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二章・これが魔法ですか……
22話:まあ、レベル1ですからね
しおりを挟む「で、今のはカッターとかったーで掛けてみたんですけど」
「分かってるから! 余計寒くなるから、いちいち解説しないでもらえる!?」
言いつつ、ファイアを指で押さえる。それからアクワイアと言うと、ファイアの項目は消え去った。
「今のでファイアは修得完了です。簡単でしょう?」
同じ要領で他の魔法も全て修得していく。やがて、ページはすっからかんになった。
「あとは、次にここに追加されるのを待つしかないですね」
「次っていつ?」
「次のレベルアップです」
「なるほどね」
実に分かりやすくて何よりだ。
「あと、今回はたまたま全部修得出来ましたが、いずれそうも行かなくなります。ポイントはきちんと計算して使った方が良いですよ」
テンの忠告をしっかり聞きながら、ページを戻す。さっきは何も書かれていなかったページに魔法がいくつか収録されていた。
魔法名の後ろにはレベルが書いてあり、今はみんな1だ。その後ろには簡単な説明と、現在経験値が記されている。
「魔法はそれぞれ、使用すると経験値がたまり、一定値まで経験値がたまるとレベルアップします。基本的に上限は40ですが、レベルを解放するアイテムも一応あります」
激しく値が張りますから、普通の人は使えませんけどね、とテンはにこやかに言った。
なるほど、勇者がラスボス前のドーピングに使用する系のアイテムか。勇者は大抵、ラスボス前には金を余らせ過ぎて困ってしまうからな。無駄にレベ上げするからだ。それも街周りのモンスターを狩り尽くす勢いで。
ああ、そういえば俺も『おれは しょうきに もどった』とかほざくバカに何も分からずに金のリンゴを与えた事があったなぁ。あれは幻獣界から白魔法を忘れて帰ってくる緑の娘に食わすべきだった。
…………と、唐突に思い付いた。
「ん? 今の説明からすれば、ファイアとかライトとかは出しっぱにすれば良いんじゃない?」
「今のレベルでそんなことしたら、すぐに魔力がすっからかんになりますよ。じゃあ後のレベルですりゃいいじゃん、というのも的外れです。そのレベルになる頃には、多分サクはこの辺りの初歩的な魔法はみんなマスターしていますから」
完璧に反論された。確かにその通りですね、はい。
「魔法を使うときは魔法名を言えばおーけーです」
「ほう。……ファイア!」
ぼう、と火種が指の先に生まれた。
…………。
…………火種が生まれた。
「…………あの」
「はい」
「これだけ?」
「まあレベル1ですからね」
レベル1にしてもさ、もっと……最低でも手のひらの上に出て欲しかったなぁ。拍子抜けが過ぎるだろ。
「まあ、勇者クラスだと最初から火柱を作れるらしいですね」
人狩りしようぜ。ターゲットは勇者。俺が部屋作るから待っててね。
「しょうがないですよー、残酷な世界ですから……」
テンはそう言いながら倒れ込むようにベッドに横になった。コイツ、少しは俺を警戒しようという気持ちは無いのか。
……だからといって何かする気にはなれないから、俺は俺なんだろうけど。
「ところで、サク……」
それは、テンが話題を切り替えようとした、まさにその時。
ぽたり、と俺の頬に天井から何か落ちてきた。
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