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プロローグ

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『この世界には、異分子が存在する』

これはここ三十年の間に研究されて来た「転生被害」についての報告書に書かれた一文だ。
ある日、この世界の大国に現れた少女が王妃となった事が始まりだった。
身分による階級社会が当たり前の世の中で、男爵令嬢が王太子妃となったのだ。
疑問に思う者も多かった。
更には、その過程が常識から外れている。
なんと、王太子は婚約者である大公令嬢との婚約を破棄してまでその少女を求めたのだ。
大公令嬢はその過程で『悪役令嬢』と呼ばれ、婚約者だけでは無く、親兄弟からも疎まれ、公衆の面前で断罪された。
それはまるで物語のようなストーリー。
そして、悪役令嬢は追放されて、悲惨な末路を迎えた。
そして、物語は幕を閉じた。

…………と、その時は皆がそう思った。
それから三十年、この大陸で多くの同様の事象が発生し続けたのだ。
この世界は帝国という括りの中に沢山の王国がひしめき合って構成されている。
その王国で同じような事件が散発した。
ある国では王子が、ある国では公子がと、身分の高い成人したばかりの男子が婚約者を捨てて、身分の低い女子と結婚するというものだ。
そして、その事に疑問を持って一石を投じたのが、最初の事象の悪役令嬢の家族だった。
父親である大公は、様々な情報を集めて共通点を見つけ出す。
そして、その過程でわかったことは、『転生者』という異分子が存在するという事実だった。
なかには、協力的に話す転生者もおり、その存在が徐々に明らかになっていく。
その時、待ったをかけたのが帝国の皇帝だった。
曰く、転生者は今までない知識を持っているので秘匿したい。
曰く、高位貴族は元々政略結婚だから破棄くらいよくあることだ。
曰く、転生者は保護すべき存在である。
そんなことを言い始め、大公の調査は停止せざるをえなかったのだ。
皇帝の本音は息子である王太子が引っかかったと公表したくなかったのだろう。

そうして、現在、『転生被害者を救う会』は、密かに活動を続けているのだった。
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