」
「それはそうなんだけど、マイナスになるよりはいいのかなと思って。それにお父様はお母様の言う通り私が死んだら大変そうだし……」
そういうとコーデリアは考え込んでしまいましたわ。
わたくしは会わなくても仲良くなる方法を考えなければならないようですわ。
これまた、前途多難です。
「ねぇ。コーデリア」
「なあに?」
「あの、ビンタは強制力として、王子自体はどう思って?」
「今はまだ、可愛いわ。顔は大好きなのよ。それに、あの俺様が泣いたのかと思うと何だか意外で……そういうギャップは大好物よ」
「だから、コーデリアは窓から王子をみていたのね?」
わたくしが指摘すると顔を真っ赤にして否定しました。
「ちょっ! そ、そんな事ないわよ! 偶々覗いたらいただけよ!」
「ふふふ、そういう事にいておきましょうね」
「も、もう! 本当よ!」
「はいはい。それではわたくしは会わないで仲良くなる方法を考えますわ! 王子も実はとても良い子みたいですし、これからの教育が楽しみですの」
わたくしはそういうと、まだ少し顔が赤いコーデリアに先程のエントランスでの出来事を話して聞かせました。
「……というわけで、あの物語の愚かな王子様は大人の裏切りが作ったと言っても過言ではないと思うわ。でも、だからこそ治せると思うの」
「どうやって?」
「まだ、三歳ですもの。足りない知識は増やし、足りない愛情は与え、足りない信頼は育てるわ。そうすればきっと真理子さんの理想に近づくはずよ?」
わたくしがそういうと、コーデリアは再び窓の外を見てから言いました。
「ふ、ふーん。楽しみにしているわ。お母様」
もう既に王子は部屋に入っていたらしく、誰もいなくなった庭を少し残念そうにコーデリアは眺めていました。
0
お気に入りに追加
414
あなたにおすすめの小説
主人公受けな催眠もの【短編集】
霧乃ふー
BL
抹茶くず湯名義で書いたBL小説の短編をまとめたものです。
タイトルの通り、主人公受けで催眠ものを集めた短編集になっています。
催眠×近親ものが多めです。
【本編完結】転生モブ少女は勇者の恋を応援したいのに!(なぜか勇者がラブイベントをスッ飛ばす)
和島逆
ファンタジー
【後日談のんびり更新中♪】
【ファンタジー小説大賞参加中*ご投票いただけますと嬉しいです!】
気づけば私は懐かしのRPGゲームの世界に転生していた。
その役柄は勇者の幼馴染にして、ゲーム序盤で死んでしまう名もなき村娘。
私は幼馴染にすべてを打ち明け、ゲームのストーリーを改変することに。
彼は圧倒的な強さで私の運命を変えると、この世界を救う勇者として旅立った。前世知識をこれでもかと詰め込んだ、私の手作り攻略本をたずさえて――……!
いやでも、ちょっと待って。
なんだか先を急ぎすぎじゃない?
冒険には寄り道だって大事だし、そもそも旅の仲間であるゲームヒロインとの恋愛はどうなってるの?
だから待ってよ、どうしてせっかく教えてあげた恋愛イベントをスッ飛ばす!?
