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第四章 運命との決別
60、セドア共和国のベルンハルト
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ベルンハルト王太子は今しがた父王が受け取ったアッカルドからの親書を読んでいた。
「お前はどう考えるのだ。ベルンハルト。」
父王に親書を返しながらベルンハルトが話した。
「そうですね。この間お会いした感じでは信頼できないかもしれません。幼い従兄弟との勝負に大人気なく挑んで蹴落とす様な女性でした。」
「そうなのか?」
「はい、それにシダールの王子と婚約したというではないですか。それはあの王太子と王子はお披露目パーティーからの騒動の間に懇意になったという事ですからね。王子がその審査員だったという事を考慮するとそういう関係になるというのは頂けませんよ。」
「ふむ、そうだな。」
「私だって危なかったのかもしれませんよ。私が王太子ではなく婿入り出来る立場だったらと思うとゾッとします。」
そういってベルンハルトは父王に向かってブルリっと体を震わせてみせた。
「それは、なんというか、、スキャンダルが多い王太子だな。確か十年前も恋愛沙汰で追放されていなかったか?」
「そうなんです。そんなクローディア王太子から騎士団が国境を越えるが侵略の意志はないなど信用できません。更にはその中に王夫妻がいるかもしれないなど、、、デマもいいところですよ。」
「お前もそう思うか。わしも信じられんよ。王夫妻が含まれていても国境を超えた段階で王位は剥奪するなど、、。一体どうなっているのだ?アッカルドは。」
「まぁ念の為にその森付近には軍を展開いたしましょう。もし万が一王が先頭に立って侵攻してきたらこちらとしても応戦するしかありませんから。それかこちらで捕縛した方が宜しいですか?」
「ああ、そうしてくれ。流石に王を殺すわけにはいかんだろう。この件は其方に任せる。ベルンハルト。」
「はい。わかりました。父上。」
ベルンハルトは頭を下げて退出する父王を見送った。
「王が侵攻するだと?何を考えているんだ。まあ、でも、これが嘘で本当でもいい。チャンスかもしれないからな。生意気なクローディアと女に溺れたビクトルには一泡吹かせてやる。あの時私の面子を潰したことを後悔するがいい!!」
ベルンハルトは王太子選抜審査の時に負けたことを未だに気にしていた。そしてその後に二人の婚約が発表されたことでなんとも言えない理不尽さを胸に抱えていたのだ。
ベルンハルトはクローディアからの親書に書かれているように王が騎士団を連れて国境を超えた時点で王ではなくなるという記述を逆手に取る事にしたのだ。
「あの女の言う通り王では無いのならどうしようと問題がないわけだな。あの王に恨みは無いが丁重に出迎えさせてもらおう。」
ベルンハルトは早速セドア軍の隊長を呼び出してアッカルドとの国境付近の森に配置するように指示を出す。
「あの森ですか?あそこは平和そのものですよ。何もそんな大軍はいらないかと、、、。」
「いいから指示通りにしてくれ。大物が釣れるかもしれないんだ。」
「大物ですか?」
「ああ、無傷で捕まえる為には下手な抵抗など無意味だと思わせる大軍が必要なんだ。」
「はぁ、王太子殿下がそうおっしゃるなら早速取り掛かります。」
「ああ、よろしく頼む。」
隊長が立ち去るとベルンハルトは執務室に戻りこれからの作戦を立てた。
クローディアは王では無いと言っているが、やはりローレンス王を捕縛する事で多くのカードを手に入れられるのだ。
ローレンス王がセドア共和国に亡命すればその正当性を打ち出してアッカルド奪還の旗印にすることもできる。そうなればクローディア達を追い出してローレンス王はセドアの傀儡王となるのだ。いくらシダールが出てきてもこの国に勝手には侵攻したのはローレンス王なのだ。上手く圧力を掛けて侵攻ではなく亡命にしてしまえばいい。不当に追い出された悲劇の王を助け、支援する。そうすれば表面上の正義はこちらにあるのだ。
面子を潰されたお返しは国とは笑いが止まらない。
「ふははははははは!!」
ベルンハルトの瞳が危険な色を帯びたのだった。
「お前はどう考えるのだ。ベルンハルト。」
父王に親書を返しながらベルンハルトが話した。
「そうですね。この間お会いした感じでは信頼できないかもしれません。幼い従兄弟との勝負に大人気なく挑んで蹴落とす様な女性でした。」
「そうなのか?」
「はい、それにシダールの王子と婚約したというではないですか。それはあの王太子と王子はお披露目パーティーからの騒動の間に懇意になったという事ですからね。王子がその審査員だったという事を考慮するとそういう関係になるというのは頂けませんよ。」
「ふむ、そうだな。」
「私だって危なかったのかもしれませんよ。私が王太子ではなく婿入り出来る立場だったらと思うとゾッとします。」
そういってベルンハルトは父王に向かってブルリっと体を震わせてみせた。
「それは、なんというか、、スキャンダルが多い王太子だな。確か十年前も恋愛沙汰で追放されていなかったか?」
「そうなんです。そんなクローディア王太子から騎士団が国境を越えるが侵略の意志はないなど信用できません。更にはその中に王夫妻がいるかもしれないなど、、、デマもいいところですよ。」
「お前もそう思うか。わしも信じられんよ。王夫妻が含まれていても国境を超えた段階で王位は剥奪するなど、、。一体どうなっているのだ?アッカルドは。」
「まぁ念の為にその森付近には軍を展開いたしましょう。もし万が一王が先頭に立って侵攻してきたらこちらとしても応戦するしかありませんから。それかこちらで捕縛した方が宜しいですか?」
「ああ、そうしてくれ。流石に王を殺すわけにはいかんだろう。この件は其方に任せる。ベルンハルト。」
「はい。わかりました。父上。」
ベルンハルトは頭を下げて退出する父王を見送った。
「王が侵攻するだと?何を考えているんだ。まあ、でも、これが嘘で本当でもいい。チャンスかもしれないからな。生意気なクローディアと女に溺れたビクトルには一泡吹かせてやる。あの時私の面子を潰したことを後悔するがいい!!」
ベルンハルトは王太子選抜審査の時に負けたことを未だに気にしていた。そしてその後に二人の婚約が発表されたことでなんとも言えない理不尽さを胸に抱えていたのだ。
ベルンハルトはクローディアからの親書に書かれているように王が騎士団を連れて国境を超えた時点で王ではなくなるという記述を逆手に取る事にしたのだ。
「あの女の言う通り王では無いのならどうしようと問題がないわけだな。あの王に恨みは無いが丁重に出迎えさせてもらおう。」
ベルンハルトは早速セドア軍の隊長を呼び出してアッカルドとの国境付近の森に配置するように指示を出す。
「あの森ですか?あそこは平和そのものですよ。何もそんな大軍はいらないかと、、、。」
「いいから指示通りにしてくれ。大物が釣れるかもしれないんだ。」
「大物ですか?」
「ああ、無傷で捕まえる為には下手な抵抗など無意味だと思わせる大軍が必要なんだ。」
「はぁ、王太子殿下がそうおっしゃるなら早速取り掛かります。」
「ああ、よろしく頼む。」
隊長が立ち去るとベルンハルトは執務室に戻りこれからの作戦を立てた。
クローディアは王では無いと言っているが、やはりローレンス王を捕縛する事で多くのカードを手に入れられるのだ。
ローレンス王がセドア共和国に亡命すればその正当性を打ち出してアッカルド奪還の旗印にすることもできる。そうなればクローディア達を追い出してローレンス王はセドアの傀儡王となるのだ。いくらシダールが出てきてもこの国に勝手には侵攻したのはローレンス王なのだ。上手く圧力を掛けて侵攻ではなく亡命にしてしまえばいい。不当に追い出された悲劇の王を助け、支援する。そうすれば表面上の正義はこちらにあるのだ。
面子を潰されたお返しは国とは笑いが止まらない。
「ふははははははは!!」
ベルンハルトの瞳が危険な色を帯びたのだった。
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