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二章・これが魔法ですか……

19話:怪しい部屋

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 一人きりにしては広い部屋だった。
 ベッドは広々としたダブルベッド。ソファは黒革張りの高級品だ。
 バスルームも広く、トイレも清潔感に溢れている。基本的に文句をつけるところはない。
 だが、例外もある。
 まず、クッションとシーツの柄がハートなのは怒りと哀しみが沸いてくるからやめてほしい。独り身だと涙が出そうになる。
 それと、天井に明らかに血のシミが広がっていて、しかも妙に人間の顔っぽいのはどういう事だろう。何かに呪われているのか。
「あ、サク、その部屋なんだけどね」
 がちゃ、という音がして、ヴェレーが部屋に入ってきた。その手には合鍵らしきものが。あっれー? オートロックの意味はぁ?
「これ置いとけってさ」
「これは……?」

 盛り塩。と、なんか怪しいお札……。

「チェーンジ!」
「無理よ。ここが部屋代やたら安かったんだから」
「待てこら余計気になるわ! ここなんか住んでるだろ!」
 言いつつ天井を指差す。ヴェレーはそれにつられて天井の赤いシミをしっかり見て、そしてヴェレー自身が手に持った塩&お札もしっかり見て、しっかり見た上で平然とした顔で言った。
「さぁ?」
「いや『さぁ?』じゃないから! 間違いなく人間じゃない先客がいらっしゃるからー!」
「サク、うるさいですよ……」
 俺の大声が隣まで響いたのか、テンとイサムが顔を出した。
「一体何だって言うんですか……あ……?」
 テンの視線が、上を向いた俺の指を辿り、天井に向き、そこでストップする。
 その顔はいつの間にか青くなっていた。
「テン……?」
「夜は盛り上がりそうですね。それでは、私はこれで……」
「ほらぁ! テンもヤバイって言ってるじゃん!」
「いえ、ヤバイとまでは……。ただ、なんかこう……、憑きつ憑かれつの関係になれるかなぁ、と」
「補語は!? 百パーセントアンデッド様でしょうが!」
「そうです」
「認めやがったよ!」
 ヴェレーはその間に、粛々と盛り塩を飾り付けている。小突きたい。
 ヴェレーはそのまま、壁にペタペタ呪符を貼り付けて、それから笑顔で俺に告げた。
「終わった!」
「一体なにやってくれてんのお前」
「これで完璧よ」
「帰れ!」


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