私の思惑をよそに、幼馴染は攻略本を駆使して超スピードで冒険を進めていくのであった……。
*ヒロインとの恋を応援したいモブ少女&応援なんかされたくない(そして早く幼馴染のところに帰りたい)勇者のお話です
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
四季折々に揺蕩う、君に恋焦がれる物語。
柚月 なぎ
BL
春は君に出会い、夏は君に焦がれ、秋は君を憂い、冬は君と――――。
春夏秋冬、君を想う。
これは孤独な神と、それに触れた者の物語————。
✿❀✿
春の章。
桜の木の下で、誰かを待ち続ける美しい青年。桜の模様が描かれた羽織を纏うぼんやりとした美しい青年は、首に包帯を巻いており、言葉を紡ぐことができない。そんな声を失った青年の前に現れたのは、春を告げる神だった。
青年が誰を待ち、なぜ声を失ったのか。
桜の蕾が花開く時、青年の瞳に映るモノとは――――。
❀✿❀
夏の章。
村の悪しき風習により、龍神の贄に捧げられた少年。
恵みの雨を降らせるため、村の皆のため、少年は谷の底へと落ちていく。
次に目を覚ました時、見たこともないような美しい青年が傍にいた。
彼こそが谷に棲む龍神であり、この地に水を齎す存在であった。
しかし龍神が存在していながら、なぜ村に雨が降らないのか。
その理を知る時、少年は本当の意味で龍神の想いを知ることになる――――。
✿❀✿
秋の章。
とある地の領主の領土内。鎮守の森と呼ばれる、聖域があった。そこには白の神と呼ばれる守人がおり、この地を守護しているという言い伝えが、遠い昔、古の時代からあった――――。
赤や黃、混ざりあった色とりどりの色彩が豊かな季節。秋。
狩りを禁止されているはずの鎮守の森で、罠にかかって弱っている白い毛の狐がいた。従者とともに森の見回りをしていた、この地の若き領主である桂秋は、この地が崇めている森への信仰心から、その珍しい白い狐を罠から逃がしてやるのだった。
❀✿❀
冬の章。
山神様の花嫁。
それは、男でも女でも関係なく、極月に生まれ、ある"印"が身体に現れた子が番として選ばれる。
親以外はその顔を見てはならない。
触れてはならない。
声を聞いてはならない。
故に、屋敷から出さず、人に晒さず、その時が来るまで幽閉される決まりがあった。
そして十五歳の誕生日、少年は山神様の花嫁となるため、用意された籠に乗り、山の頂へと運ばれて行く――――。
◆この作品は、カクヨムさん、小説家になろうさんでも掲載しております。
アマチュアでもつけられるWeb小説の表紙と挿絵
冴條玲
エッセイ・ノンフィクション
アマチュアでもつけられるWeb小説の表紙と挿絵。
本文も挿絵も、商業作品に勝るとも劣らないクオリティだったりするアマチュア作品が、世の中には、人知れず、ごろごろしています。
個人でも無料からできる電子出版。
個人でもできるイラストの有償依頼や自費出版についてのノンフィクションです。
人気があった方がお金がかからないけど、
人気ゼロでも有償で依頼すれば、あなたのWeb小説に素敵な表紙と挿絵をつけることは難しくありません。
どこで、どうやって、誰に依頼すればいいの?
どれくらいかかるの? 時間は? 費用は? 作業工程は?
実例を並べて解説していきます。
超短くても怖い話【ホラーショートショート集】
戸影絵麻
ホラー
心霊、エロ・グロ、都市伝説、不条理、SF、パロディ、ブラックジョーク、何でもありのショートショート集です。
1話50字~1000字程度ですから、すぐ読めます。
よろしければ、お手すきの時にでものぞいてみてください。
※時々、連載ものが挟まることがあります。
「こんな横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で横取り女の被害に遭ったけど、新しい婚約者が最高すぎた。
古森きり
恋愛
SNSで見かけるいわゆる『女性向けザマア』のマンガを見ながら「こんな典型的な横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で貧乏令嬢になったら典型的な横取り女の被害に遭う。
まあ、婚約者が前世と同じ性別なので無理~と思ってたから別にこのまま独身でいいや~と呑気に思っていた俺だが、新しい婚約者は心が男の俺も惚れちゃう超エリートイケメン。
ああ、俺……この人の子どもなら産みたい、かも。
ノベプラに読み直しナッシング書き溜め中。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ベリカフェ、魔法iらんどに掲載予定。
国護りの力を持っていましたが、王子は私を嫌っているみたいです
四季
恋愛
南から逃げてきたアネイシアは、『国護りの力』と呼ばれている特殊な力が宿っていると告げられ、丁重にもてなされることとなる。そして、国王が決めた相手である王子ザルベーと婚約したのだが、国王が亡くなってしまって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる